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第7話 賢者、強くなる

 初めての外から一月が経過した。

 一応、早いとは思うがハイハイまではできるようになっている。もちろん、風魔法抜きでベッドから抜け出す事も可能だ。とはいえ、未だに立って歩く事はできないが……。


 こうやって色々と動き回れるのは良い。

 一先ず、立てないのは筋力が無いからだと仮定してハイハイで走る練習をしている。部屋の四隅を通るようにして十週、短いように思うだろ。意外とこれだけでバテてしまうんだぜ。


 それに本気でハイハイしてなくてもコレだ。魔力はあるのに筋力が無い……魔術師の特徴まんまだな。まぁ、これを繰り返していれば立てるようになるのは分かっている。立つ練習もハイハイでバテなくなってからかな。


 という事で、今日の筋トレはおしまい。

 次は……待望のレベル上げだ。待っていた……僕はこの時をずっと待っていたんだ。これをしたいがためだけに一月も前から準備をしていたからな。


 通称『人形(ヒトガタ)』という独自の魔法。

 乾燥させて土のゴーレムを作るまでは半月程で何とかなった。だけど、思いの外、ゴーレムを操るための魔力回路の作成に時間がかかってしまったんだよね。まぁ、十中八九、魔力操作のスキルレベルが低いからだと思うけど。


 でも、もう準備は整ったからどうでもいい。

 全長二メートル程度の人形に魔力を流して動かしてみる。大丈夫、ここまでで問題は何も無い。後は魔力操作を軸にして遠隔で魔力を流せるようにしてっと……オーケー、これで問題は無し。


 さぁてと、失敗した時は失敗した時だ。

 何でもそうだけどやってみないと成功するかどうかすらも分からない。本当はコアとかがいるのを無視しているから成功する確率は低そうだけど、それだけが問題なら対処法は幾らでもある。そこら辺は賢者様に任せて欲しいですわぁ。


 隠蔽成功、風魔法の付与完了……いけるな。

 今日の狙いはゴブリンの討伐。全てが上手くいったら魔石が手に入るから出来る事が一気に増えていくぞ。そしてレベルを上げられるようになってステータスが増加して……うーん、悪くないねぇ。


 視界は良好、人形の場所もよく分かる。

 ではでは、少し前に見かけた森の中へレッツゴーっと。風魔法のおかげで軽く飛べるから時間もかからずに着くはずだ。このためだけに土魔法だけで軽くしたからな。


 傍から見ればガ〇ダムかな。いや、旧型のナイ〇メアって可能性もある。それなら魔眼とかも手に入れないといけないなぁ。アルフの名のもとに命じる……厨二心が疼くね。


 おし、無事に着きましたっと。

 じゃあ、適当に人形を進ませてみますか。行くとしたら森の奥の方がいいよね。僕が住んでいる村に近かったら人に見つかる可能性も高くなるし。それに倒せるのなら強い魔物を倒した方が経験値も多く貰える。


「ギャギャギャ!」


 おー、ゴブリン発見。あんなに醜くて嫌いだった魔物と出会える事がここまで嬉しいなんてね。本当に人生というのは何が起こるか分かったものじゃない。……ゴブリンが五体、これなら人形一体で何とでもなるか。


 使うのは水槍(ウォーターランス)でいいかな。

 魔力操作を利用して人形の魔力回路を働かせる。そのまま自分の中にある魔力を水魔法に変換して敵に放つだけ。大丈夫、僕の周りには何も現れずに人形の近くに水の槍が十本現れた。では、死ぬがいい。


 血飛沫が舞った、これも久々だ。

 ダンジョンでは敵が死に次第、ドロップアイテムに変わってしまう。だから、こうやって死体が残る事自体が久しぶり過ぎて少しだけビックリしてしまった。


 人形を操作してゴブリンの胸辺りに腕を突っ込ませる。ゴブリンの胴体自体に価値は無い。あっても邪魔だし食べられるわけでもないからな。でも、魔物にある魔石、もっと詳しく言えばコアっていうものには価値がある。


 コアが五個、これがあれば人形を自動で動かせるようになるぞ。コアに命令を書き込んでその通りに動かし続ける。これで魔力操作のレベル上げを行いながら経験値も貰えるという状態にできるんだ。本当に魔力操作様々だぜ。


 コアは……人形の中に入れておこう。

 もう少しだけ戦わせても良かったけど試作品に近いからな。それに今日の目的自体は達成した。早く帰ってきて貰ってネズミ型の人形四体の中に仕込もう。一個は今、操作している人形の中かな。


 後は人形が帰宅してから……だ。

 うーん、もう少しだけ戦ってみて欲しいって気持ちはあるけど我慢だね。こういう時に我慢できない人は確実に何も上手くいかない。それこそ、奈落の攻略だって倒せる倒せないの判別がついてから次の階層に向かっていたし。


 ダンジョンでは先急ぐ人から死んでいく。

 そんな有名な言葉があるくらいただ闇雲に急ぐって意味の無い事なんだ。むしろ、五体のゴブリン相手に勝利して念願のコアが手に入る事を喜ぼう。なに、明日にでもまた戦わせてみればいいだけの事だろ。急がない、急がない。


 おー、意外と早かったな。

 付与がまだ消えていなかったのがデカかったのか。こういうところで早めに戻す事を選択した利点が現れるとは……やっぱり、急いでも何のメリットも無いんだろうね。


 って事で、コアを貰って魔力を注ぐ。

 ここから自分のイメージに合わせて命令を書き込んでいくんだけど……まぁ、簡単に言えば電子機器に対して独自のプログラムを打ち込んでいくみたいなものかな。


 原理だけで言えばコアに魔力が流れると命令が伝達するようになっていて、人形とかに設置したら血液のように回り回ってコアに戻っていく。足りなくなれば魔力操作で作った軸を利用して遠隔で魔力を注げばいいだけだ。


 まぁ、命令を書くのは物凄い技術がいる。

 こればっかりは賢者だったからできるという事にしたいな。本音を言えば独り身脱却の話し相手作成のために手に入れた悲しい技術ではあるんだけど……転生して役立ってくれるのであれば頑張ったかいがあるよ。


 これで今日中にしたい事は終わった。

 後は明日から次第だろう。……期待しているよ。これが成功すれば素材集めがもっと楽になってくる。素材集めが楽になれば……やれる事は一気に増えていくからね。

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