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星降る魔女の子供達  作者: ねぎとろ


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『何気ない一日』

 なんだかんだ言いながらも、離れる事なく寮内を案内してくれるルーナ。

 案内された部屋のどれもが私にとって新鮮であり、何度驚いたか分からないが、一番感動したのは最後に案内された私とルーナがこれから先一緒に生活する部屋だった。


「フカフカのベッド! それに机や椅子! あ、窓もある!」

「えっと、普通だと思うのですが……そこまで嬉しいものなのですか?」

「い、いやいや牢屋と比べたら天と地の差があるって!」

「あー……確かにあの環境と比べたらそこまで喜べるのも納得です」


 一度私の事をジッと見た後に、牢屋での暮らしを想像したのか、苦虫を嚙み潰したような嫌な顔をして苦しんでいる。

 恐らく、どれくらい違うのかを考えているのだろう。

 こういう所が真面目というか、優しいというのかはともかく、最初こそ私が見ただけで嫌そうにしていたけど、今じゃこうして会話も普通にしてくれている事に嬉しくなってしまう。


「その、体調が悪いのですか? もしかして私が牢屋の事を話したから思い出してしまったとか!? それなら申し訳ありません。もし辛いなら私を無視して寝ても構いませんよ」

「んーん。ルーナの所為とかじゃないよ! ちょっと考え事してただけだから大丈夫だよ。心配してくれてありがとね」

「いえ、こういったことも仕事なので」


 あくまでも仕事という事にしたいのか、相変わらず分かりやすい照れ隠しをしながら私から目を逸らしている。

 相変わらずの可愛いさで思わず抱きしめたくなるが、余計にそっぽを向かれてしまうだろうし、やめておいた方が良さそうだ。


「そっか、仕事だとしても心配してくれて嬉しいよ。あ、というかそれよりもどうしてこの部屋にはベッドが四つもあるの? 二人にしてはやけに広いし、私とルーナの部屋だよね?」


 部屋をキョロキョロと見渡しながら疑問符を頭に浮かべるようにルーナへと問いかける。

 他の人と同室という可能性も考えられるけど、こんな私と同室で一緒に暮らすなんて皆からすれば願い下げだろう。

 それに、私がクロスに言われたのはルーナと暮らせという事。仮に同室の子が居たとして、仲良くなれるなら良いけど、万が一にも殺そうと考えている人だったら私からしても最悪だ。


「そんなに考え込まなくても大丈夫ですよ。明日にはこの部屋に来るのでその時に説明しようと思っていましたが。仕方ありません。特別に今教えてあげます」


 溜め息をつき、やれやれといった様子でルーナは明日来る同室の女の子がどんな人物なのか詳細を省きながらも話してくれた。


「え、えっとつまり、私の監視の為に烙印者に抵抗がない人が来てくれるって事だよね!?」

「はい、正直実力もあって烙印者に対して敵意や殺意を持たない人なんて探しても見つからないと思っていたのですが、なんとか見つかりましたので、明日来る手筈になっています」

「それってつまりさ!」

「えーっと、そう、貴方の望む普通の女の子ですよ。といっても、もう一人は……」

「やったー! うわー、すっごく楽しみだなぁ!」


 仲良くなれそうな女の子が来てくれることに歓喜し、ついつい飛び回りたくなってしまう。

 なにせ、今まで悪意と敵意に晒され続けた私にとって、烙印者ということを気にしない女の子が来てくれるのは物凄く嬉しい事なのだ。

 なにやらルーナがあと一人来る女の子についても話そうとしてたみたいだけど、私の興奮具合に呆れて黙ってしまった。

 でも、私からもこれ以上追及する必要は良いだろう。だって、どうせ明日になれば全部分かる事。


「えっ!? もう寝ちゃうの? もっと話そうよ。夜はまだまだこれからだよ!」

「いや、貴方疲れてたんじゃないんですか? それに明日も訓練がありますので私はもう寝ますよ。だから貴方もさっさと寝てください」

「そんなぁ……。ねぇ、もうちょっとだけさ、ね?」

「嫌です。今日は私も喋りすぎて疲れているんですよ。もう部屋には鍵を掛けましたし、貴方も寝る以外出来ないので諦めてください。というか、五月蠅いので早く寝てください」

「ぐぬぬ。はぁ、仕方ないか。ルーナ、今日はありがとね。おやすみなさい」


 誰かが近くに居てくれる、話してくれる。そんな普通の事が楽しすぎて、今日は思わずはしゃいでしまっていた。

 勿論、騒がしくしちゃったり、話に付き合わせてしまった罪悪感はある。

 けど、それでも普通で平和な日常を過ごせたような気がしてとても嬉しかったのだ。

 きっと私以外に今のこの昂る感情を理解出来る人は少ないだろう。別にそれでも構わない。

 だって今は何より、小さい声だったけど確かに聞こえたルーナの「おやすみなさい」という言葉は、私の事を少なからず想って言ってくれた言葉だと思うから。


「んー、眩しいよぉ」

「そろそろ起きてください。朝ですよ」

「うぅ、眠い。眠いけど、頑張って起きますぅ……」


 いつの間にか寝てしまっていたのか、窓から差し込む光とルーナの声で私の目は覚めた。

 久しぶりに感じた日差しの心地よさと、ベッドの柔らかさにまだ寝ていたいという気持ちもあるが、流石に起きないとルーナの逆鱗に触れてしまうかもしれない。


「おはよう。ごめんね、起こしてもらっちゃって」

「いえ、構いません。それにしても貴方は寝起きが良いのですね。それに昨日よりも血色が良くなっていますし、体調は万全そうです」

「万全というより絶好調かな。なんたって昨日はフカフカのベッドで寝られたからね。体は軽いし、今ならなんでも出来ちゃうよ!」

「そうですか。私は今こうして意識を保つのが精一杯なのであまり騒がないでくださいね。あ、それともう少ししたら昨日話した人たちが来ますので準備しておいてください」

「うん! 了解!」


 寝惚けているのか、頭を揺らしながらも私へと指示を出してくるルーナに思わず笑いそうになるけれど、同時にこういった日常みたいなものが幸せに思えて泣きそうになってしまう。

 でも、残念ながら私の涙腺が崩壊することはなかった。

 むしろ、ルーナの目を完全に覚ます事態が起きてしまったのだ。

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