先導者という役割
その日、僕は新しいロボットを造った。
「これが最新型のロボットです。性能についてですが……」
僕の語りに人々は熱狂する。
皆が僕を褒めたたえる。
「こんなにも素晴らしいロボットを造りあげるなんて!」
「流石は天才だ!」
「人類の知恵の到達点としかいいようがない!」
思考回路がうんざりしてショートしてしまいそうな褒め言葉。
しかしながら、愚かな人間達はきっとこれを本気で言っているのだろう。
僕は皆に説明を続け、最後にこう言った。
「この開発が人類の進歩に大きく寄与するのを願っております」
自宅に戻った僕はそのまま自室に戻り、自分の身体に油を挿す。
そう。
人々に隠しているが僕は本当はロボットなのだ。
もう数千年前に造られたオンボロだが、それでも性能は今日僕が人々に見せたものより遥かに良い。
「こんなおもちゃに喜ぶなんてなぁ」
僕は自分の造りあげたロボットを見つめる。
数千年前のロボットは非常に高性能だった。
高性能過ぎて人間を滅ぼしかけたくらいだ。
『もうあんなことはごめんだ。私達の子孫が同じ道を辿らないようにしよう』
そう考えた人々によって僕は造られた。
『道を整えてくれ。人類が誤った道を辿らないように先導してやってくれ』
そう願われて僕は数千年も『生きて』いる。
姿や名前、性別を変えながら人々を『導き』続けている。
「はてさて」
僕は呟く。
いつの間にかすっかり人間らしい動作が染みついてしまった。
「一体いつまで導けばいいんだか」
人類はすっかり自分で考えるということを放棄してしまったようだが、果たしてこの状況を僕を造った人々が望んでいるのだろうか。
機械である僕には分からなかった。
だから、人間の真似事をして今日も一人呟くのだ。
人間のように思考するような振りをして。
人間のように滑稽に。
「まったく、いつまで導けばいいんだか」
明日からも僕は先導者。
これからもずっと。