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第4話 ネムット村を救った英雄

 無詠唱魔術の特訓を初めて3か月。

 俺は息をするように無詠唱魔術を使えるようになった。

 と言っても初級魔術のみだが。

 そんな中、お母さんは俺の目の前にたくさんの教材を並べた。


「カノン、算術のお勉強を今日から始めます」


「え………」


 なぜ、算術?魔術じゃないの?

 そう思った。


「いい、カノン。算術は生きる上で学ばなければいけないの」


 そりゃあ、まあ算術は覚えて損はないだろう。

 お金の計算ができなければ、いろいろと困るだろうし、お母さんの言いたいことは理解できる。

 でも、それ別に後からでよくないか?俺としては今すぐにでもお母さんから魔術を学びたいのだが。


「安心して、わからないことは恥じゃないから。何でも聞いて、カノン」


「う、うん」


 お母さんの目が本気だ。

 今までに感じたことがないぐらいの圧に俺は苦笑いをするほかなかった。


「それじゃあ、早速、この1冊を今日中に終わらせよっか」


 悪魔の笑みだ。

 分厚い本を片手に1日で終わらせろと言ってくるんだ。俺から見たら悪魔でしかない。


 絶対に1日じゃ終わらないだろ。

 でも、やりたくないっ!なんて言えるわけないし。

 まあ、ある程度やったら無理だってわかるか。さすがのお母さんでも。


 普通に考えて分厚い本を1日で終わらせるなんて不可能だ。とくにまだ右も左もわからない異世界の本で。


 そうして、お母さんとの付きっきりの算術お勉強会が始まったのだった。


□■□


 1週間が過ぎたころ、俺は優雅に外を眺めながら魔術の本を読んでいた。


「簡単だったな~」


 何が簡単だったのか、それはもちろん、算術のお勉強だ。

 この世界の通貨は銅貨、大銅貨、銀貨、金貨、白銀貨の5種類ある。

 銅貨は日本円で換算すると10円。

 大銅貨は銅貨10枚に相当し、100円。

 銀貨は大銅貨10枚に相当し、1000円。

 金貨は銀貨10枚に相当し、1万円。

 そして、白銀貨は金貨100枚に相当し、100万円になる。


 日本の通貨に比べれは種類は少なく紙幣も存在しないし、分かりやすい。

 そして、肝心の算術の勉強内容だが、高校生レベルぐらいだった。

 おかげで、1週間ですべてを制覇することができ、お母さんが作ったテストもすべて満点を取った。

 あの時のお母さんの顔は今でも忘れられない。


『…………ま、満点?』


 真顔だった。

 あの顔はとても新鮮だったな。

 多分もう、二度と見れないね、そんな気がする。

 

