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第3話 賢者、実験をする

「あーあー……おしおし、声は出せる」


 付与した闇魔法で作り出した声。

 うーん、さすがにカッコよく作り過ぎたかな。最初はさ、低音の女の子を落とせそうな声にしようか悩んだんだけど……声だけでゴツいオッサンをイメージされるのは嫌なんだよなぁ。


 いや、若くて細マッチョなのに低音イケボとかは憧れるよ。でもさ、声とマッチしないというか、自分の中でのコレに合わないからやめておいた。僕の好きな爽やか系の少し高音な声だ。


 ここら辺は人の体じゃない分、本来の出している声が聞けて良い。気導音がどうとか、骨導音がどうとかは人形には何の影響も無いからね。


 とはいえ、イケボの持ち主が聞こえている声とかにも興味はあるから今後、骨導音を再現出来る人形を作るのもアリかな。そこまで行くとただの趣味でしかないけど。


「あーあー……すっご、女声にもできる」


 日本にいた時の推しの声。

 それが自由自在に出せるという事は……あ、駄目だな。これ以上は自重しよう。別に誰かに咎められるとかは無いけどさ、推しを汚すのだけは何となく嫌だ。でも、こういう声の変化もできるのなら潜入調査とかにも使えるかな。


 よくよく考えてみれば人に化けられる人形と闇魔法の組み合わせって強いな。仮に死んだとしても壊れるだけだし、戦闘面でもそこまで劣る事は無い。もっと言えば僕達のような人にはできない事だってできる。


 なんというか……これを利用しておけば奈落の外に出る手立てもあったような気がしてきた。そうしたら賢者の時でもハーレムを築く事だって難しくなかったはず。……いやいや、転生した今はもっと築きやすい状況になっているんだ。今更、気にしたところで無意味だな。


 声の確認もできた事だし、戦闘の開始だ。

 今、声を出せるか確認したのは魔法名を口にするのと、完全な無詠唱ではどれだけ威力に差があるのかを知るため。もちろん、僕の体では試した事はある。でも、人形を通してだと変化があるのかは知らないからさ。


 何事も実験と改良の繰り返しだ。

 今回の実験対象は低レベルのオーガ、それでも街道付近に現れたら討伐隊が組まれるような相手ではある。アルが相手でも十秒くらいはかかるんじゃないかな。……まぁ、僕が相手だと一瞬で終わるけどね。


「風刃」


 魔法名を口にして首を落とすだけ。

 隠蔽の効果もあってオーガがギンに気が付く前に殺してしまう。当たり前ではあるけど長年、使い続けてきただけあって高火力かつ使い勝手の良い魔法だよなぁ。……自分で言うのも何だけど惚れ惚れしてしまうよ。


 確実に僕レベルの魔法を使える人はいない。

 それだけの自負があるくらい僕の魔法は他の人には再現不可能なものが多いんだ。……ただ、原理さえ教えれば確実に使えるようにはなると思うけど。それこそ、ララとかであってもできるようになるんじゃないかな。


 ギンの姿でフィアナに魔法を教えようかな。

 いやいや、それは長年努力をして魔法の修練に励んできたフィアナのプライドを傷付ける行為に変わりない。だから、そういうのは相手から教えを請われない限りは無しだ。……まぁ、フィアナの魔力操作は無駄ばかりだから時々、教えたくてウズウズしてしまうけどね。


 だって、火球ファイアーボールなんて外側の部分だけを熱くすればいいのにさ。どうして全体的に熱くしようとするんだ。それこそ、内部に爆発する要素を組み込めば相手へのダメージもより高められるというのに……。


 閑話休題、冷静にならないといけないな。

 次に魔力を練って風刃の準備だけ整えておく。移動の間にそれらをこなしてから……オーガに近付いた瞬間に解き放つ。


「……三発でようやくか」


 うーん、この体だと元の体に比べて魔力効率が悪いのかな。準備にかけた時間の割には大したダメージにはならなかった。もっと言うと風刃単体も大きくなっていたから魔法構築の要素が少し欠けている……とかは有り得そうだ。


 例えばイメージ能力の補助を魔法名によって行っていた。もしくは魔法名と共に無意識に自分がイメージをしていた……どちらにしても、魔法名は口にした方が効率は良さそうだ。そこら辺は僕の体とは違うんだなぁ。


 いや、気が付かなかっただけで火力自体は減少していたのか。ギンを経由していたせいで火力減少が顕著になっている……待てよ、経由しているからイメージ力の補助として魔法名が必要な可能性は低くないよな。


 うむ、悪くない仮定が導き出せたぞ。

 って事で、次は剣の練習だな。魔法の火力も悪くないからタイマンよりも集団を相手にした方が楽しいかも……いや、ギンの性能確認にはもってこいかもしれないな。最悪は今みたいに魔法で倒してしまえばいいし。


「さーてと、ひと暴れしますか」


 空間魔法で剣を取り出してから次の標的の場所へと向かった。風魔法で確認した敵の数はオーガが七体、申し訳ないけど普通なら確実に逃げているレベルだと思う。


 だって、風刃で簡単に殺しているけどオーガは強い部類の魔物だからね。解体して素材にして売ったら金貨相当になったはずだし。……僕が知っている時代では街の人の収入平均は年で大銀貨が八枚、大銀貨が残り二枚加わってようやく金貨一枚に変化できるんだ。


 つまり、正体を隠して売れたのならオーガ一体で小金持ちになれてしまう。それくらい討伐難易度も高くて市場に出回らない……はずなんだけどなぁ。ま、まぁ、いいや。楽して稼げるのならそこまで悩む必要は無い。


 オーガを目視、距離は二十メートル弱先。

 火魔法による強化は完了、スキルの身体強化も起動済みだ。構えは良し、初段は一気に距離を詰めてオーガの体を真っ二つにする。その後に残り六体の相手を行うだけだ。


 得物持ちは四体、その内の一体を狙う。




「ふぅ……」


 呼吸は整え終わった。

 イメージも整え終わっている今、残りするべき事は一つだけ……。


「斬ッ!」


 敵の視界内に入って暴れるだけ。

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