恋した人は恋してはいけない人でした
僕には好きな人がいる。
その人は、僕より12歳上の大人の女性で。
優しくて、僕が転んだりすると「いたいのいたいの飛んでけー!」って、僕の頭を撫でて抱き締めてくれる。
頭も良くて、時々僕の勉強を見てくれる。
綺麗な人だけど、にこっと笑うと可愛くて。
僕は、その人のことが大好きだ。
僕は、その人に恋……してる。
けど、その人は恋してはいけない人で。
だってその人は──……僕のお兄ちゃんの恋人だから。
だから、僕がその人に恋しちゃいけない……けど。
気づいたら、僕はその人のことを好きになっていた。
その人に「恋してる」って気づいてしまった。
けど、この恋は叶わない恋。
お兄ちゃんからその人のことを奪おうなんて思わない。
だって僕は、お兄ちゃんのことも大好きだから。
「こんにちは、ハルキ君」
その人は僕に可愛らしく微笑みながら、僕の頭を撫でた。
その時、昨日はなかったものに気づいて僕は涙を溢した。
その人の左手の薬指に、銀色に輝く指輪がされていた。
僕は嬉しく思ったのと同時に、悲しくなった……