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星降る魔女の子供達  作者: ねぎとろ


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40話 『テントの中で』

 ーーどれくらいの時間が過ぎたのだろうか。未だ体の節々に痛みを覚える中で瞼を持ち上げる。


「ん、んん? あれ?」


 少しだけ休むつもりがいつの間にか寝てしまっていたらしく、辺りを見渡せばそこが仮設テントの中だという事を理解するのにそこまで時間は掛からなかった。


「あれ? あっ! ルーナとノーヴァは!?」


 遠くで戦っている音を聞きつつ、どうにも自分の体に力が漲っているのを感じた矢先に、私の寝ぼけていた頭は覚醒した。

 それと同時に、あの場に置いてきた二人の事を思い出し、私は焦ってテントから出ようと試みる。

 しかし、立ち上がった時に周りの光景が視界に入った。

 焦らずとも、どうやら二人共ここへ移動させてくれていたようだ。

 スヤスヤと寝息を立てて眠っている。


「起きたみたいだな。丁度いい、二人も起こしてこっちに来い。重要な話がある」

「えっと、つまりは重要な話ですよね?」

「当たり前だ。じゃなきゃ俺だってもっと寝させてやるさ」


 落ち着きを取り戻したのも束の間、タイミングを見計らったようにテント内へと入ってきた男によって、私はぐっすり寝ている二人を起こすことを余儀なくされてしまった。

 そうして、寝ぼけた状態のノーヴァと、未だ傷が安定していないルーナを連れて私達は男の元へと足早に向かった。


 テントから少し離れた物陰。人払いがされたその場所で男は不機嫌そうに佇んでいた。


「随分時間が掛かったようだな」

「仕方ないでしょ? 瀕死になってた二人を無理やり起こしたんだからさ」


 未だ状況を呑み込めていないルーナとノーヴァを差し置き、私は男の言葉に反論する。


「別に怒っている訳じゃない。それに無駄話もするつもりはないから、単刀直入に用件だけを伝えさせてもらう」


 そう言って男は私達に一切話すなというジェスチャーをした後に懐から取り出した煙草を口に咥えると、話を続けていく。


「……さっきから本部との通信が取れていない。この意味が分かるか?」


 険しい顔で男は私達へと問いかけた。本部との通信途絶という事は最悪な可能性も考えてしまう。

 とは言え、ついさっき喋るなと言われたのだが、これは答えて良いのだろうか。

 ノーヴァとルーナも表情を見る限りでは私と同じ事を思っているに違いない。


「答えなくていい。顔を見れば分かる。お前らも考えている通り、俺も襲撃されている可能性が高いと思っている。そこで、お前ら二人には本部へと戻り確認をしてきてもらう事にした。無論拒否権はない。話はこれだけだ。任せたぞ」


 結局私達に口を開かせないままに話は終わり、最後には私とノーヴァを指差して本部へと戻るように命令を出した。

 省かれたルーナに関しては見るからに顔色が悪いし、さすがに休ませた方が良いと判断したのだろう。


「分かりました。通信が取れないのは私も気になるので命令に従います。元々すぐ戻る約束でこの国には来ていますしね。……でも、私は大丈夫だとしてノーヴァは動けるの?」

「ウチっすか? 大丈夫っすよ! 元気だけなのが取り柄っすからね!」


 私達が了承したのを確認すると、男はすぐに槍を使って跳躍し、遠くの戦っている音の方へと向かってしまった。

 残された私達は、ひとまず今にも倒れそうなルーナをテントへと運ぶ。

 そうしてその場に寝かせた瞬間、ルーナの持っていた通信機から不可解なノイズと共にメルクからの通信が入ってきた。


 ――ただ、その内容は喜ぶべき通信ではなく、血の気が引いていくほどのものだった。


「ユフィさん……本部が襲撃……され……えっ? クルスさん……何やってるんですか?」

「メルク!? クルスさんに襲撃されたの!? ……っ! 通信が切れちゃってる……」


 メルクの通信通りなら、本部が襲撃されたのは確定だろう。

 通信妨害も起きているのも間違いない。

 しかし、メルクが最後に発したクルスという言葉がどうにも気になってしまう。

 裏切り者として断定している以上、助けに来ている可能性は低い。

 恐らくは襲撃の首謀者か或いは手引きなんかをしたのかもしれない。


 どちらにせよ、メルクや本部が危険な状況に変わりはない。すぐにでも助けに行かないと!


「ユフィさん、ウチにも聞こえていました。勿論今すぐに向かうっすよね?」


 通信機を手に持ちながら考えていた私に対し、自前の通信機で内容を聞いていたノーヴァも最悪な状況になっているのを理解したのか、真っ直ぐに私を見つめて判断を仰ぐ。


「うん、そうだね。今すぐに向かおうか」

「分かりました。ユフィさんはルーナさんにその旨を伝えてください。ウチはさっきの人へ伝言してもらえるように頼んでくるっすから」


 息を荒くしながら辛そうな顔で私達の話を聞いているルーナを一瞥し、ノーヴァはテントの入り口に居た隊員へと話しかける。

 その光景を目で追った後、私はルーナの顔の近くにゆっくりと座った。

 数秒、沈黙が流れる。


「……話は聞いていたわ。こっちは心配しないで大丈夫よ。早く行きなさい」


 私の曇った顔が気に食わないのか、それだけ言うとルーナはそっぽを向いてしまった。


「うん。でも、私はルーナちゃんなら助けに来てくれるって信じてるから。こんな重傷の人に何を言ってるのって思うかもしれないし、無理を言っているのは分かってるんだけどね」


 もしかしたらもうルーナには会えないかもしれない。っと、考えてしまった私の目からは喋りながらも涙が零れてしまう。

 涙は頬を伝い、ルーナの横顔へと落ちた。

 それに気付いたルーナは驚いた顔で私の顔を見つめる。


「なんで泣いてるのよ。馬鹿ね、私は貴方達のリーダーなのよ? この程度の傷ぐらいすぐにでも治して追いつくわ。だから、貴方たちこそヘマをしないように気を付けなさいよ」


 いつものようにやれやれといった様子でルーナは腕を持ち上げ、私の頭を撫でる。


「そうだよね。こんな時にまでごめんね。私、頑張ってくるよ」

「その意気よ。それじゃ私は少しだけ休ませてもらうわ」


 力無く頭から離れた手を優しく握り、力と想いを込めてから私は立ち上がった。


「おやすみなさい。私達は先に行ってくるよ。――ノーヴァちゃん、行くよ!」


 テントから出て、近場で待機していたノーヴァへと声を掛ける。


「了解っす!」


 ルーナが一刻も早く治ることを願いながら、私とノーヴァは本部へと向けて駆け出した。

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