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イケニエゲェム  作者: Mです。
9/9

その羊は何色ですか?

 救急車のサイレンの音……頭の中に直接響くように鳴り続ける。

 あの日の光景……あの日の……


 現実を受け止められない私の視界を隠すようにギンは私の前に優しく立ち塞がり……


 「……見ないほうがいい……」

 そう私に告げる……


 「大丈夫だから……」

 そう私に……


 「……ダイジョオブ……ダカラ……」

 えっ?

 そんな奇怪な声に……


 ポタリ、ポタリと赤い液体が落ちてくる。


 「……ダイジョオブ……レイハ……オレガ……マモルカラ」

 見上げた男の頭がぼとりと落ちた。


 「あ……ぁ……いやぁーーーーーっ」

 私がそう叫ぶ。



 目が覚める……夢……だったのか……

 何時間……私は眠り続けていたのか。


 「ギン……?ギン?」

 私は無意識にその名を呼ぶ……

 反応はない……


 全てが夢であってくれたなら……そんな期待を簡単に裏切る。

 大時計の時間はカウントを刻み続けている。


 「目を覚ましたかい?」

 壁を背に座り込んで眠っていた私の前に人影ができる。

 ゆっくりとその相手もしゃがむと私の様子を心配そうに見守る。


 「・・・」

 赤桐さん……何故かその名前を呼ぼうとするが、声がでない……

 まぁ……いいや。

 私はすぐにその男から視線をそらす。


 「そっと……しておいてくれっ……ということかな」

 赤桐は帽子を手で押さえながらその場を立ち上がる。

 

 ぼんやりとあのイケニエゲェムというモノを思い返す。


 ……信用している……はず……


 でも……あのゲェムで……


 【票】の入っていなかった人物……


 わかっている……ギンだって最初のゲェムでは、自分に票を入れていなかった……


 わかっている……のに……


 もう……誰を信じていいのかわからない……


 そもそも……助かったところで……もうギンは……


 私だけ助かるなんて……



 「ギン君の行為を無駄にだけはさせないよ……レイスちゃん、君は生きてここを脱出してきちんとギン君の墓に線香をあげてあげるんだ……それが彼の犠牲ゆうしへのお返し……というものだよ」

 そう優しく……どこか冷たい口調で言う。

 聞こえているのか聞いているのか……廃人のように無表情の私に呆れてしまったのか、ゆっくりと赤桐はその場を立ち去る。


 助かれって……いったいどうすればいい……

 どうすれば……ギンも居なくなって……

 


 「みーけっ♪」

 再度、人影ができる。


 薄紫色の髪……


 正直……会話をする場面など一生無いかと思っていた……


 存在自体が予測不能な男……


 確かシシド リンネ……


 「あたりー、覚えてくれていたんだ、レイスちゃん♪」

 思わず口に出ていた?

 いや……読心術……というやつか?

 

 「私に……なんのよう?」

 ……悪戯に楽しむように……ゲェムをかき乱しているような奴……


 「……助けに来た」

 口元は少し緩んだ様に微笑み……

 それでも、私を見る瞳はどこか真剣で……

 一瞬、言葉の意味を理解できなかった。


 「吟牙かれでも赤桐おっさんでも無く……僕が零素きみを」

 そう告げる。

 今度は何の遊びだ?

 何が目的だ?


 「何をしているんだい?」

 気がつくと、赤桐は戻ってきていて私たちの様子を見ている。


 「紫々戸 リンネが仲間になった♪」

 ゲームのファンファーレの様なものを口ずさみながらリンネが言う。


 「レイスちゃん……一番信用しちゃいけない人種だよ、これはっ」

 苦痛でも受けたような顔をし、赤桐が言う。


 「お互い様だよねぇ♪」

 そうリンネが赤桐に詰め寄る。


 「レイスちゃん、僕ね、レイスちゃんの言いつけを守って自分に【票】を入れたよ」

 ……先のゲェムで確かにリンネには票は1つ入っていた。


 「【票】の入っていない人が何人か居たけど……レイスちゃんはどっちを信用する?」

 そうレイスに問い、その瞳は赤桐を追い詰める。


 「……僕の票は……誰にいれたか……君は如何様しっているのだろう?」

 そう……告げる。

 はははっとリンネが楽しそうに笑う。


 「ねぇ……だったら何で言わないの?」

 にやけた口元で……瞳だけが赤桐を追い詰める。


 「言えば……いいじゃん……僕が【嘘】をついているって」

 瞳が赤桐を追い込む……思わず赤桐がそれを逃れるように俯く。


 「ねぇっ……どういうことなのっ」

 そう私が二人に叫ぶ。


 「ほらっ……僕を落とすチャンスだよ」

 そう……自分が不利なる言葉を赤桐かれから引き出そうとしている……


 「ねぇっ……答えてっ」

 私の言葉に……


 「……くっ……」

 何かを白状しようとした、赤桐の口を閉ざす。


 「【ぼく】が【ぼく】に票を入れていないって……そう証言すれば?」

 そう……リンネが赤桐の言葉を変わりに口にする。


 「だって……本当は僕が票を入れたのは無槻 キョウカだ」

 そう……リンネが言う。


 赤桐の顔が青冷めていく……


 「だったら……僕に入っていた票は……?そう……僕じゃないって知っている人間は一人だけ、【僕】に票を入れた本人だけだよね?」

 ……ギンは間違いなくキョウカに票を入れていた……そう延長戦が証明している。

 ……リンネがもう一票いれていたとして……

 ……赤桐が……キョウカに票を入れていたら……ギンは……


 「……彼女が黒じゃない保障が無い……彼女が釣られても平然としている様は、余りにも危険だ……彼女の白黒をはっきりさせる必要がある……」

 そう赤桐が言い訳する。


 「彼女は……【白】だよ」

 そう根拠も無くリンネが言う。


 「なぜ……そう言い切れる?」

 そう赤桐が返す。


 「根拠は無い……でも、僕には彼女は自分を黒く見せようと必死に見えるけどね♪」

 ……そうリンネが返した。


 「いいよ……僕が証明してあげる」

 そう……リンネが続ける。


 「リベンジ……僕が次のゲェムで彼女キョウカを倒す」

 そう……口にする。


 「そしたら、僕を味方と認めてくれるかな?」

 そう……彼女レイスの方に振り返り微笑んだ。


 「どうして……?」

 なぜ……彼がそんな役を買って出るのだろうか?

