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第9話 星屑の森を探索

 ティカが誕生日を迎えるまで、残り10日。

 余裕を持って渡すことも考慮すると残り8日といったところだ。

 それまで俺はティカに相応しい誕生日プレゼントを用意しなくてはならないのだが。

 

「さて、どうしたものか」


 日が沈んだ夜、カノンは部屋の中でティカの誕生日プレゼントを考えていた。


 正直に言うと、誕生日プレゼントを用意する時間がない。

 基本的にティカとは夕方まで魔術の特訓に付き合っているため、プレゼントを買いに行く時間がなく。

 だからといってわざわざ私情を理由に1日空けてもらうのは師匠の立場としてどうなのかと思ってしまう。


(無理ゲーだな、無理ゲーすぎる)


 ティカの師匠になるまで勉強ばかりで、暇といえば暇だったが、今は毎日が忙しく、本当に時間がないのだ。


 となると、誕生日プレゼントもよ~く考える必要がある。


 やっぱり、女の子だからアクセサリーとかだろうか。

 いや、ティカのことだ。それで喜ぶとはタイプには見えないし、アクセサリーを用意するなら賢者関連のものでないと喜ばない気がする。

 

 いっそのこと、俺の手料理というのは…………いや、そもそも料理したことがないから却下だな。

 

「ダメだ。全然、思いつかない。よし、視点を変えてみるか」


 まずは俺がもらってうれしい物がなんなのか、考えてみる。


「…………」


(…………あれ、俺って意外と欲がない?)


 考えれば考えるほど特に欲しいものがないことに気づいた。

 振り返ってみれば、お母さんに一度も”あれほしいっ!あれほしいっ!”ってねだったことがない。


 前世はそれなりに欲しいものがあったはずなのに。

 例えば、ゲームとか、ラノベとか、いろいろと。


(そうか、この世界には娯楽がないんだ)


 そもそもこの世界のことをまだ全然知らない俺にとって誰かにプレゼントを贈ること自体が魔術を学ぶよりも難易度が高いのだ。

 

「…………どうしよう」


 ベットに寝転がりながら一度も使ったことがない杖を取り出した。

 今の俺の目標はこの杖を使うにふさわしい魔術師になること。

 そのために最低でも上級魔術を無詠唱で起動できるようになる必要があると思っている。

 だから、俺はずっとお母さんからもらった指輪に収納している。

 この指輪にはお母さんが仕込んだ空間魔術陣が刻まれており、使用者の魔力量に応じた物を収納できるようになっている優れもの。

 お母さんも同じものを使用しており、いろんなものをそこに収納しているらしく、なかなかに便利だ。


(いや、待てよ)


 いっそのこと、杖をプレゼントするのはどうだろうか。

 杖は魔術師にならだれでも持っているらしいし、ティカも喜ぶはずだ。


「よし、誕生日プレゼントは杖で決まりだな。問題は杖の作り方が知らないことだけど、運よく見本はあるし。よしっ!これにしようっ!!」


 俺はさっそく、お母さんからプレゼントしてもらった杖をベットの横に置き、じっくりと見つめた。

 杖の核は魔力水晶玉だ。

 魔力水晶を加工して作られていると本で読んだことがある。


「魔力水晶ってどこで手に入るんだ。え~と、たしかここら辺にたしか…………あったあった、これこれ」


 魔術師が扱う杖についての本。

 そこには魔力水晶について詳しかかれているページがあり、こう書かれていた。


■魔力水晶について


1.魔力水晶には8つの属性を持つ。


 それぞれ。

 火

 水

 風

 土

 雷

 氷

 光

 闇

 この8つの属性だ。

 これは魔術そのものが持ち合わせる系統の数とほぼ一致している。


 魔力水晶は属性にあった系統の魔術を使うことで効力を発揮し、その系統の魔術の火力が1.1倍される。

 これはすべての魔力水晶に共通である。



2.魔力水晶を入手する方法は二つある。


 一つ目は自然生成された魔力水晶を入手する方法。

 大気に含まれる魔力が多い場所でごく稀に生成され、純度が高く、特性も持ち合わせていることから高価。

 

