002話 ギルド試験
*テドラス
「…100000!」
私はあれからずっと筋トレをしていた。物理攻撃と魔法などの特殊攻撃の両立をする為だ。魔法は幼い時からずっとやっていたから、今は筋肉を育てたい。
「いやー、腕立て伏せキツかった〜!でもこの筋トレが明日の為になるっていうなら俺はまだまだやれますね…!」
二番幹部のディーナはあの時からずっと私と筋トレをやっていた。3500年前から一緒にやってたけど、一緒にやってくれる幹部全然いないからめちゃ嬉しい…!もうディーナ第一幹部にしちゃお。
「よしディーナ、腕の強化の為にボクシング行くぞ」
「行きましょー…魔王様、先に言っておきますけど、本気で殴らないで下さいよ」
「大事な第一幹部を本気で殴ったりはしないから、さ、行くぞ!」
「待って、俺いつから第一幹部になったんですか!?」
*クロム
「ここが村から一番近い東の王国『コアブルー』か。綺麗だな」
「特に滝とか迫力があるね!」
コアブルーは『蒼天之滝』とかいう観光名所がある人気の王国だ。滝の名前が水星だから綺麗さは期待してもいいと思う。
「じゃ早速、宿屋にでも…」
「ちょいと待ち、先ギルド行くんじゃなかったの?ギルドなんたらとかやる為に…」
「アネルくん、ギルド試験ね。言えてないよ」
「ギルド試験…あ、やらなきゃな。完璧に忘れてたわ…アネル、マノン、ありがとな」
当初の目的をここに来る前に決めていたんだった。最近物忘れが酷くなってきたな…どうしよ。
「じゃ、俺たちは少し用事があるから受注頼む」
「オッケー!このマノンちゃんに任せときなさいっ!」
マノンにクエストの受注を頼んで、俺とアネルは魔法陣に飛び込み、用事があるところへ向かった。
「悪い、待たせたな。試験内容はなんだったんだ?」
「えっとね〜、薬草を100束集める…だけだね」
「すんごい雑用感満載な試験だな」
試験内容につっこむ。もっとさ、討伐系の試験ないの?ギルド試験受けにきたんだよ。薬草集めるだけって…
「まぁ、薬草集めも重要な仕事だからさ、ね?」
「…すぐ集めて不満顔で渡さない?」
「う、うん」
マノン、言葉返しづらかったよな…すまん。
*マノン
「薬草と雑草の区別がつかない…クロム少しだけ…ってうぉっ!?何だこの薬草の数!」
もう100束以上は作れそうなぐらいむしられた薬草があった。
「…ねぇクロム、これ大丈夫?雑草入ってたりは…」
「してないと思うぜ。雑草と薬草は形が違うからな」
そう言われたので、もう一度周りの草を見てみる。
「…いや、やっぱ区別つかんよ?全部雑草にしかみえない…いいや、私はクロムが集めたの束ねるね」
「いいのか?感謝です!」
「いいよいいよ、これぐらい〜。マノンお姉さんに任せんしゃい!」
「俺とマノン同い年だよな?」
*クロムとマノンは17歳で同い年です。
「おっわったぁ〜!」
「お疲れ様。じゃ、早速帰って不満顔で渡そうぜ」
まだあのこと恨んでたんだ…まぁ、試験としてはなってたからいいんじゃない?見分けるの大変だったし。
「うん、私も少しつかれちゃ…」
ズシンッ…!
突然地面が大きく揺れた。後ろでは大きな鼻息が聞こえてきた。
恐る恐る後ろを見ると、巨大な竜が私たちを睨んでた。
*クロム
俺たちは竜を見た直後、全速力で逃げた。何でって、逃げなきゃ死ぬじゃん。
「何で?何でなの!?魔王軍の魔物ならともかく、竜って何なの!!?」
「落ち着けマノン!竜なんて魔王に比べたらどうってことないだろ!」
「魔王の顔知らないくせに」
「夢で見たから知ってる…はず!ってか、つつくとこそこなの!?」
こんな茶番をやりながら逃げてると、開けた場所に出た。そこで俺は竜の方を向いて立ち止まった。
「…もしかして、戦うの?」
「逃げてても仕方ないからな。ここでアイツの息の根止めてやる」
マノンが呆れて俺を見た。まぁ、そうなるよな。でも倒さなきゃ王国に被害が出る。
「マノンは先に王国戻ってろ。絶対俺は帰ってくるからな」
「…わかった。でも、最低限やれることはやらせて。トラップ仕掛けるとか…」
「なら、アイツにバレない様になんか仕掛けてくれ。ただ、竜に毒は効かないからな」
「オッケー、じゃあ私はやることないみたいだから先に戻ってるね〜!」
「…」
マノンさんカムバァァック!!やることないみたいって言わなかった?言ったよね!凄くいいサポートを期待していた俺がバカだったぁぁぁ!!
「ハァ…まぁいっか。さっき親父からもらったスキルでなんとかするか」
冒険者試験を行う前
「親父、久しぶりだな」
「おぉ、クロムとアネルじゃないか。よく来てくれたな」
親父の名前は勇神アネル。『神帝』の内の一人だ。おとぎ話とかで出てくる神とか、そーいう感じの人だ。なかなか人里に降りないから、よく俺が天界まで足を運ぶことになってる。ちなみに母は人間です。
「…で、今回俺たちを呼んだワケって…」
「渡すものがある、ついて来い」
真面目な親父は滅多にみない。俺が魔王討伐に出るって言ってからずっと真面目モードに入っているままだ。
「魔王は3500年の月日を経て復活を果たし、化け物の様な体が人間の体になったと聞いた」
「弱体化したって事か?なら余裕…」
「だが、油断はするな。まだ魔王のチート体質はそのままだ」
「魔王がチート体質!?」
主役ならともかく、魔王がチート体質って話は、あまり聞いたことがない。
「じゃあ、どうやって…」
「案ずるな。私が今すぐお前をチート体質にしてやる」
俺が…チート体、質?
