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そこは知ったる馴染みのお店

「ダンちゃんやめて!!うちの子たちを惑わさないで!久方ぶりに顔出したかと思ったらもう、これなんだから!」

昭和、平成を思わせる、やたらと大きく高さのある前髪をした化粧の濃い着物の女性がとても困ったように低音の声を高らかに上げた。

そこはとても艶やかで、どこか暖かい昔馴染みのお店。

若かりし頃に入り浸っていた場所。

しばらく来ないうちに、店の人数も増えて賑やかになった。

あの頃、活気に満ちて色気のある艶っぽかったママに現在は艶らしきものはないが、心の中身は全く変わっていない。

昔と変わらず、居心地のいい場所のままでそこにあった。

「俺はさぁ、まだママがここにいてくれてよかったよ。今日は1日歩きっぱなしで、疲れた。その日の最後はこんな可愛い子達とのお触れ合いがなければ俺死んじゃうよぅ。

癒される。最高だよ」

背は少し高めで、細いのに割とガッチリした彼女の肩を見ると、つい現実に戻ってしまう気もするが、頭の先から足の先まで、女性以上に女性らしい大和撫子的な所作に、ダンはもうたまらない衝動に駆られていた。

そんな右側にいる彼女にいい気持ちで酒を注いでもらいながら、ダンは左側に座る彼女の肩に手を回した。左側の彼女はダンが若い時からいる従業員で名前をアケコという。

「俺たちも年取ったなぁ。アケコさぁ俺と寝たのはいつだっけ?お互い若かったからなぁ。アケコの喘ぐ声には俺ぁそりゃあもうたまらなかったなぁ」

アケコはダンの太ももにそっと両手を当ててゆっくりと上下にさすっていた。「まぁ恥ずかしい。今もちゃんと覚えているわよ。あの時のダンちゃん若いからほんと激しかったわぁ。みんな聞きたいでしょ。ダンと私のベッドインはぁ」

周りの子達が一斉に恥ずかしそうに

「いやぁ もう、アケコ姉さん!!」といって皆で笑った。

ダンはいわばバイセクシャル。自分が男である性を存分に発揮してきた男。相手は女性でも男性でも自分の好みに会う者であればそれは全て性の対象になる。

右の子の、彼女の印象を艶やかに感じたダンは、未だ現役だと推測できる。

すると、ダンは思い出したかのようにグラスを置き、立ち上がるとママのいるカウンターに身体を斜めに置き、話しはじめた。

「ママさぁ。16年前くらいに、男の同性愛者専門の店とか、集まりのあるような場所ってあったかなぁ。知ってる?聞いたこととか何かない?知っていたら教えて欲しい」

ママはカウンターにいる客のグラスに酒を注いでいた。目線をダンに合わせるように上げながら

「何突然!また16年なんて随分細かいのねぇ。そうねぇ〜あったとは思うわよ。でも詳しいことはわからないわね」

そして目線を下げた。するとさっき入れたカウンターに残る酒の水滴に気付き、それをママは拭き始めた。

「そっか。わるい、ありがとう」

そうダンは言うと、さっきまでいた席に戻り、右の彼女の肩に手をやると座った。

そして(おもむろに)テーブルに置いてある75%カカオチョコの包みをとり、食べた。

「もしかして、まだあの警官の子といて、調べまわってるの?」

アケコはドレスの肩紐を上げ直しながらいった。

「もう警官じゃないさ辞めてるよ。年齢的にも今はおとなしいもんだよ」

そういうダンの言葉に即座に反応して

「あーやだ怖いわぁ。あの子ほんっと怖いんだもの」と返した。

「今回の依頼は女子高生でね。両親を探して欲しいってことなんだ。」

ダンは胸元から写真をとりだした

「それがこの写真で。手がかりはこれだけ。

その両親てのが男性2人なんだよ。それも2人はパパとママってこの子に対して言ってる。」

その写真見たアケコは、なんとも言えない悲痛な顔をしていた。言葉に詰まったのか、ダンとは反対の方に顔を向けると、なんだか涙を拭っているようにダンには感じた。

「どうした?」

アケコの背中に手を置くと優しくも驚いた感じでいった。 

「あっ、うっいえ、いえね。」グスッグスッと

やはりアケコは泣いていた。

肩から流れるスカーフを顔に当て、なかなかこちらを向こうとしない。

アケコの姿にママも気付き、ダンに向かって放つ「ちよーーっと ダンちゃんなにやってるの?!アケちゃん大丈夫?なにされたの??」ママがカウンターを抜けこちらにやってきた。

「何もしてないさぁ。誤解だよママ。アケコ、ほんとどうした?」

アケコはグスッグスッとしながらも声を発した「ごっごめんなはいね。ちょっと思い出しちゃって、、大丈夫。大丈夫」

と、少しずつ顔を戻した。

涙で化粧がやばいくらい混ざってしまっている。笑うところではない事は、そこにいるみんなは充分理解しているが、笑わざわるを得ないほど、その顔は抽象画のようだった。

「もぅ!みんなしてなによぉ!」

アケコはよりグチャッとした顔でいった

「アケちゃん、顔、洗ってらっしゃい。お客様の前に出る顔じゃないわ」

アケコはそのまま裏に下がった。

ダンは気になった。

可哀想と思ったにしては感情が違すぎる。と。

「ママ。アケコのところに行っていいかい?もしかしたら何か知っているかもしれない。」

ママは少し考えるそぶりをしたが、

「いいわ。私達とダンちゃんの仲ですものね。裏行って」

「ありがとう。」

ダンはそういうとすぐにアケコを追い、裏の控えに向かった。


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