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星降る魔女の子供達  作者: ねぎとろ


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38話 『降り注ぐ矢雨』

 逃げる背中を追い、一撃で仕留める為に武器を構える。

 しかし、私が振りかぶるよりも早く何処からか飛んできた矢によって私ごと烙印者は貫かれてしまった。


「クソっ、あいつ、僕を囮にしやがって。こんな、こんな最期かよ……」

「っ! この矢、一体どこから飛んできて――!?」


 矢によって蠍の烙印者が死に、私へと力が吸い込まれたお陰で迫りくる矢をなんとか弾く事が出来ていた。

 それでも急所を避ける事が精一杯であり、傷は増えていく。

 降り注ぐ矢が何処から飛んできているのかも把握出来ないままに、攻撃の矛先は私からルーナ達へと向いてしまった。


「ノーヴァ! 私から離れなさい!」


 自分が狙われていることを理解したルーナは近くで介抱してくれていたノーヴァを突き飛ばし、無防備となったルーナの背中へと矢は深々と突き刺さった。


「うぐっ……」

 毒に加えて矢による痛みすらも与えられたルーナは苦悶の表情を浮かべた後に血を吐き、地面に伏せる。

 一瞬の驚きの後、ノーヴァはすぐさまルーナを抱えて走り出すが、背後から迫りくる矢によって足を穿たれてしまった。


「ぐっ、ルーナさんだけは絶対に守らないと……!」


 ノーヴァの手から離れ、無慈悲にも転がっていくルーナ。

 激しい苦痛に呻き声は漏れている。


「ルーナ! ノーヴァ! 二人共、今助けるから!」


 這いつくばりながらもノーヴァはルーナへと覆いかぶさって守ろうとしている。

 そんな二人を見て私が動かない訳がなく、今すぐにでも助けようと走り出すが、それを許さないとでも言うように私を狙って四方から矢が降り注いだ。


「この矢の動き、まさか三人目の烙印者!?」


 私へと飛んでくる矢はおおよそ人間技とは思えず、直角に曲がり、避けたとしても地面に刺さる前に方向転換してきていた。

 まるで自在に矢を操っているかのようだ。

 けれど、烙印者の能力が矢を操るという事だからなのか、威力に関してはそれ程でもない。

 とはいえ、これは私だからそう思うだけ。

 傷の深い二人からすれば危険過ぎる攻撃だ。


「こそこそ隠れてないで姿を見せたらどうなの!?」


 絶え間なく降り注ぐ矢を弾きながら声を張り上げるものの、こんな問いかけに烙印者が反応することはない。

 が、そんな事は初めから承知の上だ。

 ならどうして私が声を張り上げているのか。

 それは偏に私へと注意を向ける為に他ならない。


「あれ? 攻撃が……止まった?」


 私の声が聞こえたからなのか、不思議な事に私へと続いていた攻撃は止まり、静寂の時間が訪れた。

 多少妙ではあるが、動くなら今しかない。


「ノーヴァ! ルーナ! 大丈夫!?」

「ユフィ……さん。ウチは大丈夫っすけど、ルーナさんがやばいかもっす……」


 攻撃が止んだ隙に二人へと近づいた私は容態を確認する。

 ノーヴァは意識もあり、命に別状はなさそうだが、ルーナに関してはノーヴァの返答通り危険な状態だ。


「と、とりあえず私がルーナを担いで運ぶから、ノーヴァは自分で動けそう?」

「はい、なんとか歩くくらいなら……」

「――!? ノーヴァ、私の後ろに隠れて!」


 意識が朦朧としているのか呼吸はしているものの、立つことも喋ることも出来ないルーナを担ぎ、治療するために運ぼうとした瞬間だった。

 手負いの三人を狙う為に待っていたのか、一気に私達を殺そうとさっきよりも多い矢が一斉に振り注いだ。

 私一人じゃ到底弾く事の出来ない物量。

 でも、後ろに流す訳にはいかない。


「くっ、この数は捌ききれない!」


 蛇を召喚する時間はない。切れ目のない狙撃によって笛を吹く時間がないのだ。


「ユフィさん、ウチも……」

「駄目! 良いから私の裏で隠れてて!」


 瀕死のノーヴァが動こうとするのを無理やり止め、私は一心不乱で防ぎ続けるが、それでも二人を守りながらでは難しく、私の体には幾つも傷が増えていった。

 膝にも腕にも、脇腹にも。

 体には矢が刺さり、降り注いでいた矢が収まる頃には幾つ刺さっているのかも分からない状態になっている。


「――おい、お前が件の烙印者だな。狙撃手の位置を特定した。動けるなら手を貸せ」


 刺さっている矢を無理やり引き抜き、その度に噴き出す血と痛みに耐えていた私へと、誰かが急に声を掛けてくる。

 言葉から何となく味方だという事は理解できるが、こんな状況ですぐに返答など出来るわけもない。

 今はひとまず二人を安全な場所に移動させようと思って顔を上げた時、そこには今にも頭を貫こうとしている矢が飛んできていた。

 避ければ二人のどちらかに当たる可能性が高く、避けなければ致命傷を負う可能性が高い。


 防ぐことも間に合わないと思ったその瞬間――。


「急に声を掛けて悪かったな。お前にも伝わっているだろうが、俺が本部から派遣された援軍だ。ここからは隊長として指揮を執る、お前は黙って付いてこい」


 --最高の言葉が私の耳に届いた。

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