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星降る魔女の子供達  作者: ねぎとろ


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39話 『男の……烙印者?』

 カァン! という音と共に矢が叩き落され、助けてくれた人は私へと声を掛ける。

 目を瞑っていた私は声が聞こえると、自分が助かったという事実を噛み締めながら目の前に立つ白髪をなびかせている男を見つめた。

 装飾された槍を手に持ち、まるで寵愛を受けていると思えるような刻印が顔には刻まれている。

 見る限りでは乙女座の烙印に酷似しているが、本当に信用して大丈夫なのだろうか。


「あ、えっと、その刻印って……乙女座の烙印者じゃ……?」


 明らかに男の筈だが、近くで見ても烙印と似すぎている。

 全ての烙印者が女ではないという事なのか、それとも私が器であるようにこの人もどこか特別なのか。

 またそれに加えて、そもそもジャッジメントに同じ烙印者が居るというのも聞いていないし、どうも私の頭は酷く混乱してしまっている。


「ちげえよ。俺がそいつを殺したからな。けど、どうにも愛されちまったみてえで、この槍と一緒に刻印を刻まれちまった。呪いみてえに見えるかもしれねえが、俺の意思じゃどうにも出来ねえから受け入れるしかねえのさ」

「え、それじゃあ……」

「気にするな、これは俺の問題だ。それに、今はこんな事で悠長に話してる暇はないだろ? さっさと烙印者を仕留めに行くぞ」


 呪いを受けて死んでいないだけマシなのかもしれないが、それでも人生を縛られてしまったことには変わりない。

 魔女を倒せばどうにかなるのかもしれないが、未知数の事柄について話している時間が無いのも事実だ。

 なにせ、次いつ矢の雨が降り注いでくるのか分からないのだから。


「烙印者の位置は特定しているんでしたよね?」

「あぁ。お前らが戦っている間に探しておいたからな。ただ、俺が来たことに気付いている以上は移動されているかもしれねえ。付いてこい、先導はしてやる」


 一緒に烙印者を倒す為に、男が伸ばした手を掴もうと私も手を伸ばす。

 ……しかし、動き出そうとした体は寸前で止まった。

 それは私の意思ではなく、傷だらけでも行こうとする私を止めようとするルーナとノーヴァによって。

 いつルーナが意識を取り戻していたのかは定かではないが、二人共瀕死とは思えない程の強さで掴んできているのだ。


 ――まるで『行かないで』とでも言うように。


「……ごめん、行かないと」


 私は二人を見つめながら首を振り、無理やり引き離すのではなく、離してもらえるように説得を試みる。

 今は時間が惜しい。二人を守る為にもこれで納得してくれたら良いのだが。


「でも、貴方が幾ら丈夫だからって、その傷じゃ動くのだって……」

「そうっすよ。あの人は一人で烙印者を倒したくらい強いんすから、ユフィさんが手を貸さなくてもきっと大丈夫っすよ」


 説得に聞く耳は持たず、私の言葉を理解しても尚、振り絞った声で必死に私を止めようとする二人。

 掴むその手は未だ離される気配はなく、弱まることもなかった。


「ごめんね。私は二人を傷つけた烙印者を許せないんだ。大丈夫、ちょっと手を貸すだけ。無茶はしないよ。だから、ね?」

「仕方ない、ですね。けど、お願いだから無理はしないでちょうだい」


 ルーナが手を離し、続いてノーヴァも嫌々ながら手を離す。


「ありがとう。それじゃ、すぐに戻ってくるからね!」

「準備出来たか? 勝負は一瞬だ、合わせろよ?」

「はい!」


 待っていてくれた男がもう一度手を差し伸べ、私はそれを今度こそ掴む。

 そしてその瞬間、私は勝負が一瞬だという言葉の意味を理解した。


「――飛んでる!?」

「ちげえ、これはただの跳躍だ」


 まるで空に飛んでしまったと勘違いするほどの跳躍。

 これは十中八九男の持っている槍の能力であり、確かにこの高さがあれば烙印者を見つける事は容易かった。

 それこそ、おおまかな位置さえ分かれば一瞬だ。


「やっぱり移動してやがったか。まぁいい。もう、補足した。行くぞ、舌を噛むなよ!」

「えっ? ――きゃあぁぁあ!!!」


 烙印者を見つけ、ここからどう倒すのかと思ったその時、男が私の体を掴んだと思えば、そのまま烙印者へと向けて投げられてしまった。

 あまりの出来事に私は思わず叫んでしまったが、私の横を更に猛スピードで飛んでいく槍を見た瞬間、ここから自分が何をするべきなのかを把握し、私も武器を取り出した。


「なっ!? どうしてここが!?」


 私と槍が接近する頃にようやく烙印者が気付いて驚いていたが、時すでに遅く、槍によって無防備な腹は貫かれた。

 血飛沫が眼前に迫る中で、私は全身に力を込める。


「はぁぁぁあ!」


 悶絶して動けない烙印者の元に、遅れて辿り着いた私は勢いを保ったまま笛を振り下ろした。

 その衝撃は民家の屋上にいた烙印者を民家ごと貫通して地面へと叩きつける程であり、地面には亀裂も出来ている。


「止めは俺が刺しておく。そんな体で良く頑張ったな」


 地面を割るほどの一撃は私の体にも負荷を与え、元々瀕死だった体ではどうにも耐えきれず、男の言葉に小さく頷くだけで返事をする。

 そのすぐ後に悲鳴にも似た断末魔が横から聞こえてきた。

 また一人の力じゃ倒せなかったか。

 不甲斐ない自分へのイラつきと、冷静になった事で激しくなる痛みを感じた私は、ひとまず寝転んで休むことにした。

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