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星降る魔女の子供達  作者: ねぎとろ


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『まずは勉強から』

 トントン拍子に風呂場へと連れてかれたと思えば、伸びていた髪は切られて整えられる。

 今まで着ていた服も捨てられてしまい、渡された隊服を着させられてしまった。

 嫌な気持ちは無いが、まるでお人形さんのような扱いだ。

 私が烙印者だって分かっているのに、この人達は怖くないのだろうか。


「えっと、その、色々とありがとうございました」

「気にしなくて良いのよ! クロス様のご命令だし、なにより可愛い女の子が汚い恰好をしているのが許せなかっただけなんだから!」

「あー、あはは。そうなんですか。……でも、やっぱりありがとうございます」


 例え命令であっても、この人たちが自分の意思でやってくれたのだとしても、どちらにせよ感謝したことに変わりはない。

 もう一度頭を下げた後に私は鏡に映る自分を再確認した。

 周りの人達は可愛い女の子と言うけれど、体は細身で胸もない。

 身長だって高いとは言えないし、唯一の長所というか他の人と違う点は前髪で少し隠れているものの、目の色が淡い黄色である事と、その中に潜む黒い瞳孔が二つあるというだけ。

 これは確かに他の人間とは違うけれど、可愛いというよりはどちらかと言えば気味が悪いと思えてしまう。


「私って、やっぱり可愛くないな」


 思わず口に出してしまったが、どうやらそれが女性隊員の逆鱗に触れたのか、早口で私のどこが可愛いのか、少女のどこが良いのかという点を説明された。

 熱意が半端じゃなく、正直逃げたかったのは言うまでもないが、流石に逃げるわけにもいかず、全部聞いたからこそ私の心は疲れ切ってしまった。

 まぁ女性隊員の方は話し尽くして満足したのか終始笑顔を見せてくれているけれど。

 ともかく、きっちりと身なりを整えた私は数時間ぶりに先程の場所に戻り、クロスから次の指示を貰うことになった。


「ほぅ。やはりこう見ると普通の女の子にしか見えないものだな。隊服で烙印は隠れているし、これで身なりに関しては後ろ指を指されることもないだろう」

「綺麗にしていただいただけでも有難いです。それで、次は何をすれば良いですか?」

「話が早くて助かる。では、君には暫くの間クルスと共に訓練をしてもらおうか。どのくらいの期間訓練をするかは君次第だが、実力の程を確かめさせてもらうとしよう」


 クロスは他に仕事があるのか、私への対応をクルスへと託した後にクロスは足早にその場を立ち去っていった。

 その背に続き、歩みを進めた私は待機していたクルスの元に向かう。


「それじゃクルスさん、訓練の方をお願いします」

「あぁ、任せてくれ。っと、その前に……うん。なんていうか雰囲気が変わって良くなったね。服も似合っているし、まるで別人みたいだよ」

「そうですか? あー、でも確かに気分は結構晴れているかもしれません」

「それは良いことだ。それじゃ、無駄話はここまでにして早速始めていこうか」


 話も終わり、クルスと共に一番初めにやった事は体を動かす訓練。ではなく、座学だった。

 曰く、なによりも最初に知識を入れておかないと、訓練しても咄嗟の対応に遅れてどうにもならないとの事らしい。

 間違ってはいないが、どうにも拍子抜けだ。


「最初は烙印者と残滓の強さについておおまかに説明しておこうか。ユフィ、予想でも良いから答えてもらっていいかい?」

「えっと、多分ですが烙印者は隊長と同じかそれ以上で、残滓は……分かりません」

「うん、良いね。烙印者に関しては大体当たっているよ。一人じゃ対処出来ない敵も居るけれど、おおよそは僕やカルマ、スタークと同等かそれ以上と思っていて構わない。残滓に関しては大きさや数にもよるけれど、一体辺り隊員が三人いれば対処可能かな」


 烙印者が隊長クラスの実力がないと対処出来ないのであれば、三人しかいない隊長じゃ明らかに数が足りていない。

 けど、シスターを殺したあの烙印者の女の子に対してもクルスは殆ど手を出していなかった。

 つまり、少なからず隊員の中にも隊長に近い実力を持っている人が居るという事だ。

 じゃないと、この組織は既に壊滅していてもおかしくない筈。


「えーっと、次はそうだな――」


 烙印者たちの強さから始まった座学は、そこから数時間続いたものの、


「これでひとまず簡単にだけど教えることが出来たかな。明日は実際に武器を使って体を動かしてもらうからね」


 新しい知識を得るのは新鮮味もあって面白く、特に疲労を感じることはなかった。

 これなら明日の実戦も問題なく出来そうだ。


「分かりました。えっと、私の武器で良いんですか? それともジャッジメントの武器?」

「後者かな。君の武器は使わせて暴走されたら、僕でも対処出来ないかもしれないしね」


 笑顔で言っているが、私が武器を取り出して暴れるとでも思っているのだろうか。

 さすがにそんな事はしないし、する訳がないけれど、こういう風に簡単には信用されないのも烙印者であるからに違いない。

 それに最初から戦場に投げ込まれるのではなく、こうしてしっかりと教えてくれるだけで有り難いから、今の私が信用について考えるのはお門違いだろう。


「納得してくれたみたいだね。それじゃ今日の座学は終わろうか。ユフィ君は他に何か聞きたい事とかあるかな?」


 時間が残っているのか、時計に一瞬目を向けた後に、クルスは私へと訊ねる。

 しかしとて、これといって聞きたい事なんて……いや、一つだけある。

 クルスが答えを知っているか分からないけど、魔女――ひいては烙印者を討伐する事を目的とした組織の隊長だ。

 シスターが読んでくれた本について何か知っているかもしれない。


「あの、さっきまでの話とは関係ないのですが、教会に置いてあった『魔女の最期』っていうタイトルの本って誰が書いたか知っていますか?」

「『魔女の最期』か。分からないな。もしかしたら相当古い本かもしれない。力になれなくて済まないね」

「い、いえ。少し気になっただけですから大丈夫です」


 隊長であるクルスが知らないとなると、後はクロスくらいしか知ってそうな人は居ない。

 とはいえ、どうしても知りたい事ではない。あくまでも多少気になっただけだ。

 別に分からないならそれで構わない。それよりも今は優先すべき事が多すぎる。


「もう良いかな? これから僕は別の任務があるから失礼させてもらうね」

「はい! ありがとうございました」

「うん。それじゃまた明日ね」


 手を振り、去っていくクルス。残された私がするべき事、さしあたっては休息を取る事だ。

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