「それにしても帰ってくるの遅いな~、お母さん」


 今日の朝からお母さんは出かけている。

 どこへ出かけているかというと、この森の外だ。

 ちょくちょく、お母さんがお出かけに行くのは知っているが、どこに行って何をしているのかは知らない。

 別に興味もないから聞きもしない。

 だけど、さすがに退屈だ。

 魔術の本も読んでも。

 へぇ~ふ~ん。

 ぐらいで特段、ワクワクしなかった。


 魔術の勉強は楽しい。最近ではやっと中級魔術に片足突っ込んでいるぐらいには魔術を扱えるようになった。

 でも、ここ最近、本を読むだけでは限界を感じている。


 やっぱり、魔術を実践したい。

 でも派手にやるとお母さんに魔術が使えることがばれてしまう。

 だから、俺はお母さんが魔術を教えてくれる日を待っているんだ。そうなれば、好きに魔術が使えて、勉強もはかどるはず。

 というか、早く思いっきり魔術の勉強をさせてくれ。もう、コソコソするのストレスなんだよ。

 そんなことを思いながら、俺はお母さんの帰りも待つのだった。


□■□


 クネア視点


 私がご飯を作るとき、最近気を付けていることは栄養バランス。

 どうしても星屑の森の中の食材だけでは栄養バランスをとるのが難しい。

 そこで3年前から私は近くにあるネムット村まで徒歩約3時間、歩いて食材を買いに行っている。

 まあ上級転移魔術を使えば、一瞬なんだけど、転移魔術を使う魔術師は数が限られているから、見られれば大騒ぎになる。

 全員に記憶改変魔術を施す手段もあるけど、魔力消費が多くて燃費が悪いし、その場しのぎの奥の手。

 だからこうして、わざわざ歩いてネムット村に訪れている。


「今日はいいお野菜売ってるかな」


 ネムット村に売りに出されているお野菜を見に来たクネアだが、どのお店に行ってもお野菜は売っていなかった。


 おかしいな~、いつも売ってるのにどうして。

 村の人たちに聞いてみようかな。


「…………あの叔母さん」


 お野菜が売っていないことに違和感を覚えたクネアは近くおばあちゃんに声をかけた。


「叔母さんとは失礼なっ!って見ない顔だねぇ、あんた」


「そんなことよりどうして一つも野菜が売られていないの?」


「あぁ?あ~なんで私があんたに教えなきゃいけないんだい?」


「…………」


 どうやら、叔母さんを怒らせてしまったようで。

 とても不機嫌そうだ。


 どうしよう、無理やり聞き出すこともできるけど、目立ちたくないし。

 う~ん。


 帰りが遅くなるのも嫌だし、やっぱり無理やり…………やっちゃう?

 そう思った時だった。


 カンカンカンカンっ!と鐘が村全体に鳴り響いた。


「きちまったか」


「来た?何が来たの?」


 鐘が鳴るほうへ、視線を移すとそこにはいた。

 赤いうろこが特徴的な。


 …………大きなドラゴンが。


「最近、ここら辺をうろうろしているのさ」


「それと何の関係があるの?」


「あんたねぇ、…………あのドラゴンがうろうろしているせいで野菜が収穫できないんだよっ!それぐらいわからんしゃいっ!!」


「叫びすぎると喉痛めるよ」


「あんたのせいでねぇっ!はぁ…………年寄りを疲れさせるんじゃないよ、まったく」


 どうやら、あのトカゲのせいで野菜が収穫できず売られていないらしい。

 

「あんなトカゲさっさと殺せばいいんじゃないの?」


「トカゲじゃなくて、ドラゴンっ!はぁ~間違えるんじゃないよ。まったく、それに知らないのかい?ドラゴンは冒険者や騎士たちですら手を焼く魔物なんだよ?殺せばッて馬鹿言ってんじゃないよ!!」


