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第21話 賢者、エクスプロージョン! する

「さて……時間内には全員が集まったか」


 僕達が来た時には既に半数がいた。

 大体、十分程度で半数……一番、遅い者で十四分程度で来ている。本音を言えば誰か遅れてくれれば「君達が集まるまでに十何分とかかった」とか教師みたいな説教を口にしたかったけど……うん、どちらにせよ、そんな事をすれば威厳が無くなってしまうな。


 それにしても……うんうん、全員が指示書の通り着替えてから来てくれた。それなりに動きやすく防御面でも悪くない服だ。学年ごとに色の違うジャージだから……だせぇwwwとか言われて着ない人もいるかと思ったよ。


「しっかりと我の渡した服を着てくれたか。見た目の問題からして嫌う人間がいると思ったぞ」

「見た目は兎も角として……主が着ろと命じた服を着ないという理由はありません。それは主の期待を裏切る行為と大差ありませんから」

「なるほど、確かにその通りかもしれないな。だが、着てくれたからには服の説明もしておこう。これは奈落にいる間の戦闘服だ。戦闘服というからにはSランク冒険者が着る鎧よりも防御性能が高くなっている」

「これが……!?」

「金糸蝶と呼ばれる魔物の幼体から取れる希少な糸から作り出した服だからな。それに加えて付与も行って身体強化のレベル五、魔法耐性レベル三までではあるが付けている」


 ふふ……はっはっは、その反応、最高だよ。

 そうだよ、結構、頑張ったんだよ。だってさ、魔法とかの付与ならまだしも、スキル効果の付与となれば難易度は格段と高くなる。それに付与できるスキルは僕がそれ以上の力を持っている必要があるんだ。魔法耐性レベル三なら、魔法耐性レベル四以上の力を持っている必要がある。


「もちろん、君達がより強くなり、我に貢献すればする程に良い物を提供しよう。美しい服、魅力を高める装飾品、性能の良い武具……それらを提供しよう。そのどれもが通常の市場では出回る事の無い逸品だ。通常では確実に手に入れられない物ばかりだぞ」

「……この武器よりも、ですか」

「そんな物は我からすれば雑多な量産品だ。世に出回らせる気は無いが捨てられたところで少しも被害は出ない。そのような物よりも君達の方が価値がある、というのは甘言にしか聞こえぬか」


 実際、この武器達に価値は感じない。

 世に出回らせないと考えたのもリスクが大きいから出す気が無いだけであって、それ以外の理由がリスクよりも大きいのであれば簡単に売り払えるんだ。それくらいには別にどうでもいい。


 まぁ、そんな物だからこそ、目の前の奴隷達にも渡せているんだ。別に奴隷達が武具を売ったところで構わない、そう思えるように強過ぎず、弱過ぎずな道具を渡している。まぁ、空間魔法を付与した小袋はさすがにやり過ぎたとは思うけど。


「あ、あの……本当に私の方が価値があるのでしょうか!」

「当たり前であろう……君達はこれからの我の国の土台を作る逸材達なのだ。簡単に作れる武具と逸材のどちらが価値あるものかは誰にでも分かる問いでしかないな」

「ん……ネームレス様は期待している。それは私に対しても……少しムカつくけど君達にも……」


 うん、あまり良い気がしないんだろうな。

 今、発言したのは僕を神聖視している年長組の女の子だ。自分と年齢が近いからこそ、僕が自分を見てくれなくなるのではないかと不安になっているのだろう。本当に意地らしくて可愛らしい子だよ。


「とはいえ、君達よりもドランの方が大切なのは揺るがない事実ではあるがな。我が伴侶という事もあるが戦力としても国家一つを揺るがせるだけの力を持っている」

「ん……ネームレス様が望むのなら潰してくる。大きさ次第で……半月はかかると思うけど……」

「化け物……!」


 それは僕も思うよ……普通に考えて奈落の十階層以降に足を踏み入れられている時点で化け物と変わりないからな。彼女の持つ固有スキルの龍化と連臥の性能がイカレているっていうのもあるけどさ。


 だから、模擬戦をすると楽しいんだ。

 僕に対して大きなダメージを与えられるのは奈落の五十一階層過ぎからの魔物か、ヴァンか、帝国の騎士か……ミルファだろうな。他にもいるだろうが成長途中で知識不足な中、僕と戦えているのが普通では無い。


