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第9話  〜ウィリアム編②〜

そこに書いてあった報告書はわたしが今まで屋敷の家令のマークからきていた報告書とは全く違っていた。



『アイシャ様は5歳から屋敷ではほとんど一人で過ごすことが多くなった。

奥様であるジュリー様は社交に忙しく、友人達と海外などに旅行へ行っていることが多くあまり屋敷に戻っていない。

アイシャ様は食事を貰えず家令や侍女長達に「金食い虫は働け、お前は要らない存在だ」などと言われ続けている。そして食器洗い、片付け、掃除洗濯をさせられて少しでも休むと食事抜きになることも多かった。

学園にも行かせて貰えず服なども最低限しか与えて貰えない。

外出は禁止されていた。

アイシャ様に使われるはずのお金は使用人達が着服していてアイシャ様には家庭教師すらついていない。

勉強に関しては兄の教科書を渡されて自身で勉強するように強制されていた。


王太子殿下の婚約者になったが、屋敷の者は馬車に乗せず、毎日1時間歩いて王宮に通わせた。

王妃から虐待紛いの王子妃教育を受けて、歩いて帰るという毎日を送っていた。


王妃から虐待を受けていたことは周囲の侍女達がみていて証言している。


診察の結果古い傷跡から新しい傷やあざが多数見られる。

屋敷の者と王妃が暴力を振るっていたことは確証が取れている。


意識を失い倒れた時に心臓病を患いこのまま手術を受けなければ早ければ半年持っても数年の命と余命宣告を受けた。


手術はルビラ王国でしか出来ない。まだ我が国の医療技術では難しい。


本人の意思は手術を親には言えないのでこのまま死ぬ事を希望している』


など他にも色々書かれていた。


楽しく過ごしていたはずだ。

頑張って王子妃教育を受けていたはずだ。


わたしはこの報告書を握りしめて陛下の下へ向かった。


「陛下、これを読んでください」

報告書を渡している間に、わたしは部下達を呼んだ。


部下達を並ばせて


「叔父上から会いたいと先触れがあったと聞いている。だがわたしは何も聞いていない、誰だ!勝手に断っていた奴は!」


わたしは怒りに震えながら部下達を睨んだ。


「すみません、わたしです」


「わたしもです」


何人もが手を挙げた。


「どうして話をわたしに通さなかったんだ!」


「それは……王妃様がハウザー様から連絡がきたら握りつぶすように命令をわたし達全員受けておりました、すみませんでした」


みんな真っ青になって震えながら謝ってきた。


「王妃が命令?」


息子はわたしの後を追ってきてわたし達の会話を聞いていた。


「アイシャはずっと辛い目にあっていたんですね。僕は全く気づきもせず好きなことをして過ごしていました、アイシャは……僕、もう一度アイシャのところに行きます」


「わたしもこちらが片付いたら急いで戻る」


わたしは陛下ににじり寄って言った。

「陛下、王妃のしていたことをご存知だったんですね」


陛下は顔色を変えていた。この人は人が良い所があるが優しすぎてすぐに人の意見に流されてしまう。


「すまない、王妃は二人の婚約に反対だったんだ。無理にでも押し通したら大丈夫だと思ったんだがエリックを無理矢理に留学させて、アイシャを王子妃教育と言いながら虐待まがいの事をしていたんだ」


「ご存知なら何故止めないんですか?止めないならわたしに教えてくれればよかったではないですか!」


「そうなれば婚約は破棄される。エリックは幼い頃からアイシャが好きだったんだ。この婚約もエリックからの申し出をわたしが其方に伝えたんだ」


「でしたら王妃を見張っていてくださらないと駄目ではないですか!あの人の性格は貴方が一番ご存知でしょう?アイシャの体には傷痕がかなり残っているそうです、王妃のしたことは犯罪ですよ!それも倒れて寝込んでいたのにわたしには一切話がいかないように止めていたとは……悪質すぎます」


「すまない、アイシャがそこまで酷い状態だとは気づかなかった。だが、ウィリアムお前にも原因はあるだろう?報告書を鵜呑みにして娘に会おうとしなかったのはお前だ。きちんと屋敷に帰って娘の顔を見ていたらわかったことも多かったのではないのか?」


陛下のその言葉にわたしは何も言い返せなかった。

だが、陛下の責任逃れにも腹が立った。









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