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(二)-14
拓弥はバス停にやってきたが、大学病院の方へ行くバスはつい数分前に出発してしまっており、次のバスは三〇分後であった。
拓弥はバッグを肩に掛けて歩いて行くことにした。キャンパスの門を抜けて県道へ出た。最近整備された県道は歩道もしっかり整備されており、交通量の多いこの道を安全に歩いて行くことができた。
太陽は西の方の関東山地に既に隠れてしまっており、空が赤く染まっていた。東の方は既に夜のとばりが降りつつあった。
歩いていると、他に考えることもなく、頭の中はすっかり翔太のことで埋め尽くされた。
持っているスマートフォンを掴み幾度となく彼に電話しようとしたことか。しかし最後に会った時の彼の言葉をないがしろにしたくなかった。
だから拓弥はスマートフォンをポケットにしまい込んだ。同時に、頭の中で浮かんでくる翔太のイメージに振り払いたくなり、拓弥は少しずつ走り出した。
(続く)