 二つ目は自らの魔力を凝縮し、生成することで入手する方法。

 これは魔術師が何年もかけて自身の魔力を凝縮、圧縮することで魔力結晶を生成し、それを魔力水晶へと加工する。

 誰でも簡単に魔力水晶を作り出せることから、ほとんどの魔術師がこの方法を用いているが、特性を持ち合わせることは稀であり、安価。



3.魔力水晶の特性とは


 魔力水晶は基本的に属性にあった系統の魔術が強化されるが、ごく稀に特性を持つことがある。

 たとえば。

 全系統の魔力消費量が少し減ったり。

 火系統の魔術の火力が1.5倍に増幅したり。

 強化系統の魔術の効力が1.5倍に増幅したり。

 自身の魔力量を増幅させたりと。

 特性は数え切れないほど存在しており、基本的に特性は多ければ多いほど魔力水晶の価値は上がる。



 その他にも魔力水晶から魔力水晶玉に加工する方法や特性の当たりはずれなど色々と書かれていた。


「なるほどな~」


 魔力水晶のことはだいたいわかった。

 まだ魔力水晶から魔力水晶玉に加工する方法とか、杖を作るまでの過程は難しそうだが、それは魔力水晶を手に入れたからしっかり読んでも遅くはないはずだ。


(というかお母さん、とんでもない杖をプレゼントしてくれたな)


 お母さんが言うにはこの杖は全魔術の効力、火力を1.5倍に増幅、水系統なら2倍に増幅すると言っていた。これだけでも三つ特性がある。


 正直、杖をプレゼントしてもらってから今まで、実感がなかったが、改めて、この本を読むとこの杖のすごさがわかる。


「そういえば、魔力水晶は大気に含まれる魔力が多い場所に生成されるって書いてあったな。てことはもしかして…………」


 ふと窓の外を見た。

 そこには森林が広がっており、空は紫色だ。


「星屑の森…………そうか、もしかしたらここなら」


 星屑の森の中は大気に含まれる魔力が多い。

 その影響で星屑の森から見る空は紫色になっている。

 つまり、魔力水晶が自然生成されている可能性は十分になるということだ。


 星屑の森は危険だけど、今の俺なら魔物を避けながら探索することぐらいはできるし、探す価値はある。

 問題は見つけられるか、だ。


 残り8日、魔力水晶の加工から杖にするまでの工程を考えると探索は5日間が限度。

 基本的に夜しか動ける時間ないし、魔力水晶の加工などの勉強時間を踏まえると、3日間までに見つけられればベストだ。

 

「作ってやる。ティカに相応しい、杖を」


 そうして、カノンはティカの誕生日プレゼントに杖を贈ることを決め、作成のために魔力水晶の探索を始めるのであった。


□■□


 お昼が過ぎたころだった。

 いつものように魔術の特訓をしている中、カノンだけは空を眺め、時たま。


「はぁ…………」


 溜息を吐いていた。


「ちょっと、目の前で溜息を吐かないでくれる?」


「いや、最近疲れててさ」


「そうなの?」


「はははっ」


 どうして、疲れているのか、その理由はもちろん、ティカのために制作中の杖が原因だ。

 魔力水晶を見つけるため、夜の時間のほとんどを探索に使っているせいで、完全に寝不足。

 睡眠時間の感覚的には2時間ぐらいで、前世の社畜だったころを思い出す。

 

 社畜だったころ、毎朝6時に出社して、終電で家に帰り、家に帰っても少し仕事をして寝る生活。

 たまに早く帰れたりもしたが、結局、家に帰っても仕事をしているから睡眠時価はさほど変わらない。

 貴重な休みの日なんて1日中、寝ているだけで、次の日には仕事。


(あ~思い出すだけで吐き気が…………でも疲れているけど辛くはない。むしろ)


 楽しいというか、なんというか不思議な感覚だ。


 とはいえ、探索して3日。

 定めていた期間が過ぎ、見つかるどころかそれっぽいもの一つ見つからず、俺の心は半ば折れかけている。

 だから、どうしても溜息を吐いてしまうのだ。


(これ見つかるか?いや、正直言って、望みは薄いだろうな)


