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創作メモ_1  作者: 淳一
9/10

創作メモ23


「君は、本当に変わらないな」

 そう言うと彼女は笑った。その笑顔が、どこか寂しげなものであったことは、気付かないふりをした。

 初めて彼女と会ったのは、まだ十にもならない頃。当時少し年上に見えた彼女は、けれど今となっては子供に見える。

 変わらない、のではなく、変われない。

 そういう風に、できている。

 同じくらいの大きさだった手も、今では私が彼女の手を包み込める。今ならもう、彼女を抱えて走ることだって、私にはできるのだ。

「だめよ」

 その考えを読んだかのように、彼女が笑って窘めた。

「それは、だめ」

「………………」

「それは、神様を怒らせてしまうから、だめ」

「………………そっか」

 この土地には神がいて、彼女は遥か昔にその神に嫁いだのだと聞かされた。彼女の齢を考えれば、その当時であっても婚姻などとは無縁だったろう。結婚などとは名ばかりの、体の良い生贄だったのだ。

 その当時の見た目のまま、年相応の思考のまま、無垢で無邪気で、無知な子供。そうあることを強いられた彼女という存在。

 失敗したな、と思った。

 今日のこのことがあった以上、神とやらは彼女の記憶をそのままにしてはくれないだろう。私との時間も、僅か一晩でなかったことにされてしまうかもしれない。

 もう一度、彼女の手を取る。彼女の顔から笑みが消えた。あるのは困惑と恐怖――そして、僅かな期待。

「……ごめん」

 そのまなざしに、私は項垂れるように手を離した。

「いいのよ」

 ほっとしたような安堵が、彼女から漂ってくる。

 ここから彼女を連れ出すのは容易い。けれど、彼女は遥か過去の人間。ここから連れ出せば、存在そのものが消えてしまう。

 連れ出すだけの、勇気がなかった。

「……ごめん」

 もう一度謝って立ち上がる。

「もう帰るの?」

「うん」

「そう」

 彼女が視線を落とした。彼女もわかっているのだろう、明日の私たちの関係がどうなっているのか。

「――またね」

 それでも彼女はそう言って手を振った。

 だから私も、「またね」と嘘をついた。




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