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第4話 賢者、下級魔法を覚える

 三ヶ月目、遂に僕は地に体を付けた。

 風魔法を利用して高い赤ちゃんベッドから抜け出し、夜な夜な練習したかいがあったというものだ。今では俗に言う『ずり這い』というものが出来るようになっている。ハイハイはまだ出来ないものの自由に動けるというのはこれ程までに気分の良いものだったか。


 とはいえ、まだ家から出られるわけでない。

 精々、ハイハイの練習ができるくらいだ。もっと言えば寝返りをうてると分かった瞬間にフィアナがハイハイの練習をさせてくれたからな。急いで練習しなければいけないわけでもない。ただ、こういう事の積み重ねが筋力増強に繋がるんだ。馬鹿にもしてはいけない。


 そして現在、下級魔法を扱えるようにした。

 魔法というものは下級と上級、そして例外の三つの分類分けができる。例えば僕がマスターした下級は魔法の基礎とも呼べるものだ。火、水、風、土の四つが種となっていて上級魔法や例外属性に該当する魔法を練習するために必要になってくる。


 要は数学で言うところの因数分解とかの部分だね。覚えなくても将来的に困りはしないが、覚えておいて損はないし大学入試を考えるのなら覚えておかなければいけない存在。もちろん、文系大学みたいな別の職業、戦士職とかになりたいなら不必要なものだ。


 でも、僕は魔法をマスターしたい。

 これは元々の僕が扱えていたからって言うのもあるし、練習して覚えられるのなら覚えておきたいからっていう単純な理由もある。それに魔法職っていうのは本当に少ないんだ。使えるだけでエリート扱いされたりする。女の子からの受けだって公務員とか上場企業並に良いと来たら覚えない手は無い。


 それで下級魔法を覚えた次の段階は……まぁ、残当にいけば上級魔法かな。例外は下級魔法が扱えれば何とかなるってわけでもないし。上級魔法は炎、氷、雷、木だったかな。後は例外でも光、闇、回復までなら何とかなりそうか。


 後、これで僕の得意だった戦略が取れる。

 まずは土魔法で人型の人形を作って、それを水魔法で粘土のように固めておく。後は火魔法と風魔法で乾燥させてしまえば完成だ。……とはいえ、時間はかなりかかりそうだけど。


 でも、内側から乾燥させられる分だけ時間はかからないだろう。どうせ、ここにいても暇なだけだし魔法の練習にはもってこいだ。……どうせなら陶器のような美しさを作り出してもいいけど、用途は観賞用じゃないしやめておこう。


 後は隠蔽をかけてっと……おし、これで僕の人形がバレる事は無いぞ。まぁ、仮にバレたところでフィアナの心臓が止まるだけだ。……いや、それは駄目だな。代わりに父親の心臓でも捧げておくか。


 という事で、一仕事終えたわけですし風魔法でベッドの上に戻ってっと。覚悟はいいか、僕はできている。


「ふー……おんぎゃあぁぁぁ!」

「ど、どうしたのですか! アルフ様!」

「うーうー!」

「あ、おしめでございますね。畏まりました」


 羞恥プレイではある。でも、慣れた。

 今となっては逆に泣けばフィアナか、今回みたいにメイドのイリーナが助けてくれるからね。そういう点では楽ができるからいいやって思っているよ。それに……フィアナもイリーナも可愛いから本当に良い。目の保養だ、眼福だ。


 ただ……イリーナはイリーナで執事のオッサンと結婚しているみたいだけど。はぁ、やっぱり、綺麗な人っていうのは早くして一生の伴侶を見付けてしまうんだろうなぁ。いや、今の僕はゼロ歳なんだ。学校とかに行けば女の子なんて……。


「あいあおー!」

「ありがとう……でしょうか。やはり、アルフ様は賢いですね。気のせいだとしてもそう捉えられるような言葉を発するのですから」


 いえ、そう言っているつもりです。

 ただ上手く発音が出来ないから母音と子音が使い分けられないわけで……くっ、だが、この可愛らしい笑顔を見れたのならそれでいい。僕もエクスカリバーを見せたかいがあるというものだ。


 それにしても……青色の髪か。

 なんというか、この世界って本当に色々な人種がいるよなぁ。それこそ、僕の父や母は金髪だし、イリーナは青色、執事に至っては茶色っていう様々な髪色がある。目の色だってイリーナは赤に近いから……日本だったら物珍しいだろう。


 逆にトーマとしての僕は酷く稀有な存在だったらしいからね。黒色の髪と黒の目……その両方が殆ど異世界からの転移者以外は持ち合わせない特徴らしい。でも、それらを加味しても女の子からはモテなかったんだよなぁ。やはり、顔か。顔が全てを解決するのか。


 だったら……間違いなく僕は当たりだね。

 フィアナは文句の付け所が無い程に美しく優しくて可愛くて最高だし。父親は……どうでもいいが顔は綺麗だから僕がブスになるはずも無い。そして魔法も使えるとなれば誰も彼もが僕を欲するだろう。


「アルフ……様……?」

「あうー」

「悪い顔をしていたように見えましたが……まぁ、気のせいですよね!」


 ふっ、僕の可愛らしさは天下一品か。

 少しばかりヘマをしてしまったが愛嬌を振り撒いたら簡単に落ちてくれたよ。そして、この優しい揺すり方……うーむ、最高級のマッサージ師かってくらいに良い。もっとだ、我は美少女からの優しさを所望するぞ。


「あー、あー」

「えーと……外ですか? まだアルフ様には早いような気がしますが……」

「あうー!」

「え……ええ!? 奥様! 奥様ァァァ!」


 ありゃ、体を起こしたら驚かれた。

 あ……そう言えば皆の前で上体起こしって見せていなかったか。失敬失敬、これは少しばかり失敗してしまいましたね。てへぺろ……は古いし誰も見てくれないか。すごく虚しくなってきた。

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