確認内容その1
「俺は彼女の母親の身辺を調査した。母親は名前を綿野 亜紀 現在34歳。彼女には身寄りがない。1人兄がいたが12〜3年ほど前に他界。」
部屋に備え付けのコーヒーメーカーで、ダンはコーヒーを入れている。
窓側の椅子に座り、小さなテーブルの上にはパソコンとちょっとした資料がのっている。ブンタはその椅子に座り、ダンに向けて話していた。
「母親は、ちゃんと仕事にはついてるみたいだけれど、日々の疲れと苦労をそのまま娘にあたっているようで、暴言に暴力は日常的に行われている。児童相談所にも何度か預けられたことがあるよう。」
ダンは抽出の終わったコーヒーを2つのカップに注ぎ、ブンタの元にその1つを持ってきた。ブンタは書類を寄せるとそこにカップを置いた。
「戸籍の方にも母親の名前だけで父親は不明。」コーヒーを一口。
「この母親、娘に対する暴言暴力は許されるものではないが、裏にヤバいものが一切ないというのは、俺は、相当苦労して育てて来たと、ある意味賞賛できる。昼間の仕事に夜の仕事。夜なんか特に、水商売かと思ったんだが、違うんだ」
ダンは、興味あるように「ほぅ」というと、カップを口につけ再度コーヒーを飲んだ。
「母親にはさっき兄が1人と言ったがこの2人、実は親が早くに、はやり病で亡くなっている。母親が赤ん坊の頃に、当時近所に住んでいたアメリカ人の夫婦に引き取られたんだが、どういう理由からか、母親の亜紀が13、兄が16の時に児童施設に戻されている。」
「その施設には行ったのか?」
ダンがもう片方の椅子の肘置きに座りながら言った。
「ああ、行ってみたが理由はアメリカ人の両親も、置いていかれた2人も、何も言わなかったらしい。ただもう、うちじゃもう育てられないの一点張りで置いていったそうだよ」
「うーん。理由が気になるなぁ。」
ブンタは顔を上げてダンを見た。
「お前の方も何かつかめそうなんじゃないか?もしかすると、その理由もわかるんじゃないか?明日会うんだろ?」
ダンは顔を丸くした
「あ、あぁ。写真を見て思ったから、新宿の、昔馴染みの店にたまたま行った。そうしたら、その馴染みの子が、どうも詳しいこと知ってそうなんだ。明日教えてくれることになってる。」
ブンタはパソコンをたたみながら
「お前の聞いてくる話の方が真髄をついてるような気がするから、俺の方はこれまでにしとくかな。あとはそっちを聞いてからにしよう。寝ようぜ」
「そういえばちはるは?あいつも東京出てきてるんじゃなかったっけ?」
ダンはブンタと自分のコーヒーのカップを持つとおもいだしたかのよあにいった。
「あぁ。来てしばらくいたけど、相談者に会うってすぐ戻ったよ。」
「そうか」
片付けをしおわるとお互いベッドに入った。
就寝の為に部屋は暗い。
窓側に寝るブンタは、カーテンをしたくないといった。窓からは月明かりに都会の灯りが混ざって入ってきている。
ダンの頭には明日の事がよぎる。
あんなにも思い詰めた彼女(彼)は見た事がない。そのせいか、多少の罪悪感が胸を痛ていた。