第1章 03
正直、周りなんてどうだって良かったし、どうにでもなれとしか思わなかった。例えば、不良に絡まれている根暗な男子が居たとするのなら、それを通りすがりに見かけたとしても、無視をする。それが一ノ瀬 渉だった。
もうひとつ例えるとするのなら、災害時に一人の子供が部屋に取り残されていたとしよう。
主人公だとしたら、助けるかもしれない。けど、アニメや映画の"モブ„だとしたら?それは、なんの変哲も取り柄もないただの、平民だ。もしも、そんな立場なら誰だって、自身の命を犠牲にしてまでも、助けたくはないと思う。まぁ、自身を主人公だと思いたい厨二病だけ、助けに行って死んでしまえばいい。
どうせ、助けられない命があるとして、それを増やす必要が分からない。
だから、もしも自分なら助けないというだけだ。
それだから、助けもしないし、そもそも、助けられもしないのだろう。
「なぁ一ノ瀬、今朝、俺の事睨んだよな?」
そう言うのは、クラスで不良と言われる男子生徒。そして、男子生徒の拳は一ノ瀬くんの頬を晴れされる。いたい。なんてもんじゃない。それは、中学生とは思えない。
「別に。睨んだって被害妄想だろ。恥ずいな。」
「はあ? その態度だと、もう一発殴られたいのか?」
いたい。けれど、一ノ瀬くんは怖気なかった。というか、すぐに不良に噛みついた。それだから、すぐに目もつけられるし、絡まれる のなんて、一ノ瀬くんも理解はしていた。
はあ…… ため息をつく。また、殴られた跡はしっかり、残っていた。
一ノ瀬くんの両親は、優しいあまり、家には帰りにくい。
また親に心配をかけてしまうのが、一ノ瀬くんを寄り道させた。
(ん? 死にたい。?)
ふと、サークルを見た。人数が2人だけの、人気のないサークルだった。
死にたいなら、孤独で死んでればいいのに。どうして、サークルを開いて、人数を増やしたがるのか。ただの、仲間が欲しいだけの行為に、一ノ瀬くんは納得が出来なかった。
スマホを閉じで、ポケットに入れたあたりで、肩を掴まれた。
振り向けば、激痛が走る。
「なあ一ノ瀬、お前 先生にチクったか?」
だから嫌なんだ。としみじみ、思う。素人が下手に、不良に絡まれている根暗 を助けようとすると、それは余計に不良を怒らせ、逆効果にもなりかねないから、無意味な助けはしないと、決めたんだ。どうせ、先生が知っていたのも、不良が説教をされたのも、目撃者による報告だと思う。…余計な手助けだ。
ヒーローぶりたいただの、厨二病だろ。としか思わないし、助けてもらった感謝もしなければ、感動もしない。嬉しくもなんとも、ない。助けるなら、先生に言うんじゃなくて、直接不良に注意でもしてみろよ。と、心で思う。
気がつけば、一ノ瀬くんは倒れていた。気がつけば一ノ瀬くんの指が、サークル加入に触れていた。
( 生きてるってなんだ )
一ノ瀬くんが初めて、世界を嫌になった日だと思う。