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第17話 賢者、人助けをする

 転移した先は僕にしかいけない空間だ。

 僕……もっと言えば賢者の魂と同じ魂が転移の魔法を使わなければ通れない場所。奈落の奥に扉を設置しておいたんだけど、そこも僕で無ければ開かないようにしてあるんだ。ここばっかりは本当に死守しないといけない物が多いからさ。


 だって、物によっては使い方次第で一国を滅ぼせる道具とかもあるんだ。それが市場に出てみろ。確実にクーベル王国が変な事に使う。市場に出るのは良しとしてもクーベル王国の利になるのだけは絶対に嫌だ。


「……私も入れている」

「扉の鍵が僕の魂なんだよ。魂の形は人それぞれだからな。魂の形質変化を利用した上で鍵を作るという高度な……聞いているか?」

「……うん……寝てないよ」


 嘘つけ……そのヨダレは何だ。

 はぁ、コイツ……誰のために扉を開けたと思っているのか……。まぁ、いい。どうせ、奈落に来たからにはここを開けるつもりだったんだ。ここには僕のサブ武器が置かれているからな。メイン武器は転生した場所である最下層にあるだろうが……サブ武器でも十分な強さを発揮できるだろう。


「とりあえず、そこに座ってくれ。それと上着を脱いでおくように」

「……変態」

「誰がだ。症状であったり、病名を知るためには必要な行為なんだよ。それに……背中側からにするから多少は安心してくれ」


 さっきは僕の目の前で変身した癖に。

 この減らず口……本当に反対方向ずつ引っ張ってやろうか。フニフニして柔らかそうだからな。かなりの距離まで伸びると予測できるし……思いっ切り伸ばした後で離すのも面白そうだ。もしくは本物の餅のように食べてしまってもいい。絶対に甘くて美味しいはずだ。


 だけど、それも全てが終わってから。

 約束した手前、手を抜く事はしたくない。そこは賢者の意地というか、仲間にするためには本気で向き合わなければいけないという謎の使命感があるからな。全くもって女の子にドキドキしている気持ちを隠すためでは無い。


「それは……?」

「これは魔道具『治療箱(メディカル・ボックス)』というものだ。簡単に言えば使用者の身体の状況を文面化して、加えて病状についても教えてくれる優れ物だよ」


 見た目は救急箱でしかないが……これのすごいところは魔力を通してから分かる。まずは魔力を通すと六つの管が付いた吸盤が現れるんだ。この吸盤を両肩、両腹、尻の横に付ける。このまま再度、魔力を流すだけで……。


「症状、魔力枯渇。主に呪の影響による過度な魔力消費によって魔力負荷枯渇病と似た症状が起きております」

「うわ……喋った……」

「そう、で、こうやって文書にして詳細を印刷してくれるんだ」


 呪の影響で枯渇病と似た症状が、か。

 確かに……ここに並んでいるのは枯渇病と瓜二つな特徴ばかりだ。さっきの暴走状態を考えるに魔力が無い時だけ龍の血が暴れ始めるとかか。だとすれば、かなり楽な話ではあるのだが……。


「服を着ていいぞ。そのうえでステータスを無理やり見させてもらうが」

「……いいよ。体中……全部、見られたから……」

「ああ、体の中も全て見させてもらう。そうしないと治し方が分からないからな」


 確か奥の方に飾っておいたはず……あった。

 このモノクル、簡単に言えば最上級の鑑定眼を付与させた最高の魔道具だ。これだけにどれだけの高ランクの魔物を狩ってきたか……の癖して鑑定眼があったから使う事も無かったし……。


 で、でも、こうやって役立っているからな。





 ____________________

 名前 ミルファ

 種族 ドラゴニュートLV68(先祖返り)

 年齢 7歳

 レベル 65

 HP 5565/16520(S)

 MP 550/17650(S)

 攻撃 7655(S)

 防御 5655(S)

 魔攻 4450(S)

 魔防 4258(S)

 速度 4585(S)

 幸運 75(A)

