001話 悪夢
*クロム
〜世界は、私が支配する…!〜
突然誰かの世界支配宣言が耳に入った。村の人々も聞こえた様で、パニックになってる。
「クロム、この声誰なの?」
「知るわけないだろ、マノン。」
俺の元まで走ってきた幼馴染のマノンも少し怖がっていた。
〜さぁ、我が混沌に呑まれ苦しむがよい!〜
また同じ声が聞こえた。混沌?訳がわからん。どうせタダのイタズラだろ…
…と思っていた。
直後大量の魔物が空から、地面から、色々な方向から押し寄せてきた。村の人達は対抗することすら出来ずにどんどんやられていく。逃げても無駄だ。魔物が魔法で攻撃をするからだ。
あたり一面は一瞬で火の海へと変わっていた。
「……ッ!!」
俺達も必死で逃げていたが、途中瓦礫の下敷きにされて身動きが取れなくなっていた。
マノンも俺と一緒に下敷きになっていた。
「…クソッ!」
まだ17年しか生きてないんだぞ!やりたいことだって沢山あったのに…こんなところで死んでたまるか…死んで……
〜魔王は近いうちに復活を果たし世界を破滅に導きます。どうか、世界を救って下さ…
「グウワァア!?………夢?」
*マノン
なんだったんだろ、あの悪夢は…クロムや村のみんなまで私と同じ夢みた!って言ってるし…やっぱなんか変だなぁ。
「ねぇクロム、あの夢もしかしたら本当に起こるんじゃ…」
「…マノンの言う通りかもな。あんな夢信じる方がおかしいけど、少し遠くの王国が魔王幹部とか名乗る相手一人の手で滅亡したんだと。」
「なら、一刻も早く魔王を倒さないと…!」
「それなら、一緒に旅するか?」
はい?今なんて…旅を、する?唐突すぎない?
「俺、相棒と一緒に魔王討伐の旅に出ようと思っててな。」
「相棒って、アネルくんのこと?」
「クロムの相棒といったらオレ以外いないだろ!」
クロムの左肩にアネル君が現れ、座った。
妖精のアネルくんはクロムのサポートとかできるすごい子。イケボ(自称)らしい。でもアネルくんはイケボだと私は思ってる。アネルって名前が「勇神アネル」と一緒なのがいつも気になってる。
「で、マノンは行くのか?逆か?」
「…正直に言うと怖くて、魔王なんかに勝てるのかなって思ってる。でも、何もしないのはなんか私っぽくないし嫌だ。だから私も行くよ、魔王討伐に!」
そう言うと、クロムはクスッと笑った。
「答え方がマノンらしいな。じゃ、荷物まとめて行くぞ。」
何よ、答え方がマノンらしいって…ま、いっか。
「あ、そうだ。マノン、旅立つ前にジョブは決めとけよ。何もなってなかったら即死間違い無しだからな。」
「わ、わかってるよ!」
*クロム
翌日、俺とマノン、アネルは村を旅立った。
「…で、ジョブは何にしたんだ?」
俺がマノンに聞こうとしたことをアネルが先に聞いた。
「サポートとか向いてそうだったから『トラッパー』のジョブになったよ〜!」
「トラッパーか、罠とか張れるのか?」
今度は俺がマノンに話す。
「…張れる様に頑張る!」
やっぱ現時点ではまだ張れないかー!
…しゃーないよな。ジョブ自体が初めてだったしな。
「…まぁ頑張れよ。」
「うん!」
罠を全然張れない俺にはそう言って勇気付ける事しか出来なかった。
*テドラス
「…何だ?この変な感じは。」
私が目覚めたらおかしな体になっていた。角や尻尾はあるのに、私の素晴らしい筋肉が、へなちょこそうな筋肉になっていた。
「どうしてだ、何故私はこんなへなちょこボディに…」
「魔王様は人間になられたのです。」
二番幹部のディーナが私に教えてくれた。
人間の体…だと?
「しかし、人間の体になって尚ステータスはそのままで、筋肉量はそれ程変わりませんでした。流石魔王様です!」
ディーナは褒め上手だ。後からディーナに聞いた話だが、人間の体は動きやすいのだとか…まぁ人間の体も悪くない。しかし、私の筋肉はどうすれば…
「ま、まぁ今はこの体を鍛え上げて、誰も歯向かえない様にしてやる…それが今の私の目標、でいいか?」
「素晴らしい目標です!では、俺も魔王様の目標を達成する為に日々のサポート頑張ります!」
ディーナの褒め言葉に鼻の下が伸びる。もうディーナ一番幹部にしてもいいかも。
「よし、そうと決まれば早速筋トレだぁあ!」
「おぉぉぉ!」
世界滅亡のために俺達は特訓に励んだ。