「その化け物から戦いを学べるのだ。君達が我に抗おうとしなければ安寧を手に入れられる、それの何に恐怖するというのかな」

「ん……敵対するなら……許さない」

「国に戻ったところで奴隷として不明瞭な未来に流されるだけであろう。であれば、我のもとで力を蓄え、その運命から抗え。そちらの方が数十倍は簡単な生き方だ」


 軽い脅し……対して反応は多種多様だ。

 僕に対して強い恐怖を抱く者、より忠誠心を高める者、覚悟を決める者、僕の寝首をかこうと野望を抱く者……やはり、全員の奴隷を連れてきて正解だったな。こうやって多くの反応を楽しめる。


 まぁ、僕に敵対しようとする人が少なくて本当に良かったよ。最悪は殺さなくてはいけなくなるからな。その数が五人しかいないのであれば戦力としては大した打撃にもならない。


「では、ドランが担当する女衆は二階層で、我が担当する男衆は三階層で戦闘経験を積む」

「ん……行くよ」

「君達も行くぞ。なに、使い方さえ知れば簡単に移動ができる」


 外へ出ればポータルがあるからな。

 そこから二十四人を移動させるために二回、行って戻ってきた。ポータル自体は大きめだけど一回で大人数が移動しようとすればギュウギュウ詰めになるからな。


 男共をギュウギュウ詰めにするのは結構だが……僕も巻き込まれるのはあんまり嬉しくない。女の子達と移動だったら確実に喜んで一回で移動させていたけどさ。そんな事をミルファが許してくれるとは思えないけど。


 何度目だろうな、ここに来たのは。

 でも、今回は少しだけいつもと違う。僕の配下がいる手前、前のように遊び感覚で動けはしない。とはいえ、効率重視で動くから傍から見れば遊びに思えるかもしれないがな。


「飛翔、隠蔽……これで多少は早く進める。一言だけ言っておくが……静かにしていろよ」

『え、ヘェェェェェェッ!』


 うん、だと思って、静域を使っていた。

 まぁ、高速で空を飛んだら誰だって声が出てしまうよな。日本にいた時の僕なら確実に同じ反応をしていただろうし……これに関してはお咎めは無しにしておこう。


 ここら辺が中心部分かな。

 という事で、ここでなら少しばかり遊んだとしても怒られやしないだろう。それに配下に加わる子達にも僕の力を見せた方がいいしな。多少は頑張ろうとする気持ちを作らせておいた方が成長にも繋がるだろうし。


「君達には我の力の一部を見せよう。なに、普通よりも少しだけ火力が高い程度だ」

「一部で……これだけの魔力を……」

「この場に魔物を集める、大爆発(エクスプロージョン)


 火力を抑えた打ち上げ花火のようなものだ。

 それでも人に当てれば確実に炭に変えられるだけの火力はあるだろうな。爆裂魔法……もととなった魔法のように一撃特化の常人なら一発を放つのが精一杯の魔法だ。さすがに詠唱まで考えるのは面倒だからやめたけど。


「安心しろ、この程度なら君達にもできるようになる。いや、我がさせてみせよう」

『は、はい!』

「では、最初の君達への命令だ。これから訪れる魔物を殺せ。もちろん、援護はしてやろう」


 二、三階層は既に魔物がリポップ済みだ。一階層は人の訪れも考えて奈落を拠点にしてからは入るのをやめておいた。それに奴隷達が逃げようとした時に足止めをする魔物も必要だからな。


 ワイバーン、サンダーバード、ブラックウルフの三種類。コイツらには奴隷達の養分になってもらう。とはいえ、このまま戦わせても勝つのは目の前の魔物共だ。だから……極力、弱らせてから戦ってもらう。


強重力(ハイグラビティ)毒霧(アシッド・ミスト)……悪いがゴブリン並に弱くなってもらうからな。最上位の存在が戦闘経験すら無い者達に狩られる屈辱を味わいながら死ぬがよい」


 魔物共が空へ逃げられないように重力を強化して地面に叩き落としておいた。その後で毒魔法で大きく弱体化させたから奴隷達でも簡単に倒せるだろう。多少は抵抗されると思うけどな。


 まぁ、それも彼等にとっては経験よ。

 軽く毒は吸うだろうけど……それも一つの経験だよね。これで毒に対して耐性を手に入れてくれたら儲けものだし別にいいか。危なくなったら回復させておけばいいから気にするだけ無駄だ。


「さてと……やれ。死にたくなければ、な」

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