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(三)-2
足の筋肉に力を入れて坂道を蹴り上げて登っていく。そして四〇メートルほどの坂を登り切ると、開けた場所に出る。鳥居が坂道のすぐ前に置かれ、そのまっすぐ先には神社の拝殿があった。
境内は灯りは少なく拝殿の途中に一箇所だけ細い木製の電柱が伸びており、そこに古いプラスチック製のカバーに覆われた外灯が、申し訳なさそうな程度の明るさで灯っていた。いつのまにか空に上がっていた、まん丸の月明かりの方が明るい程だった。
拓弥はあまりその役割を果たしていない電灯の下を通り過ぎ、拝殿の前までやってくると、立ち止まって一礼した。そしてその隣の開けたスペースに歩いて行き、ゆっくり歩きながら息を整えつつ、上半身のストレッチを始めた。
(続く)