 思わず、そう口にしていた。


 「最初に言ったよ」

 彼の瞳は何を見ているのだろう……


 「僕は君を助ける」

 そう……リンネは私に微笑んだ。



 恨むのはおおかみだって事はわかっている……


 その言葉は信用に値するのだろうか……


 わからない……けれど……



 例え……彼女が私に言った……言葉が正論だったとして……

 私が彼女を恨まない理由になり得るのだろうか?



 私が生きて此処を脱出する……

 次のゲェムで誰かを利用し、彼女を貶めたとして……


 ギンは助からない……


 私の【罪】は解消されない……


 罪が何かなど……私には到底わからない……


 誰が味方で誰が敵で……


 誰に利用されて……誰を利用するのか……


 私たちが此処に居る理由……

 犠牲の理由……


 罪とは……それを理解すれば何か変わるのか?



 ギンの犠牲も……


 リンネの目的も……


 理解なっとくできる日が来るのだろうか?


 誰を信じる? 誰を疑う?



 ねぇ……ギン……私は……


 貴方ギン以外の……どの言葉を……


 ガコンッという音がする。


 また、何処かの扉が開いたようだ。



 「レイスちゃん」

 黙ってその方に歩き出した私を赤桐が心配そうに呼ぶ。


 黙ってリンネは私の後ろを歩く。


 そして、赤桐もそれに習う。



 「ギン……?」

 椅子に縛り付けられる頭の無い死体。

 

 近くにはモニターが置いてある。


 何を見せようとしている……



 次第に集まる人たち……


 私……ギン……此処に居る連中が平等に裁かれるだけの理由が……

 納得できる理由が……そこにあるのだろうか?


 キダ リョウ……あの時と同じように……


 部屋の明かりが消え、映像の明かりだけが辺りを照らす。


 上映会が始まる。



 映し出される映像。


 【青の犠牲とその罪】というタイトル。



 誰かを守るということはその彼女が受けるべきだった苦痛を身代わりになるということだ……


 そう青色の彼は言う。



 そんなテロップが流れ……


 顔が見えない女性……何かしらの被害にあっている白い髪の女性が目の前に居て……


 それを助けようと歩み寄ろうとした彼女を……青色の髪の男はそれを阻止する。


 彼女はなぜ自分を止めるのかと彼に告げるが……


 「彼女を救うということは、同時に君はそれだけの苦痛をその身に降りかかる危険が伴う……俺は、君にそんな役目を背負ってほしくない……俺は、君を守るから……」

 そんなことはさせないんだと……彼は彼女の頭をそっと自分の胸元に抱え込み……その様子を見えないようにする。


 彼女は、白い髪の女性の被害をその身を犠牲にしても守ろうとした。

 だが、その犠牲になる彼女を心配し、彼はそんな彼女を守った。


 その目の前の犠牲者を彼女の視界から消すことでそれを証明した。


 だったら……彼女が犠牲になり受けるはずだった苦痛は、

 彼女を守ったそいつが受けなくてはならないのではないか?



 だから、それは彼の犠牲やくわりだ。



 部屋の電気がつく。


 その映像が何を言っているかはわかるが……

 到底、理解などできるわけがない……



 狼は私たちになんの罪を償わせるつもりでいるのだろうか……



 再び開いた扉……


 外の大広間には……


 仮面の兎が待ち受ける。



 テーブルが一つとそれを挟むように椅子が二つ。



 「さぁ……てめぇら、お待ちかねのイカサマコイン贈呈のゲームの始まりだぜっ」

 そう仮面の兎がみんなに告げる。


 今度はどんなゲームなのか……


 周りが戸惑う中……表情一つ崩さない無槻キョウカ……

 そんなキョウカを不適に瞳を向ける……紫々戸リンネ……


 罪……犠牲……


 誰かを守るためには……それに担う身代わりが必要だ……


 「はははっ」

 何が面白いのか……一人笑う紫色の髪の男性。


 「だいじょーぶ、僕は負けない」

 そう宣言する。


 「だって……僕は君を守るから」

 そう……続ける。


 そんな理不尽みがわりという定石など通用しないというように……


 「まったく……何者なんだ……」

 赤桐はそう……呟く。


 「そんじゃ、ルールを説明するぜ」

 そう兎が皆に告げる。


 黙って、全員の目線はそちらに向かう。


 当然だ……


 このゲームの勝利が、ほぼ……次の遊戯ほんせんの生き残りに直結する……

 よほど、一人に票が偏らない限りは、負けることはなくなる。


 このゲェムを終える方法は一つ……


 黒を狼との決着をつけることだ。



 ねぇ……ギン……わたしは……


 決着をつけることができるのかな……


 おおかみを見つけたい?

 キョウカを倒したい?


 だから……わたしは……それらを利用する……。

 その誰かを倒せるというのなら……


ご覧頂き有難うございます。


少しでも興味を持って頂けましたら、


広告下からの【☆☆☆☆☆】応援

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