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第24話 賢者、小さな問題に陥る

 って事で、一番の問題は達成したわけだし……後は気楽にいられるな。ミルファは配下達の戦闘支援のために出払っているし、他に残った仕事と言えば生産班の作った武具の採点程度だ。


 こういうのは部屋でゆっくりやれるからいいな。一人一つは必ず作ってもらっているから……計十二点、それらに点数をつけて紙に書いて教えるんだ。ここが良くて、ここが悪いみたいな感じでね。


 とはいえ、生産班も僕が直々に教え込んでいるだけあって悪くない出来になっている。教えて五ヶ月程度だが店を持ちたての職人に比べれば良い武器ができているし……何よりも鉄の剣の制作をさせているからコスパも良い。バレディとの契約で簡単に売る事ができるからな。


 うーんと……これは最良が二、良が四、並が四、悪が二かな。悪とは言っても及第点はあげられるレベルだから悪くは無い。恐らく制作過程で魔力を均等に入れられなかったからこその悪化だからな。


 最良の二人は魔力消費をメインに動いてもらおうかな。魔法の練習をメインにさせた方がより良い武具を作れそうだ。魔道具制作に移るのも悪くは無さそうな気もする。良は……もう少しだけ魔力操作を練習させてから魔法に特価だな。


 並と悪は魔力操作メインだ。この六人はまだ伸び代だから後半月もすれば良以上の物を作れるようになるだろう。それでも売れるだけの品ではあるから褒めの言葉も忘れずに書いておいて……。


 と、今日の仕事は終わりだ。

 うーん、思ったよりも時間に余裕があるな。今のところはフィアナやアルに動きは無いし、家に戻る必要も無い……となれば、優勝賞品の作成に移るとしますか。準優勝のケールにも頑張ったで賞くらいはあげたいし。


 まずはカイリの武器からだ。

 カイリは片手剣を軸に軽い防具を使って速度重視の戦い方をする。その観点から言えば武器の重さは鉄の剣並の方が嬉しいだろうな。剣身自体は多少長くても扱えるところを見るに……使うべき鉱石はミスリルあたりかな。


 火力重視ならアダマンタイトやダイヤモンドあたりにしようと思ったが、振りやすさとかを重視するなら銀やミスリルだ。もっと言えばカイリは魔法も使える部類だから魔力を通しやすい武器の方が嬉しいだろう。


 まぁ、申し訳ないけどアダマンタイトの方が値段が高い分だけありがたいな。それに加工も魔力を多く必要とするから面倒だし……もっと強くなったらアダマンタイトとミスリルの合成鉱石でも使って作ってあげるか。


 はぁ……そこら辺はかなり金がかかるからなぁ。クーベル王国の唯一の欠点が鉱石関係を輸入に頼っている事だし……やっぱり、補給路は作っておくべきか。そこら辺も移動は難しく無いから配下の育成が完了次第、一パーティだけ送り出そう。


 カイリなら確実に裏切らずに仕事を終えてくれるし、最年長組を出せば交渉とかも問題が減るだろう。比較的、裏切る危険性が薄い人となるとカイリとケールは確定だな。……戦力的にも暴れられる人がいないとキツイだろうし。


 と、銀とミスリルの化合鉱石はできたぞ。

 ケールの頑張ったで賞は銀をメインにするからあまり手間もかからない。……いや、賞品制作に手間がどうこう考えるのも良くないか。こういうのは気持ちを込めて作ってあげないとな。


 ワイバーン系統の素材は……今のカイリには微妙なところか。見た感じカイリの限界値はもっと高いから新調した武器は長い時間、カイリの愛用する得物になるだろう。それを踏まえればワイバーンの素材では心許ない部分が多過ぎる。


 賢者時代の素材だと……あー、上位種のドラゴン系統が良さそうだな。上位魔法の属性を持つドラゴン達の魔石を動力にして……それらに命令でも書き込んでおくか。そこまでしてようやく僕ですら使える得物だもんな。


 一応、盗まれた時の対策として使用者制限をかけておこう。炎、氷、雷、木……光と闇も組み込んでおいた方がいいよな。六個の魔石に六個の命令を書けるとしても……そのうちの四つは既に決まっている。


 使用者制限、身体強化、魔力制御、斬撃向上の四つはあるのと無いのとで大きく違う。重複自体はするから身体強化に四つを、魔力制御に六つ、斬撃向上に五つ……残り二十個は付与術と魔法適正、魔力供給、結界で四つずつ分けるか。