 そもそも魔力水晶を見つける方法がめんどくさいというか、魔術があるのになぜ?って感じの方法だ。


 それは目視だ。


 自然に生成された魔力水晶は魔術師にとってものすごく価値のあるものだ。

 だから効率的に見つけるための魔術が生み出されていてもおかしくはない。

 だが、ないのだ。

 魔力水晶は見つけるための便利な魔術が。

 おかげで目視で見つけなければいけない羽目になり、時間がものすごくかかる。


(無謀だったかな…………)


 最初はやる気に満ちていたが目視の探索で、一向に見つかる気配がないと、どうもやる気がそがれていく。


 すると、ティカはやれやれっと呟きながら、カノンの前に立った。


「今日はここまでだね」


「どうしてだ?」


「だって、師匠の顔を見ていたら、集中できないし。だから、今日はゆっくり休んで」


「でも」


「い い か ら!」


「あ、はい」


 結局、魔術の特訓はお昼過ぎごろに解散したのだった。


□■□

 

 それから俺は家に帰り、ベットの上で横になった。


「ふぅ~さすがに無理しすぎてるよな。 ティカにも心配されるし、気を遣われるし…………はぁ、つらい」


 魔力水晶がなかなか自らず、定めていた期間も過ぎており、正直、今日見つからなければ諦めたほうがいい、と思っている

 だったら、今からでも探しに行くべきなんだろうけど、そんな元気、今の俺にはない。


「ちょっとだけ寝て、起きたら、探しに行こう。うん、その方がいい」


 俺は目をつむり、意識を奥深くへと沈めた。


 漂う暗闇の中、意識が沈んでいくの感じながら、体の力を抜いて、心を落ち着かせる。

 深く沈んだ意識は時間が経つにつれて、さらに深く沈んでいく。


 その時だった。

 ノイズのような声がすべての意識をかっさらうかのように脳内に走った。



『北へと向かいなさい。そこにあなたの求めるものがある』



 その声に意識が覚醒し、ベットから飛び起きた。


「っ!?…………な、何だったんだ、今のは」


 突然のことで、脳内が混乱するカノン。

 しかし、その声の内容はしっかりと覚えている。


 ”()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 一体、あの声はなんだったのか。

 その正体はわからない。

 でも今はあの声の正体を気にしている場合ではない。

 少しでも可能性があるのなら、向かう価値があるからだ。


「…………行ってみるか」


 そう思ったカノンはすぐに準備、お母さんにばれないように扉を開けて、星屑の森の北側へと向かった。

 いつものように魔力をできる限り内包させ、気配を消し、探索を始める。

 目に魔力を集中させ、暗い場所でも昼間のように見えるようにし、面倒だが上級魔術の透明化(インビジブル・ボディ)を詠唱して起動させた。


(上級魔術って詠唱が長いから嫌なんだよな~)


 そう思いながら魔物を避けて、魔力水晶を探した。

 だが見つからなかった。


「あれは幻聴だったのか? いや、そもそも疲れていたんだ。むしろ、幻聴だった可能性のほうが高いな、はははっ」


 でも諦めきれきれない。

 せめて、時間のぎりぎりまで探そう。

 

 家から離れすぎないよう細心の注意を払いながら探索を続けるカノン。

 その道中、違和感に気づいた。


「そういえば、魔物から避けてきたとはいえ、やけに静かだな」


 星屑の森は多くの魔物が生息している。

 いくら避けてきたとはいえ、魔物の鳴き声一つ聞こえないのは不自然だ。


「…………嫌な予感がビンビンするな」


 家との距離を考えて探索しているとはいえ、ここで魔物に襲われたら、助かる保証はない。

 最悪、飛行(フライ)を使えば、空中から逃げられるが空を飛ぶ魔物に遭遇したらそれこそ詰み。

 バットエンドだ。


「…………」 


 俺は考えた末に。


(撤退だな)


