善は急げ
「ふぅ。さぁどうしたもんか。」彼女がいなくなった先をまだ眺めながらちはるはため息をつくように言った。
「なに?相談きたの?」突然後ろから箒を持った古本屋が現れていった。気配を感じなかったもんだから少し驚いた。
「うーん。今回の相談は、時代かしらねぇ。なんとも言えないわ」振り返りながら、ちはるはいった。
「いい子そうだったねぇ。」サンダル屋
「そうね。とてもいい子だったわ。さ、じゃぁ2人とも中入って話すから」
サンダル屋と古本屋はちはるの住むあんこ屋に入っていった。
「今回の案件はこの写真。この2人を探したいのよ。」
サンダル屋のダンに古本屋のブンタ。実は2人は探偵仲間。
ダンは主に聞き取り調査。ブンタは書類調査や機器を扱う調査を担当。「なんともまぁ幸せそうな写真だ。で これがなんだって」ブンタは言った。
「そ、その2人があの子の育ての両親って事のようよ。見てよ裏」
ダンはなんとも寂しげな表情を浮かべてその写真をみるなり答えた。「なんだか色々考えてしまうなぁ。俺の考えてることが正解ならなんとも悲しい話だなぁ」
「そうね」
しばらく3人は沈黙した。
アルバムから剥がした写真は少し劣化している。それ以外に剥がしにくかったのだろう苦戦した跡もある。
書いてある言葉が消えなくて本当良かった。
と3人は心から思った。
さて、この写真を頼りに捜索が始まった。
まずは写真の解析に入った。
「彼女が5歳くらいの時の写真だから、だいたい10年前くらいの東京の広い公園。この2人、片方の人は外国人かしらねぇ。」3人で覗き込むように一枚の写真を眺める。
「そうだなぁ。目鼻立ちがハッキリしてるからそうなのかも。俺の若い時みたい」サンダル屋のダンはさらりと言った。ダンは本名が三浦 団三郎という。歳をとった今でもかなりの容姿ではあるダンだけれども、若い時は行き交う女性皆が振り返るほどに憧れた人でもある。2度結婚したが、容姿が邪魔をしてうまく行くわけもなく今に至る。
「嫁さんが安心できない容姿ってのも残念なことで。その点俺はそんなことはない。」
ブンタが負けずにいった。
ブンタも本名は叶 文太結婚歴はない。3度ほど、知り合いのお見合いババに見合いさせられたけれど、見ず知らずの人と心の調和をとらねばならぬことに気づいたのが1度目、どうにかなるかと勢いで2度目、やっぱりダメかもと確認で3度目、で確信を得て心自由に1人を貫いて今。
「しかしこの写真だけだと探すのは難しいなぁ。桜の木のある広い公園。男性2人に挟まれた小さな子供。パパにママ。うーん」ちはるが写真を眺めながら座っている椅子の背もたれにもたれるように呟いた。
するとダンが椅子に掛けるちはるの背もたれを戻すように頭の上から写真を見ていった。
「この子、この2人がパパとママなのだとしたら、この2人のところに里子に出されたのかもよ。とりあえず俺は東京の児童施設とか保護施設あたってみるかな」
同じくちはるの後方にいたブンタも
「戸籍がどうなっているのか気になるところだな。俺は彼女の身辺からあたってみよう」といった
「善は急げ!幼き彼女のために!」ちひろがいうと、
3人はそれぞれこの一枚の写真を手掛かりに動きはじめた。