 叔母さんは呆れた表情で口酸っぱく語った。

 だが、そんなことはでもいい。

 私が一番聞きたいのは…………。


「叔母さん、あのトカゲを殺したら、収穫できるんだよね、野菜」


「だから、それができたら苦労しないんだよ」


「叔母さん、私が聞きたいのは殺したら、収穫できるのか、できないのかだよ。答えて」


「…………あ、あんた」


 叔母さんから見た見知らぬ彼女は正気ではないと思った。

 常識的に考えて、まずドラゴンを殺すなんて不可能だからだ。それこそ、名の知れた実力を持つ冒険者、騎士たちでもない限り。


「まぁ…………すぐには無理だろうね」


「どうして?」


「そもそも野菜の収穫には時間がかかるんだよ。傷んでいないか、とか仕分け作業もあるしね。だから、最低でも2日間はかかるね」


「わかった。2日間だね」


 2日間は少し長いけど、このまま野菜が買えなくなると困るのは私だ。

 なら今ここでトカゲを殺して2日間待つほうが一番早いはず。


 クネアはここで決めたのだ。

 あのトカゲを殺すことを。


「ちょっとあんた、どこ行くきだい?まさか…………」


 叔母さんは察しよく、ドラゴンのほうへと視線を移した。


「待ってて、私があのトカゲ、殺してくるから」


「ちょっと、本気かい!?」


 私は叔母さんに背を向けて、トカゲがいるほうへと歩き始めた。


 あの大きさのトカゲなら上級魔術で殺せる。

 でも見た目からして炎耐性が高そうだから、火系統の魔術を使うのは控えるべき、なら私が選ぶ魔術は一つ。


「土系統の魔術」


 すでにクネアの中でトカゲを殺すプランは出来上がっている。

 あとはできるだけ目立たずに殺せるか。

 下手に目立つと後々面倒くさいからね。


透明化(インビジブル・ボディ)飛行(フライ)


 そう唱えると、全身が透明になり、体が宙に浮いた。

 これは上級魔術の透明化(インビジブル・ボディ)飛行(フライ)

 文字通り、全身を透明化させる魔術と空を飛ぶ魔術だ。


「カノンために私、頑張るから」


 私は速度を上げて、トカゲがうろうろしているネムット村から少し離れた森林地帯と向かった。

 そんな並外れた魔術を行使する姿を見た叔母さんは目をこすりながら、何回か確認した後、何もなかったかのように椅子に腰掛けた。


「…………もう年かねぇ」


 そう吐き捨てながら、青空を見上げるのだった。


□■□

 

 赤いトカゲは特にこれと言って何かをするわけもなく、ネムット村から少し離れた森林地帯の周りをうろうろしている。

 その様子はトカゲらしくなく、ほんの少しだけ違和感を感じた。

 

 変なトカゲ、どうして襲ってこないんだろう。


 トカゲは肉食だ。こんな近くに餌があれば食いつきそうなものの、一切、村人に目もくれず、徘徊しながら首を左右に振って周りを見渡している。


 まあいいか。考えたって仕方がない。


「さっさと終わらせよう」


 クネアは何もないところから細長い杖を取り出した。


 トカゲはこちらに気づいていない今が好機。

 杖を掲げ、冷たく声で唱えた。


「アース・ガンド」


 トカゲの足場が魔術によって手の形に変えて、拘束した。

 それに強く抵抗するトカゲだが、微動だにしない。


 抵抗しても無駄。

 基本的に魔術は使用者の魔力総量に比例してその威力、強度などが変化する。

 トカゲ程度の抵抗で私の魔術がほどけるはずがない。


「…………なに?」


 トカゲがこちらを覗く。


 私が見えてる?ありえない。


 透明化(インビジブル・ボディ)は強化系統の上級魔術。同じく強化系統の上級魔術、ディテクトを使うか、もしくはすべてを見抜く魔眼、看破の魔眼でなければ不可能。


 もしかして、普通のトカゲじゃないのかも。

 だとしたら、調べてみたい。


 魔術師は本来、探究するものたち。

 故に魔術師は気になったり、興味を抱くと調べたくなる生き物だ。


 だが今のクネアは違う。

 最優先にカノンを考えて生きている親ばか。


 たとえ、興味を抱いたとしても、最優先すべきか愛しいカノンのためにとってどんな行動が最適なのかだ。


 だからこそ、親ばかであるクネアがとる行動は一つしかない。 


「これで終わらせる」


 杖をトカゲに向けて、私は唱えた。


磔地獄ヘル・クルーサフィクション


 土系統の中級魔術アース・ガンドを土系統の上級魔術磔地獄ヘル・クルーサフィクションに上書きし、土を針に形を変えて、トカゲの硬い鱗を貫いた。


 これでおしまい。


 トカゲは血を流しながら。その場で動かなくなった。

 その様子に少しだけ失望感を感じた。


 あっけなかったな。

 もしかしたら、何かしら抵抗してくるかなと思ったけど、無抵抗し。

 …………考えすぎかな。


「でもこれで野菜が買えるようになる。今日は帰ろう。カノンが待ってるし♡」


 私は帰ろうと背を向けた。

 その瞬間、鋭い殺気が背中に突き刺さった。


「なに?」


 ふと振り返れば、トカゲの眼は光を失っておらず、土系統の上級魔術磔地獄ヘル・クルーサフィクションの針を破壊し、翼を広げて飛び上がった。


「傷が治ってる」


 あれは竜族特有の自己治癒能力。

 しかも、一瞬で完治してしまうほどの治癒速度なんて、もしかして、ただのトカゲじゃない?


