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第2話 賢者、強敵を探す

 今日の目的は帝国側と王国側の丁度、半分くらいに位置する森の深部だ。そこにいるオーガとかを倒してコアを集める……っていうのを、目標としている。魔物の強さと人形の性能的に、これくらいの目標が一番、丁度良さそうなんだよなぁ。


 この僕専用ナイト……もとい、人形には……いや、この子くらいには名前でも付けておくか。同じく人型の人形……同じ読み方のせいでややこしいけど、似たような見た目の人形は他にも多くある。それらと区別するためにも名前は必要だろう。


 とはいえ、本物はネームレスの癖に偽物には名前があるとは……ジョークにしては割と面白い部類だと思うよ。……やっぱり、ネームレス・ヒュポクレティなんてカッコつけた名前は辞めておくべきだったか。でもさ、カッコイイ名前にしたかったんだよ。それに名乗ってしまった以上は取り返しがつかないし。


 ギゼン……それだとそのまま過ぎるか。

 素直に黒ずくめだからクロとかでもいいけど……それならギゼンの方が被らなさそうで好きだ。安直だけどクロとギゼン組み合わせて……黒瀬ギン、とかならカッコイイんじゃないか。うんうん、それは良さそうだ。


 命名しよう、君は黒瀬ギンだ。

 って事で、名前も決まったのでギンを動かす。ぶっちゃけて言えば本気状態のギンで今の僕の三割くらいの強さだからね。ある程度の敵なら簡単に倒せる自信がある。集団戦ならガトリング砲が火を噴くだけだし。


 それにギンのコアへの付与は四つ付けてある。

 まず魔力操作、これは当たり前だけど僕の魔力とギンを直結させるために付けた。そしてギン自体に人間と同じく魔力を制御できる機能も付けてある。簡単に言えば周囲にある魔力を少しづつ取り込んで自分の魔力にする、みたいな能力だね。これのおかげで僕から魔力を送らなくても魔法を放てたりもするから便利な機能だ。


 次に空間魔法、これは当たり前だけど僕の異次元に作ってある倉庫と連結してあって、倒した魔物とかはギンを通じて僕のもとへと飛んでくるようになっている。一々、ギンを戻して素材を手に入れなくていいから楽でいい。


 三つ目に隠蔽、これはギンが周囲の人間にバレないように、そしてバレても逃げたり誤魔化したりできるように付けておいた。言っては何だけど傍から見たら不審者そのものだからな。黒ずくめの顔が見えないフードの男とか、同じバスとかにいたら確実に避ける自信がある。


 最後に闇魔法、これは隠蔽を見破った相手に対して隠蔽以上の隠匿能力を使えるようにするために付けたけど、最後の方では声とかを出せるようにする目的で付与を完了させてしまった。敵かもしれない相手でも味方になる可能性はゼロではない。そのための会話機能だが……どちらにせよ、無いと困る魔法ではある。


 まぁ、本来ならどれだけ高性能なコアでも四つのスキルの付与は難しいだろうけど……そこは元賢者にかかれば余裕だったよ。というか、元の体の時は最大で十五個まで付与させた事もあったし。


 何事も経験と知識よな、そしてこの世界においてはイメージ能力が全てを凌駕する。イメージ能力が数字で、そこから四則計算を覚えていくみたいな感じだ。四つの付与ができない人達は中学校時代の因数分解で転んでいるみたいなところかな。


 それに付与した能力はどれを取っても最上級レベル。恐らく僕がこんな芸当を行えると知ったら多くの国が囲い込みに来るんじゃないかな。……権力に興味は無いから完全拒否をするつもりだけど。


 それで……今で丁度、森の中間あたりか。

 ここら辺にいるのはオーク種の進化系統であるオークリーダーやオークナイト、それと時折、自然発生でオークジェネラルやオークキングとかが現れるらしい。後者に関しては一度しか見た事が無いから何とも言えないけど。


 それに現れたオークジェネラルはアルによって倒されてしまったからなぁ。いや、その時は人形の強さ的に倒せなかったから良いんだけどさ。それでもオークジェネラルの素材は欲しかった。だって、オーガよりも強い分だけ高性能だし。


 なので、ここでは常時、マウスが五体だけ森を駆け回らせている。オークジェネラルが見つかれば良し、見つからなければ足を踏み入れた存在の情報が手に入るから良し……監視役がいて悪い事は何も無いからね。


 一応、通り道にいたオークリーダーやオークナイトは数体だけ倒してある。まぁ、ここら辺は経験値が多めではあるからさ。倒しておけば僕のレベルアップにも繋がるし、素材も高値で売れるから一石二鳥だ。


 ギンを飛ばしてから十分程度、ようやく深部の入口付近に到着した。かなりの速度があるのに割と時間がかかってしまったよ。それだけ遠いと言えばそれまでだけど……何かしらの方法ですぐに行けるようにしても悪くないかもしれない。


 ただ、そこら辺は後々って事にしておこう。今は深部にいる魔物を狩って素材を集めるのを優先しないといけないな。ここだったら人が来る事も滅多に無いから多少は気楽にいてもいい。まぁ、仮にいたとしたらかなりの手練だと思うけど。


 それでもギンには勝てないとは思う。

 いや、今日が初めての起動だからどこまで設計上の力を発揮できるかとかは分からないけどさ。それでも僕の力の一割でも使えたら割と無双できる気がするんだよなぁ。少なくとも数値だけなら、あの時の盗賊の頭は圧倒できる力があるし。


 まぁ、壊されそうだったら転移させて自分のもとへ戻すだけだから別にいいけどね。ギンを通したとしても十秒間、それだけ時間を稼げたら転移を行うための魔力操作は行える。だから、予想外の敵と出会ってもそこまで問題は無いんだよなぁ。


 風魔法展開、魔法名『風之探知エアー・ソナー』。

 超音波と小さな風の流れによって探知系スキルですら引っかからない敵を炙り出す魔法。……とはいえ、万能では無いけどね。ただ、あるのと無いのとでは雲泥の差だ。現に大方の魔物の位置は把握できたし。


 魔力量からして……最初は中間あたりから狩っていくか。そこら辺でギンの性能を確認しながら徐々に強い敵にシフトしていくって感じで。少しだけ異質な魔力もあるから……それも追々、戦いに行きたいな。


 ああ、少しだけ楽しみになってきたよ。

 力を見せてくれ、僕だけのギン。

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