表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

プロローグ


たまに、ふと夢をみる。それは、柊木ひいらぎ こころという人間が、淡々とした表情のまま、手にはナイフを握って、死んでいくという、そんな夢をみる。


友達はよく心に向かって、ふふっという微笑みを浮かべてくる。けれど、少しだけ首を縦に振ると、そのままどこかへ立ち去ってしまう。あまり、人間関係という付き合いが、苦手な子――。


小学校には通っていても、中学生になると突然、不登校となる。イジメではないらしい。心は、インターネットにこっそり、潜んで境遇の似た子を集めようと、何となくでグループを作成、けれど一週間が過ぎようとしていても、人数は一人のまま、変わりがなかった。それは、ある日を気に一転する。


「こんばんはー」漸くして、人数は一人、加わった。安西あんざい 三夏みかという中学生は、きらびやかとしている太陽だった。明るくて、よく話しかけてもくれる。それは、死にたい。という、サークル名には酷く、馴染んではいなかった。


心と同じで、闇を抱いているのだろうか? 直接的には、聞けずにいた――。安西さんのきらびやかに、心は呑まれた。すると、三日後。


「人数少ないけど、動いてる?」ある一人の男の子、一ノ瀬(いちのせ) わたるが加入した。なにかの運命が働いたのか、中学生の様だった。といっても、どこの中学校か、どこの県か、何も知らない同士の集まりでしかなかった。


更に二日後。「こんばんは!」またしても、男の子がサークル内で、挨拶をする。加入したら挨拶をしなくてはならない。なんて、取り決めはそもそも、存在しない。それでも挨拶をするということは、心とは違った世界を生きているからだ。


明るくて、クラスメイトに挨拶をされたら、軽く会釈をする。そして、学校では常に周りを囲う友達が沢山。先生からも気に入られ、班を作る行事でも、余ることがない人間たちだ。心とは正反対を生きている。


「名前、なんていうの?」安西さんが発言をする。名前は、小泉こいずみ りょうた らしい。


誰かがハッと「みんなで会いたいね」の様な発言をすると、それにみんなも便乗する。それは、四月の中旬ごろのお話だ。


心は、会いたいなんて思ってもいなかった――けれど、みんなは集まりたいと思っていた。だから、空気を読んで、心も会いたい。と、送る。


会いたいと言えば、嘘だった。

だけれど、会いたくないと言うにも違う。


それは、不思議な気持ちとなって、初めての感覚だった。会いたいわけでも、会いたくないわけでもない。それには、正解がなかった様に思う。


ふと気がつけば、心は眠っていた。ふと目を覚ますと、通知が届いていた。一件とかではなく、数十件。

心の作り上げたサークル内では、会話は盛り上がっていたらしく、心の目には、沢山のやり取りが映り込む。


「心、寝た?」という、安西さんの言葉もあった。起きたところで、「寝てた」 たったの三文字で返信をした。進んでいた会話をスクロールしてみて、過去のやり取りを覗いてみると、待ち合わせ場所、集合、などの会話があり、みんなで会うんだと理解する。


集合に指定された場所も知ってはいるし、遠い距離でもない。しばらくして、安西さんは心に、個人チャットの方で、メッセージを送る。


「心、大丈夫?」

「何が、 ですか?」

「もしかして、みんなで会うの、乗り気じゃない?」


見透かされていた。安西さんは、いつも明るく、心にも優しくするし、気を遣う。だから、心は距離感を少しだけ、遠ざけた。違いすぎるが故、どの距離が普通か、分からなくなった。


「大丈夫 みんなと会う」


心はスマホの電源を落として、そのまま目を瞑る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