 面白い、そう思いながら私は笑みを浮かべた。


「…………攻めてこないの?」


 トカゲに問いかけるも答えは返ってこない。


 私の魔術を食らってもすぐに完治するほどの自己治癒能力があれば、人語もしゃべれると思ったけど、そうでもないみたい。


 その様子にネムット村の村人たちが徐々にこちらに注目しはじめた。

 すると、トカゲは膨大な魔力を腹に溜める。


 魔力砲(ブレス)だ。

 しかも、普通のトカゲと比べても数十倍の魔力砲(ブレス)。その破壊力は私が計算しても星屑の森にすら影響を与える。


「ますます、興味がわいたよ。でも、そうはさせない」


 自己治癒能力は個体によってさまざまだが、このトカゲの治癒速度からしても即死させなければ、殺すことはできないだろう。

 ならば、上級魔術のさらに上、聖級魔術を行使するしかない。

 でも聖級魔術をここで行使すればネムット村を巻き込んでしまう。

 下手をすれば、消滅すら考えられる。


 …………あまり使いたくないけど、これしかない。


 私は右目を手で押さえ、左目の焦点をトカゲに合わせた。

 そして、破滅の魔眼を開眼させた。


 破滅の魔眼は捉えた物質や生き物を即座に殺す強力な魔眼。

 制御が難しく、私ですら普段は封印魔術で封印している。


 聖級魔術を行使してネムット村が巻き込まれてしまうのなら、聖級魔術を行使するべきじゃない。なら、もう手段は一つだけ、私が持つ破滅の魔眼だ。


 一度、捉えた物質、生き物を殺す破滅の魔眼でトカゲを捉えると。

 動きを止め、鼻先から塵となって消滅した。


「ふぅ…………思ったより魔力を消費が激しいね」

 

 魔眼は常に目に魔力を流し続けることで機能する。そしてその力は相手によって魔力消費量が変わる。たとえ膨大な魔力を持っていようと、相手によってはそれが足枷にもなる。


 やっぱり、あのトカゲは普通じゃなかった。今の一回だけで半分とは言わないければ、それぐらいに近い魔力を消費した。


「…………考えても仕方がない。調べようもないわけだし。それより、これどうしよう」


 気がつけば、ネムット村のほとんどの村人が集まっていて、トカゲが消えたことに歓喜していた。


 目立たないつもりだったのに、と言葉を漏らしながら村人たちを見下ろした。


「ありがとう!見知らぬ魔術師!」

「本当に助かったわっ!!」

「ネムット村の英雄にバンザーイっ!!」


 下ですごく盛り上がっていた。

 それはもう一種の熱狂的なファンぐらいに。


「逆にこれは使えるかも」


 英雄は大袈裟すぎるけど、これぐらい慕われたほうが今後、ネムット村で行動するうえで楽かもしれない。


 そう考えた私は下まで降り、慣れたように口を回した。


「トカっじゃなくて、ドラゴンは私、クネア・フォーミアが倒しました。これでも村は安全ですので、安心して収穫を行ってください」


 ニッコリと笑顔を浮かべた。

 すると、村人たちは。


「女神さまだっ!!」

「女神様ばんざーいっ!!」

「まさか、こんな辺境の村に、ぐすぅん」


 村人たちはさらに歓喜した。

 しかし、私は”女神”という言葉を聞くと真顔で。


「神として崇めるのはやめてください。私は神のような、いえあのお方のような高貴な存在ではないので」


 冷徹な瞳が村人たちに注がれ、その場は息することすら忘れてしまうほどの冷たさに覆われ、静まり返った。


「普通にクネアで結構。それでは、透明化(インビジブル・ボディ)


