団三郎
古びた商店街から抜け出した東京は異様に狭くとても暑い。人と人とがぶつかり合う人混みの中は危険極まりなく、何が起こるかわからない。Tシャツにジーンズにサングラス。そしてサンダル。
それがダンの仕事服。イケテル男は何を着てもサマになるってダンは言う。てかイケメンはみんな同じこと言うのかも。とにかくラフな格好で調査を始める。東京も狭いとは言ったが、それはあくまで人混みの事で、調べると言うとかなり広い。ビルが隙間なく立ち並ぶように見える割には実は緑が多く公園の数も多い。
この写真に映る公園もおそらくとても広い。だがビルが一つも写っていない。これだけ多いビルの都市だ、調査をするにはヒントに1つくらい見せてくれてもいいものを、勿体ぶっているのかと思ってしまう。
だが清々しい公園の外観は守られなければならない。
「この土地も来るたびに変わるなぁ。まぁ 公園なんてたいして変わらないだろうから、その辺はなかなかに安心かな。まずはそれらしい公園の付近から始めるか、上野か渋谷あたりかな」
ダンは歳を重ねていないかの如く、軽快な調子で歩き始めた。
とりあえず飛び込んでみた一件目の児童養護施設も、いきなりの一件めではもちろん当たるはずもなかった。一般的な家族とは言えないこの関係だからこそ役所も記憶に残るだろうとふんだが、役所も全く。結局足取りはつかめないままだった。
その後もまわってみたが、これ、と言う情報はない。
どのような経緯でこうなったのか街を歩きながら考える事にした。
性的にいえば男性2人の間に子供。
この2人がパパとママだとしたら里子か、代理出産か。海外では同性愛者との間に子供がいるのは不思議じゃない。ただこれが本当にそう言うことなのか。ということ。「うーん。でも、そういうことだよなぁ」と思うダン。
そんなことを考えながら街中を歩っていると、おしゃれなキッチンカーが3台ほど並ぶ場所があった。
時に14時。昼ではないが、昼ご飯。
「ほほう。今は洒落てるなあ。どれ、俺もここで昼を購入しよう。」3台あるキッチンカーは昔のチャルメラ、移動の屋台ラーメン屋と違って、歳のいったダンからしたら、かなりおしゃれで車とは思えない代物だ。どんな食べ物があるんだ?と見てみると各々店先には看板が置いてある。横にスライド歩きしながら確認する。
看板を確認しながら店主も因みにちらっとみる。
①ガパオライス②唐揚げのイタリアン弁当③レモネードとスペシャルサンドイッチ。悩むことなく「よし③」と決まった。
ダンにはガパオがわからないことと、弁当は腹に重いということ、で、わかりやすく③になった。
「すみません、レモネードとスペシャルサンドを1つ」 窓口にいた20代半ばくらいの女性に伝えた。女性は目線が別のところにあったので驚いようにこちらを見ると、すぐ笑顔になって「いらっしゃいませ。はい、お1つですね980円になります。」と対応してくれた。
胸ポケットから折り畳んだ1000円を取り出し彼女に渡した。
「1000円頂戴いたします。20円のお返しです。お作りいたしますので、そちらにお掛けになって少々お待ちください。」
若いのにとても丁寧な言葉遣いと対応に、ダンとしてはとても気持ちよくその場で待つことができた。奥には男性の姿がある2人で営んでるようだ。隣は女性3人。ガパオは1人で男性。
時代は変われど、人がいる限り、なにかに頑張って生き抜くということはどんな時代でも変わらないなぁ。と思いながら、現代のチャルメラに応援のテレパシーを送った。そんなテレパシーが届いたのか呼ばれた。
「お待たせ致しましたぁ〜」椅子から立ち上がって一歩進んで取りに行った。
そして取りに行った拍子に写真を出した。
「この人たち知ってますか?古い写真なんだけど」
ダンはレモネードをとりながら言った。
「えっ、あーうーん。そうですねぇ見たことないかな。店長この方達知ってます?」「ん?あーだいぶ古い写真ですねぇ。これ新宿御苑かな?この方達は見たことないですねぇ」この店の店長という人は振り返りざま、写真を手に取るとしっかりと確認してくれた。サンドイッチを手に取り、写真を受け取ると
「ありがとう。みていただいて助かりました。サンドイッチ頂きます」
ダンはお礼の挨拶をしてお昼を手にその場を去った。