 すぐに踵を返した。

 ゆっくりと足音を立てずに地面を踏みしめ、慎重に森の中を潜り抜けていく。

 特に周りに変化はなく、不穏な静けさだけが空間を支配している。

 このままいけば、無事に帰れる、そう思った時であった。


 がしゃっと金属同士がこすれる音が聞こえた。

 それは徐々にこちらに近づき、木々の間を潜り抜けながら、その姿を現した。


 錆びた鎧と兜を身にまとい、右手には錆びた鉄剣を携えている。

 その姿はまさに西洋の騎士のようだった。


「あれも魔物なのか」


 しかし、騎士のような恰好をした魔物なんて俺が見た魔物図鑑には載っていなかった。

 それに、魔物が放つ特有の魔力が微塵も全く感じられないのも気掛かりだ。

 でも一つだけ言えることがある。


 目の前の騎士が剣を構えた。


 この魔物かわからない騎士が強いということだ。

 

「一刀流か」


 速く、鋭く、一振りで敵を倒すことに特化した剣術。

 警戒すべきは最初の一振りだが。

 正直、言って、勝算は低い。

 なにせ、相手が剣士という時点で圧倒的に不利だからだ。


 お母さんの言っていたこと思い出す。



『そう、どれだけ早く魔術を起動できても、剣士が抜く剣速の前では、まず間に合わない』

 


 これはもう魔術師が埋められない剣士との差。

 どれだけ早く魔術を起動させても剣士が引き抜く剣速には敵わない。


「…………」


 相手はこちらの動きをうかがうかのようにその場から一歩も動かない。

 だがこちらが何か動きを見せると少しだけ手が動いた。


(下手には動けないか)


 ここは逃げるが一択なのだが、それは不可能。

 少しでも動けば、反応するところを見ると、大きく一歩踏み出せば、間違いなく攻撃してくる。

 つまり、すでに逃げる選択肢はなく、戦うしかないということだ。


(やるなら一発だ。一発で仕留めないと負ける)


 あいにくとカノンはお母さんとの特訓で剣士ともし戦うことになってしまった場合の対策を教えてもらっている。


 そのため、本当は勝算がないわけじゃない。

 ただこれは一発勝負で失敗すれば死ぬ、ハイリスクハイリターンの戦法で、お母さんからもおすすめされなかった。


(やるしかない。やらなきゃ、先はない)


 俺は敵を警戒しつつ、杖を取り出した。

 敵が動く様子はない。


「ふぅ~」


 息を吐く、呼吸を整える。

 全神経を研ぎ澄ませ、杖を敵にゆっくりと向ける。


 緊張が走る。

 冷や汗が止まらない。

 失敗したら、死ぬ。そう思うと心臓が激しく高鳴る。

 でも負ける気はしない。

 全身が熱く血が煮えたぎり、奥底から何が這い上がってくるの感じた。


 カチッと何かがハマり、カノンの瞳が真紅に染まった。


「…………」


 失敗するかもしれない、そんな焦燥感を感じていたのに急に頭の中がもやもやがスッキリして、目の前の光景が鮮明に映った。


(この感覚、昔どこかで感じたことがあるような気がする。でも、今は目の前の敵に集中しろ、俺)


 狙うは一つ、敵の懐に入り、至近距離で魔術をぶつけ、一撃で倒すこと。

 だけど、これは本来、魔術師の戦い方じゃないが、それを逆手に取るのがお母さんから教わった戦法だ。


 剣士は本来、間合いを把握、想定して剣を振るい戦う。

 剣士同士の戦いなら狭い間合いを想定し、常に間合いを把握する。

 魔術師との戦いなら広い間合いを想定し、魔術師の距離感を把握する。

 