 六属性の魔法を扱えながら結界も張れ、武器単体の性能自体も化け物級という最高の武器だ。少ない魔力で高性能の魔法を放てるとなれば……僕が使う武器達には劣るけど褒美としては十分な物になるだろうな。


 後もう少しだ……カイリがもう少しだけ強くなったら防具も作ってあげよう。武器がこれだけ良いものなのに防具がジャージでは微妙だからねぇ。折角なら幹部候補の人達専用の制服みたいなのを作っても良さそうだ。結束力を高めるみたいな感じで力を出す時には形態変化するとか。


 うんうん、悪くないな……それが欲しいって他の人達も奮起してくれたら嬉しいよ。ただセンスに関してはあまり良い方じゃないから……そこら辺は誰かに助けを求めるべきかな。


 と……一応、完成はしたな。

 刃と茎は合成した鉱石、刃の裏表に三つずつの穴が空いてある。その茎の部分にエルダートレントの枝で作った柄をはめ込んでブラックウルフの皮を巻いた。最後に穴へ命令を書き込んだ魔石を入れたら終わりだな。


 持ってみたが大して重みは感じない。

 これならカイリであっても簡単に振れるだろう。魔力の流れも堰になりそうな淀みは無い。最悪は武器の性能だけで敵を狩れるだろうから問題が起こった時に直してあげれば大丈夫だろう。


「ふむ、上出来だ。逆に今のカイリでは少しばかり性能に振り回されてしまいそうだが……」


 いや、そこは使っているうちに慣れるか。

 何事も性能の悪い物よりは良い物の方が後々でも後悔は無いはずだ。また同じような武器を作れとなったら断りたいからな。……そういうのは素材の問題とかを解消してからだ。今はこれくらいが精一杯だろう。


 という事で、ケールの分も作っておこう。

 何にするかは既に決めてある。武器や防具は優勝賞品として、準優勝となれば少しだけグレードダウンした物の方がいいよな。それでいて貰えて喜べるような物となると……装飾品だ。


 もちろん、指輪とかは作らないけど。

 作るのはリストバンド、銀は大量の魔力を込めて無理やり軟化させておく。鉱石としての硬さは維持しながらも手首に付けやすいようにする。とはいえ、多少は重みを感じるだろうが……性能が良ければ些事たる問題でしかないな。


 銀だから魔力回路を作る必要は無い。

 その上に片方に一つずつ……そうだな、ワイバーンの魔石でいい。両方に結界、魔力制御、身体強化を二つ書き込むか。五つ以上は少しばかり面倒だから手を抜かせてもらおうかな。まぁ、最初は準優勝者に景品なんて渡すつもりもなかったし。


 銀を軟化させるのに魔力が五千……うーん、本当に鉱石の性質変化って魔力消費が激しいな。錬金術と鍛治の二つのスキルは獲得済みだが、装飾品関連のスキルは持っていない。


 そこも関係しているとかなのか……いやいや、性質変化自体は装飾品加工の前段階だ。単純に僕の技術能力が低いからというのが可能性として高そうだな。そこら辺も分かるようになれば生産班へ教えられる事も増えそうだ。


 これで……リストバンドも完成したな。

 さてと、まずは生産班への作品評価を各部屋に送っておこう。その後にカイリとケールの部屋に賞品の転移だ。紙で軽い説明も書いたから特に困ることもないだろう。


 では……と、危ないな……!




「アルフは……さすがに寝ているよね」


 ギリギリセーフ、転移が間に合った。

 マウスを家に放っておいて正解だったな。家の扉付近まで迫っていたから本気で焦った。魔法の準備自体は常日頃からしてあるから即座に起動できるけど……心臓に悪いって。


「起きて、アルフ。少しだけ話があるの」

「……ん、どうしたの。フィアナ母様……」

「眠たそうな顔も可愛いわね。……って、そうじゃないわ」


 ああ……褒められると素直に嬉しいな。

 とはいえ……そこまで焦ってくる理由もよく分からない。リーフォン家の近くにいた盗賊とかは一掃しておいたし、魔物とかの問題も何も無かったはず。アルとの会話で何かあったとか……いや、単純に遊びに行こうとかの可能性もあるかな。


「どうかしましたか」

「……単刀直入に言うわ。七日後にロレーヌ家領地に一緒に行きましょう」


 そっかそっか、ロレーヌ家領地に、ね。

 確かにかなり広い場所だからなぁ。楽しめる要素はかなりあるはず……うんうん……は?






 はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

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