 固有スキル

【連臥】【龍化】

 スキル

【魔力操作LV6】

 魔法

【火LV10】【風LV8】【炎LV10】

 称号

【龍神の呪】

 状態

【魔力負荷枯渇病】

 ______________________






 ふむふむ……なるほどなるほど……。

 ステータスが高いな……というのは、置いておいて最初に考えるべきは……やはり、龍神の呪とかいう濃厚な称号だろうか。……にしても、七歳であの胸だと……デカすぎるだろ……。いやいや、考えを改めろ……今は呪の方が先だ。


 モノクルをかけたまま、3Dのように立体的になったステータスに触れる。魔力を指に流した後で龍神の呪の部分をタップして……おし、しっかりと説明が現れたな。


______________________

 龍神の呪

 神の怒りに触れた者に与えられる称号。魔力負荷枯渇病と同じ状態を引き起こさせ、魔力が回復するまでの間のみ龍神が呪を受けた者を操作する事が可能となる。

______________________


 ふむ……これは……龍神の策かな。

 あの神様は自分勝手だからなぁ……神の怒りに触れたとかも、よく分からん理由をつけて呪った可能性だってある。というか、過去にそういう事をやっているからこそ、ほぼ間違い無いだろう。


 それにしても僕の予想が当たってしまったか。やっぱり、魔力負荷枯渇病も龍神のせいで……そんな苦しみを生まれてすぐに授けたのか。面倒だし……アイツ、殺してやろうかな。いやいや、それはミルファのためにならないから……。


 仕方ない……かなり魔力を使うが……。

 光魔法、闇魔法……この二つを基盤として呪に対してアプローチをかける。そのままだとアイツの力に拒絶されるのがオチだから空間魔法を利用して無理やり風穴をあけてから……毒魔法を注ぎ込む。毒魔法は人を簡単に殺す道具でもあるがイメージや使い方次第で薬になる。


 知っているか、龍神よ……相手が悪いんだよ。

 僕はな……システムでしかない神に興味は無いんだよ。固定された考えが、文化が、老いぼれ塗れの自分達の身を保証するだけの世界に何の価値も無いな。そんな存在に考え続ける人の子が負けるわけが無いだろ。……これ以上、僕の邪魔をするのなら本気で消すぞ。


「合成魔法、そして反転魔法の確立」

「何を……言っているの……」

「ここまで出来てようやく呪を壊せるのだよ。……最後の魔力消費だ。君の全てを壊して、新しい君を作り上げていく」


 恐らく例外魔法として二つを手に入れているはずだ。ここまで確立させる事自体、後回しにしていたからな。それくらい、この二つの魔法は魔力を多く消費してしまうんだ。……だが、今はこの二つがあってようやく達成できる。


「祝福しろ……彼女は呪われし者では無い。我の渇望を、願いを全て祝福へと変えろ」

「体が……光って……」

反転(オール・リバース)


 彼女の魂にかかっていた黒いモヤ。

 それらが一気に拡散して……再度、中へと侵入していく。だが、中へ入っても黒いままとはならない。僕が性質を正反対に変化させたんだ。その時には悪の力に染まっていたモヤも……彼女を助けるための善の力へと変化していく。


______________________

 龍神の祝福

 神の加護を受けし者に与えられる称号。全てのステータスに大きな補正をかけ、魔法に対して大きな耐性をつける。

______________________


 大きな補正をかける……か。

 これは才能や才能値までにも影響を与えると捉えていいのかね。ただステータスに強化をかけるだけでは限界まで行ったら終わりだしな。ただでさえ、ミルファと言う目の前の少女は才能値の大半がSという最高値だった。補正だけでは……。


「……うん、どうした?」

「……本当に治しちゃった」

「言っただろ。信じていなかったのか」


 首を縦に振られてしまった。

 コイツ……でも、その後に笑顔を見せてくれたので僕は満足です。この愛らしさは確かに七歳と言われてもビックリしないからな。……それに七歳という幼さで一人、頑張って生きてきたんだ。許してやらないといけないよな。


「さてと……治したからには話をしよう」

「話せる事なら……」

「ああ……ミルファ、君は……」


 ここまではお膳立てだ……助けるのだって意味も無くやるわけではない。何も考えていないアホ共は無償を求めるが頭の良い人はお返しを絶対に考えるんだ。だって、そうだろ……恩というものは間違いなく大きな足枷となる。


 だから、僕は今ここで彼女に問う。




「———僕の仲間になる気は無いか」

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