第1章 02
安西 三夏には、特別な才能が欠けていた。学校の先生からしたら、優秀だとは言っていた。それもそのはずで、テストでは90代をよく取るからだ。小学生だった安西さん。よく、両親には「みてみて!」と、自信満々にそれを差し出して、見せていた。両親は「うん」とだけ答えていた。凄いとは言われなかった。中学生になると、両親は変わってしまった。
「また90代なの?しかも、80代とかもあるし。」
安西さんは、愕然とした。両親から言われる言葉は「満点を取りなさいよ」とかいう、毒親だった。先生が言うには、90代も凄いらしい。けれど、両親の見える90代は、凄くないらしい。93と書かれた用紙を破って、ゴミ箱に投げ捨てる。
(学校とか… 行きたくなー)
テストでは満点を取らなければ、両親からは呆れられてしまう。先生は凄いと励ましてはくれるけれど、そんな安西さんに嫉妬した輩からは、死ねなどの、手紙が下駄箱には入れられる。学校に行く意味とは何なのか?
学校に行けば、虐めの対象だ。
両親にはどうして満点じゃないのかと問われるだけだ。
(もう… 行かなければいいんだ)
そうしたら、虐めもないし、テストもない。安西さんを苦しめるものは、なくなった。
……かの、様に思われていた。その一週間後。交通事故だった。安西さんの、両親が亡くなった。勿論、それによって、安西さんは施設に連れられる結果となる。中学生では、一人暮らしも容易ではなかったからだ。
ざまあ。とは思ったけれど、施設は嫌だな。安西さんは、インターネットをただ漁る。
見つけた。答え――
(死にたい。………? こんなサークル作る人とかいんの? 人数少なっ)
少ないというか、管理人しか居ない。そりゃ、そんなサークルに加入する人なんて、あまり居ないでしょ とか思っていたけれど、安西さんは加入した。まだ何のやり取り履歴も残っておらず、安西さんが初めて送った言葉が、一番上に表示される。
柊木 心という人間が、返信してきた。
「こんばんはー」
「うん」
「なまえ、なんて呼べばいい?」
「心。」
「よろしくね、心」
安西 三夏は見つけた。施設でも実家でもない。唯一、たったの一つしか存在していなかった自分の居場所。蠢く大人が居なくて、同類の子供しか居ないであろう、たった一つの居心地がいい、そんなお家だった。