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第12話 賢者、憤怒に燃える

 最初にマウス達に家に戻るように命令を飛ばしておく。森にいる二体だけは探索に出したままだ。連れていこうとすれば時間がかかるだけだし、マウスだけで何とかしないといけない。


 とはいえ、マウス一体でもオークを倒せるだけの力がある。それが二十体もいれば時間稼ぎとしては十分だろう。何と言っても予備戦力まで出すわけだからな。


 だが、やるのなら絶望を与えなくては。

 僕の好みとしてでは無い。単純に盗賊共は僕の逆鱗に触れてしまった、ただそれだけの事だ。どんな理由があれ、僕の生活圏を脅かすというのであればいくらでも相手をしよう。ましてや、相手はアル達がいない時を突くような愚劣な盗賊共だ。


 正義だ何だと言い訳を作る理由も無い。

 盗賊相手にはやるかやられるか、そのどちらかしかないって、よく分かっている。何度も悪人を正そうとしてきて、そして裏切られてきた。だから、アイツらにかける情けなんて少しも無い。


 まずは……マウス達に闇魔法を付与しよう。

 それが済んだら突撃開始だ。前線は主にオークのコアのマウスに任せ、後衛をゴブリンのコアに任せる。数にしてオークが十二、ゴブリンが八だ。大きく戦闘能力が変わるわけでは無いが細かい命令を出しやすい分だけオークの方が使い勝手が良い。


 まぁ、盗賊如きに細かい指示は必要無いが。

 出す命令はただ一つだけ……敵を食い荒らせ。


 もちろん、僕のイメージの中にイリーナや他の家にある物は含まれていない。あるのは見た事のない存在への一撃、しっかりと村人の顔はフィアナとの散歩で確認しているからな。下手に村人へ攻撃する事は無い。


 最前線を走るマウスの視界を共有する。

 なるほど、確かに黒ずくめの見た事のない人達だ。各々、ナイフや剣を持っているあたり多少は金もあるのだろう。……だが、甘い、甘過ぎる。僕の住む家に足を踏み入れた時点で逃げ場は無いと思え。


「何だ! コイツは!」

「罠かもしれません!」


 おいおい、大声をあげるってマジか。

 普通は敵に気が付かれないように小声で情報伝達とかをするはずなんだけどな。……まさか、村人の中に盗賊がいるとかか。いや、それならマウスで情報を得ている時に何かしらの異変は感じられるはず……。


 となれば、相手は村人上がりとかか。

 時折、盗賊の中には村人として食っていけなくて盗賊になる人達がいた。それが俗に言う村人上がり、でも、それにしたって構え方がしっかりしているというか……得物も普通より良さそうなんだよなぁ。


 まぁ、詳しい事はどうでもいいか。

 捕まえて情報さえ抜け出せれば後は殺してしまえばいい。そういう姿はイリーナには見せられないし、さっさと殺さないといけないな。このままだと五分もあれば着くだろうから……その間は遊んでいてもらおうか。


 六体で適当に飛びかからせてから残り六体を足元でチラつかせる。どうにかして叩き切ろうとしているみたいだけど無理だね。前衛を張る十二体には風魔法を付与させているし、後衛を狙おうとしたならば前衛のマウスに噛み付かれる羽目になる。


 もちろん、後衛を無視する事もできないが。


「何! 魔法だと!」

「大丈夫です! ただの風槍(ウィンドランス)程度!」

「あ、馬鹿野郎……!」


 うーん、本当に馬鹿がいたんだな。

 盗賊の一人が後衛に向かって突撃したせいで全ての風槍が当たってしまった。動き的に全てを弾き切ろうとしたのだろうが……いや、別にいいんだよ。見方を変えれば仲間のために盾になったようにも見えるからさ。


 だけど、高々、風槍と馬鹿にされたのは気分が悪いなぁ。どこまで行っても下級の魔法がベースとなって大きな魔法に変化するんだ。それに風槍とかSランク級の魔物が相手でも使える魔法だぞ。それを蔑ろにするとか、じゃあ、お前は魔法を扱えるのかって話で……。


 はぁ、相手をするだけ無駄か。

 魔法を詳しく知らない人に良さや強みを語ったところで理解してくれるとは限らない。それこそ、アニメの良さを語ったとしても好みとかで拒否されたりするのと一緒だ。コイツとは好みが合わなかっただけ、以上!


 まぁ、その本人は勝手に死んでいくだろうし……放っておけばいいかな。あ、いや、陣形を整えて男を守るような体勢を取ったぞ。うーん……内側でポーションでも飲ませているのかな。


 はぁ……本当に溜め息しか出ない。

 盗賊とはいえ、多少なりとも仲間思いなところはあるんだな。そういう気持ちをどうして他の人達に向けてやれないのか。……そんな事を考えるだけ無駄だって分かっているけどさ。


 だから、殺してしまうんだ。

 僕も他人に優しくして踏み躙られたからな。こういう人間に優しさを振り撒いたら自分の首を絞めるってよく知っている。死ぬべき人間はいないとはよく言ったが、対して生かす価値も無い人間だってごまんといるんだよ。


 コイツらは……その中の八人ってだけだ。




「な! 攻撃方法が急に……!」

「狼狽えるな! 所詮はネズミ! 当たったところで大したダメージは……!」


 大したダメージは……なんだい?

 元賢者の僕が予想するに続けたかった言葉は「大したダメージは無いから陣形を崩すな」かな。でも、お生憎と君達が思うようなネズミとは違うんだよねぇ。全て僕の命令で動く完璧な傀儡、それらを含めてヒトガタって名前にしたんだ。


 僕がネズミ達に付与した闇魔法は『刪除ファイル・ポイント』とか名付けたっけ。これも僕が考えた魔法の一つで……簡単に言えば最大体力と魔力を一定時間、下げる効果だよ。つまり、一撃でも貰えば回復したところで全快しなくなる。


 そして……死にかけの盗賊君は数回では済まない程に人形達の攻撃を食らっていたよね。そんな人にポーションを上げたらどうなるかなぁ。……そう、大して回復せずに終わってしまう。


 本来なら時間稼ぎ程度にしか考えていなかったんだけどなぁ。僕はどうやら敵を強く見積もり過ぎていたみたいだ。いや、奈落を攻略するにはその考えの方が重要視されるか。……でも、こんなに簡単に済んでしまうと少しだけイラついてしまうよ。


 予想通り守りの陣形を取ってくれた。

 こうなったら本格的に詰みだ。内部の人間を守るために外側に立った人間達から徐々に倒れていく。それも血なんかを出さずに、苦しみながら倒れていくんだ。そこら辺を何も考えずにしてくれるとは……いや、盗賊相手には相応しい倒され方ではあるか。


 さてと、タイミング良く着いたな。

 ではでは、僕の姿を見た時に盗賊達はどんな反応をしてくれるのでしょうか。楽しみだなぁ、折角、他の強い人達がいないのを見計らって攻めてきたのにねぇ。僕のような赤ちゃんに再起不能にされたと分かればどんな反応をするのか。





 ……本当に楽しみだ。

もう少しで一章が終わる予定です。その後に閑話を軽く書いて本編とも言える奈落攻略の二章に入ります。それと次回か、その次くらいに女性キャラを出す予定でもあります。好まれるようなキャラかどうかは分かりませんが……。

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