「私が持つスキルを3つ授ける」
「待って、そんな簡単にチート体質になれるの?驚きのあまり硬直しちゃったんだけど…」
「簡単だ。アネル、パソコンあるか?」
「あぁ、あるけど…何に使うの?壊さないでよね」
「壊さないから、ね?少しは親父のこと信用して」
親父の信用の無さ…可哀想でみていられなかった。
「アネルは私の作業を見ててくれ。この先クロムにこれをやるかもしれないからな」
「おけです」
「クロムはチート体質になる為の実験サンプルとなってくれ」
「息子を実験サンプル呼ばわりするな」
親父はそのあと黙々と作業をした。俺の足元にType-Cみたいなのブッ刺してチートスキルを送っていった。ブッ刺されても、蚊が刺す感じだったから痛くはなかったよ?
…なんでType-C知ってるかって?親父から聞いた。なんで親父が知ってるかって?知るか。
「…終わった」
おっ、こんな茶番してる間に終わったのか。
「そんじゃ、どんなスキルが入ったかみますか」
New 無限魔力
New 魔法製作
New スキル製作
「…チートすぎん?」
文字表記からしてなんか凄いのが3つもあった。
「無限魔力は、その名の通り魔力が無限にあるってことだ。私のイチ推しスキルだ。次に魔法製作、これも名前通りだ。最後のスキルせi…」
「これも名前通りでしょ?」
「…そうだ」
アネルさんや、少し親父に優しくしてくれや…さっきから頑張ってるんだから、本当に少しでいいから、ね?
「…親父、ありがとな。このチートスキル使いこなして、魔王討伐してくるからな。親父は天界の仕事頑張れよ」
「クロム…あぁ、私も頑張るから、絶対死ぬなよ」
「あぁ!」
「…スキルは持ってるけど、魔法持ってなかったからなぁ。アネル、魔法を即成できないか?」
「デキナイコトモナイ…」
「よし、じゃあ伸びる剣の魔法作ってくれ。」
「は?ちょちょちょ、もう少し詳しく言えない?」
「詳しくか…じゃあ、っうぉっ!?」
竜が不意打ちをしてきた。竜も頭使うんだな。なんかこう、ただ単に暴れ回ってるしか出来ないないのかと…ってのはいいから早く言わないと!
「よしアネル、詳しく言うからな!一回しか言わないからな!」
「はよ言え」
「剣の刃が伸びて高速で剣が飛ばせる、そんな魔法!」
「やっぱわかんねー!まぁ要は剣を創生したいってことだな!」
「あぁ!」
やっぱわかってんじゃねーか!流石俺の相棒!
「因みに、魔法の属性は?」
「あるなら神属性!」
「えっと、神属性神属性…あったぞ!」
「よし、早速作ってType-Cで送り込んでくれ!」
「オッケー!そんじゃ装着!」
もうできてたのか。天才かよw
特に身体に何かあったっ訳もなく魔法の製作及び移行が完了した。
「どれどれ…『勇神之一閃』?何て読むの?」
「えっと?『アネルフラッシュ』と書かれてるな。アネルって勇神のことだよな。アネルの一閃って名前まんまじゃん」
「まぁ、これで戦えるから問題はなし!」
俺は剣を出して竜の方向に投げた。
「剣は投げるものじゃねぇぞぉ!」
「だって、突っ込んで燃やされたりされるの嫌だもん」
「だったら球型の魔法作れば良かったじゃん」
刃が伸びて長くなった剣が、勢いを増して竜に直撃!だが竜は俺を睨み続ける姿勢をやめなかった。口から得意技(?)の『焼却砲』を出そうとした。強すぎる…!
「…しぶといな」
「クロムさん、魔力無限にあるから複数出して弾みたいに当てたら?」
その手があった!アネルには感謝しかない!
「よし、適当に乱射だ!『勇神之一閃』!!」
…まではよかった。
チャージが終わった竜は、俺めがけて『焼却砲』を撃ってきた。ごめんマノン、俺シンダワ…
「『中盾』!」
…と思ったが、謎の防御魔法で助かった。振り向いた先にいたのは、マノンだった。
「ギリギリセーフ!」
「マノン!?どうして、薬草は!?」
「もう渡しといたよ。いつまで経っても帰ってこないから、心配して…」
「…なぁ、愚痴は言っといた?」
「言うわけないじゃん」
デスヨネ…
「とにかく、サポートは私がなんとかするから、クロムは攻撃に一点集中!わかった?」
「あぁ、そんじゃ行ってくる!」
マノンの『中盾』と俺の『勇神之一閃』があれば、この場はなんとか乗り切れるはず…
「ん?竜が動かない…どうして?」
「きっと反動だろ、さっきの技の」
あぁ、『焼却砲』での反動か。ラッキー!それでも対抗しようと鋭い爪を下ろしてきた。諦めの悪い奴め!
「マノン、頼んだ!」
「オッケー!『中盾』!」
鋭い爪の攻撃も、マノンの『中盾』があればノーダメージ。ってか、マノンいつそんな魔法覚えてたんだろ。ま、いっか。
「よし、次で最後だっ!!『勇神之一閃』!!」
約15個の剣が竜に刺さり、やっと息の根が止まった。
「…終わったぁ〜」
「お疲れ様、クロム」
「へへ、ありがとさん。そんじゃ早速試験の愚痴でも…」
「「言わんでよろしいっ!!」」
二人に止められた。
*???
「たすけ…て」