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ちはると東京渦

世の中の学生たちは夏休みに入った。

大人には微妙な夏休みが、ある人にはあるし、無い人にはないというなんとも無常な世の中。私たちは贅沢なことに、普段はそれほど影響のない生活をさせていただいている。

と言いたいが、仕事が入ればそうとはいかない。

一刻もはやく、彼女の想いを叶えてあげなければ。

ちはるも東京に出てきた。

ダンもそうだが、こういう機会でもない限り、なかなかこのような場所には来ることもない。

駅を出て、周りを見渡してもビルビルビルだから、テレビにあるような賑やかで派手な感じの場所も目に見える範囲にはない。ただひたすら私は他人ですので、と言わんばかりに歩っている人たちとすれ違うだけ。ちはるはなんとも言えない疎外感を感じていた。

見渡す限り大きな建物。

どこまで行けば、知っている、見たことある!という場所に行き着くのか。迷路の中にいるような、クラクラする思いだった。そんななか、なんだかすごいところに出た。

駅の敷地内だろうに。ビニールシートを敷いて、そんなところで酒盛りしている年配組がいるではないか。路上組は若者だけだと思っていたが、都会の熟年のピクニックはこんな場所でやるのか、と驚いた。

良いものも悪いものも彷徨うこの街。

色々な価値観が時代とともに新しいものが誕生し、そこが変わってきただけで、結局のところ人の中身はなにも変わっていないのだろうと、ちはるは思った。

いい人が増えたわけでもなければ悪い人が増えたわけでもない。物事の種類が変わっただけだと。

ちはるはそれを見て、そう思わせられたのだ。

人は荒れること、悪い事は所謂楽な選択肢のひとつ。良い事は努力や強い心がある意味必要になる。

人の(なかみ)が変わるのは、楽にながされるうちは難しいことなのだろうとなんだか思った。

挨拶をすることもなく通り過ぎていく人と人。

「ちょいとそこのお兄さん。ここはどこだか教えてくれるかしら」20代後半くらいの丸いサングラスをかけた細身の男性に、突然ちひろは話しかけた。

「えっ。ここは新宿です」

思いの外すんなり答えてくれたことに、ちはるは内心驚いた。

聞いてから、その寄せ付けないようなな風貌にきづいた。

「なんだこいつ」なんて言われてしまいそうな感じだったので驚いた。

取り越し苦労。ちはるは見かけで判断してしまったことに反省していた。

「新宿。どうもありがとう」

感謝を伝えると、彼も軽くお辞儀してくれて、そのままいってしまった。

ほんと東京はどうなるかわからないから正直、息がとまる。

「そっか新宿。」風貌とのギャップのある彼の優しさに、嬉しくなり、足が軽くなった。

東京駅をでてから、気の向くままに歩ってきた。(まさか、新宿でふらふらしていたとは。)

ちはるはそう心の中で思っていた。

もちろん、目的があってきた東京。余裕を持つために前泊できた。

この日は微妙な懐かしさを感じながら、

東京を歩くことに決めていた。

だがこの新宿。ちはるには思い出がある。

かつての過去が、ちはるの足をこの地におもむかせのか。新宿という街を懐かしさを感じながら、あるくことにした。

夕方。

ちはるは、暗くなりかけた東京に広がる赤黒い空をずっと見上げていた。




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