 こうして、クネアはその場を去り、カノンが待つ家へと飛行(フライ)を行使して向かったのだった。


□■□


 それからというものネムット村にクネア生誕祭という行事が生まれた。

 別に生まれた年でもないのに村人たちが勝手に名付け、盛り上げるのだ。

 しかも、超絶美化されたクネアの像まで彫られ、それはもう大騒ぎ。


 その様子に一人の叔母さんはため息をつきながらその様子を眺めていた。


「…………あの小娘、本当に殺しちゃったよ、ドラゴン」


 あの小娘がドラゴンを殺したことに関しては大助かりだ。

 むしろ、感謝しているが、それ以上に大きな爪痕をネムット村に残していった。


 それはクネア生誕祭とかいう、英雄を祀るお祭りの開催。

 ほぼすべての村人がクネアに感謝をささげ、いつ出迎えてもいいよう料理を用意している。

 ふざけていると思うが、それほど感謝しているのだ。

 それにドラゴンのせいで貴重な食料と収入源が減っていたのも事実。

 それを救ってくれた彼女はさぞ、神に見えただろう。


 私は全然見えないがね。


「カルネさん、不機嫌そうだな」


「あんたこそ、どうしてそこまで騒げるのか理解できないよ」


「みんな、ドラゴンがいなくなってうれしいんだよ。これもすべてクネア様のおかげだ」


「わたしゃ~ため息が止まらないよ」


 感謝はしている。

 もしかしたら、ネムット村が人知れず滅びたかもしれないと考えると感謝でいっぱいだ。

 でも、普通に考えて、ここまで盛り上げる必要ない。

 むしろ、食料の無駄。ただでさえ、ネムット村の備蓄は少ないというのに。


「まあまあ、活気があっていいじゃないか。ここ最近のネムット村はあまり元気がなかったからな」


「ここは王都じゃないんだよっ!村なんてそれぐらいがちょうどいいってのに」


「カルネさんらしいけど、世界は移り変わるものなんだよ。それとも未だに昔の栄光が忘れられないとかか?」


「冗談言うんじゃないよっ!」


「冗談に決まってるだろう。真に受けるなよ」


 この男、相変わらず年寄りを馬鹿にしてくる。

 これだから若者は生意気なんだよ。


「これからが、楽しみじゃないですか。このネムット村がどうなるのか、世界がどう移り変わるのか、ね」


「さすが、次期村長だねぇ。もう村の行く末どころか、世界も見ているなんてねぇ」


「それが次期村長である俺の役目だからな。俺が村長になったら、必ず、この村を発展させて見せる。これはその第一歩なんだ」

 

「カッコつけてもかっこよくないからね」


「あはははっ!手厳しいな」


 ネムット村はクネア・フォーミアの登場により変化をもたらした。

 それがいい変化なのかはこれからわかること。


 あたしはただ見守るだけ。

 しかし、クネア・フォーミアだっけ?いったい何者なんだろうね。

 ただの魔術師には見えなかったけど。

 久しぶりに占ってみるかねぇ。そうすればあの小娘の正体がわかるかも。


 ネムット村にはとある有名人が住んでいる。

 それは誰もが知っている。

 その名前はカルネ・クラット。

 ネムット村で余生を過ごすただのおばあちゃんであり、同時に占星魔術を扱う魔術師。

 偉人七人衆の一人、預言者カルネ・クラット。

 それがあの叔母さんの正体だ。


「久しぶりに予言したくなったのか?」


「なぜ、そう思うんだい?」


「魔術師の顔をしていたからだよ、カルネさん」


「ふぅん…………そうかい」


 こうして、ネムット村は1日、お祭り騒ぎであった。

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