設問 青春とは
青春とは多くの人間が眩しい太陽のもと高校生たちが苦悩し、笑いあっているものを想像するのではないか。大いに正しいだろう。
雀の挨拶を無視する程忙しい朝。早く終われと耳を澄ます時計の音。そのくせ、昼休みに別れを告げるチャイムに悲しむ毎日。日暮れの先生の注意に罪悪感が沸くように。そして一緒に帰る友達の笑い声。
それらの感情が瞼の裏で霞んで写る。断片的な記憶を懐かしむように。
それは青春を謳歌するのに澄んだ青が必要である。絵の具に水を混ぜて、筆で一線を引く。そんな清々しい青。
その青は「昼間」にしかないのだろうか。白が200色あるならば、青はもっとあって然るべき。それが群青色でも人は美しいと言うだろう。
全国の高校生の91.3%が全日制に通う高校生だ。一般人は「全日」という言葉に馴染みが無いかもしれないが、昼間に学校に通う高校の通称である。そして6.3%が通信制だ。家で勉強し、課題を提出する高校。自主学習が基本ゆえに本人の意思の強さが重要である。
そして残った2.4%が定時制、夜の学校だ。ここには昼間に学校に通う勇気もなければ、自分の努力で勉強する気にもなれなかった学校社会に馴染めたかった奴が集まってくる魔の巣窟だ。黄昏時の目が眩む頃、部活終わりの学生とすれ違うように学校に登校する。そして真っ暗な夜の中、バイト終わりの学生も、仕事終わりのサラリーマンも見ない夜に街灯の灯のみの町を帰っていくのだ。
しかし、ここにも青はいる。友情が、恋愛が、情熱が静かに燃えている。アオハルに数えられない青春がここでもちゃんと息をしている。
「で、何が言いたいんすか?」
「彼女欲しいいいい!!!!俺も青春してぇよ!!!!!」
「厨二病じゃないすか、キッショ」
「言い過ぎだろ」
「でも前置き長いオタクくんじゃないすか。誰がそいつと仲良くなりたいんすか?」
「お前」
「うわ死にてぇホームセンター空いてるかな」
「とっくに閉まっとるわざまぁ」
「クソウザ」
……長い前置きをしたが、つまりは俺にとっても「定時制」で「青春」は夢物語なのだ。これはそんな俺、伊織 公春が幻想を現実にする為の物語だ。