 つまり、剣士が取る魔術師との戦い方は基本的には中距離戦を想定されている。

 それを利用するのがお母さんから教わった戦法。

 中距離戦を想定されているのなら、逆に近づいてやればいい。そうすれば、相手は間合いを見誤り、隙が生まれる。


 そこをカノンが突き、至近距離で魔術を打つ。


 これは一発勝負、近づくことができなければ、カノンは負ける。


「…………ふぅ、っ!!!」


 カノンはニヤリと笑い、ついに動いた。

 だんっ!地面を踏みしめ、敵の間合いを一気に詰めた。

 その瞬間を逃さない鎧を身にまとう敵は間合いを読み切り、鉄剣を素早く振り下ろす。


(早いっ!?しかも、間合いに合わせて…………でも、剣速はお母さんほどじゃない)


 予想とは外れ、敵は間合いに合わせて振り下ろした。

 しかし、カノンの目はしっかりと、敵の剣が見えていた。


「ごめん、お母さんっ!!」


 がきんっ!と。

 振り下ろされた錆びた鉄剣に杖を押し当て、攻撃を防いだ。

 そして。


水槍(ウォーターランス)っ!!」


 至近距離で手ぶらになった右手を敵に向けながら、水系統の中級魔術水槍(ウォーターランス)を放った。


 だが、この程度で倒せると思ていないカノン。

 それを見越して、すぐさま、水系統の中級魔術水槍(ウォーターランス)をもう一度、起動させる準備をするのだが。


 水槍ウォーターランスが直撃すると、豆腐のように鎧は砕け、飛散した。


 それはあまりにもあっけなかった。


「な、…………どういうことだ」


 あまりにもあっけなかったことに動揺が隠せない。


 相手はカノンが間合いを詰めてくることを読んで、間合いを合わせていた。

 それを想定していたカノンは杖を盾として使い、見事、近づくごとに成功し、至近距離で魔術を打つことができた。

 この時点で読み合いでは勝っていた。


 だが、さすがに一発で倒せると思っていなかった。

 だから、すぐに水系統の中級魔術水槍(ウォーターランス)を用意していたのだが、実際は一発で倒せてしまった。


(…………もしかして、俺が強すぎたのか?)


 ふと、そんなことも思ったが、首を横に振り、ありえないっと頭の中で否定した。


「それより、杖は大丈夫だったかな。結構すごい音がしたけど」


 盾に使った杖を隅々まで見るもの傷一つなかった。


「よかったぁ~」


 そう思いながら周りを見渡すと、不自然なことに気づいた。

 鎧の中身らしきものがないのだ。

 普通、鎧を装着する中身があるはずなのに、その場に飛散しているのは鎧や兜だけだった。


「うん?これは…………」


 足元を見ると、キラキラした何かを見つけた。

 カノンはすぐに手を伸ばし、拾い上げた。


「もしかしてこれって、魔力水晶っ!?」

 

 俺の杖より半分ぐらいの大きさだが、たしかにそれは魔力水晶だった。


(どうして、こんなところに…………)


 魔力水晶は黄色に輝いており、おそらく雷属性の魔力水晶。

 しかも、自然生成されたものだ。


「中身のない鎧、そして魔力水晶…………原理はわからないけど、これが核になって動いていたなら、筋は通っているよな」


 正直言って謎が多いが、考えたところで今の知識では答えは見つからない。


(今度、お母さんに聞いてみるか)


 あの騎士の正体が気になるが今はそれよりも事実として魔力水晶が手に入れたことのほうが大事だ。


「これでやっと取り掛かれるな」


 あとは魔力水晶を加工して魔力水晶玉に。

 それを軸にして作成すれば、杖の完成だ。


 そうして、カノンは魔力水晶を手に家に帰るのだったが。

 家に到着し、ゆっくりと扉を開けるとそこには。


「あ…………」


 クネア・フォーミア、俺のお母さんが立ちふさがっていた。


「どこに行ってたの?カ ノ ン」


「いや、そのちょっと、外に散歩?」


「ふ~ん、こんな危ない夜中に、散歩ね」


 お母さんの顔は全く笑っていなかった。

カノン・フォーミアは魔力が多く、初級・中級魔術を無詠唱で扱う。

詠唱ありなら上級魔術も扱え、着々と混合魔術も勉強している第6階梯魔術師。

第6階梯はお母さんからもらっており、正式に名乗っていいと許可されている立派な魔術師である。

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