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第26話

元国王は自らの過ちを反省して、離宮で一人寂しく過ごすことになった。


愛する元王妃は怪我は治ったが、国庫にまで手を付けた贅沢三昧な生活とアイシャへの虐待などから収容所へ入る事が決まった。


貴族用ではなく平民用の牢へ入る。

国王と離縁したが、実家から受け入れ拒否されて平民となった。


その収容所では女性も炭鉱で重労働をさせられることになっている。


力仕事などしたことのない王妃が耐えられるわけがない。王妃の体も心も壊れ始めていた。


それでも看守達は厳しく元王妃へもムチを打ち働かせた。


自分達の税金を贅沢のために使った元王妃を許す事が出来なかったからだ。



そして、アイシャを虐待し続けた使用人達は……


マークと侍女長は貴族を虐待し暴力を振るったことから処刑された。


アイシャに使用人の仕事を押し付け一緒になって虐めや虐待をした使用人達は一部のものは処刑され残りは収容所へ入れられてもう出てくることはない。


アイシャを守るためにとは言えアイシャへ罵倒したりしたもの達は温情でお咎めなしとなったが、アイシャが亡くなったことを聞きみんな泣き崩れた。


助けてあげることが出来なかった悔しさと、アイシャを見守ってきた彼女への愛情はウィリアム達よりも遥かに大きかった。

10年以上守り続けたのに、助かるはずだったのに亡くなってしまったことが辛く悲しかった。


それでもアイシャのために公爵家で働き続けた。

それが自分達の戒めになると思い、苦痛の中でも逃げずに最後まで働く事を誓った。


ジャンは、国王になり国を守る立場になった。


本当は医師として人を助ける仕事に就きたかった。


しかしその夢は途絶え今は元王妃の散財で傾きかけた財政を立て直すのに必死だ。


でもジャンは落ち着いたら我が国の医療体制をもっと強固なものにして、技術を発展させてもっと治るはずの病を増やしていこうと決めていた。


エリックと共にこの国をアイシャのような犠牲者を増やさないようにするつもりだ。

お金がなければ手術も出来ない国にはしたくはないと誓っている。


そのためにも今は国の財政を安定させる事が重要だ。





そしてリサとカイザは、アイシャが亡くなってから葬儀に参列してから、帰国した。



「お父さん、アイシャちゃんはやはり死を選んでしまいましたね」


「そうだな」



カイザはアイシャが亡くなる前日のことを思い出していた。

ベッドの上で息をするのも苦しそうにしていたアイシャ。


「アイシャ、君が望むなら急ぎルビラ王国へ連れて行き手術をしよう。今ならなんとか助かる」


「カ、カイザ様……わたしはもう死にたいのです。人に………迷惑ばかり……かけて、生きる……のが…辛い……」


「生きていれば辛くなくなる。明るい未来もあるんだ」


アイシャは首を振り、

「わた……し、もう楽……になりた…い」


リサはアイシャを見て聞いた。


「アイシャちゃんは生きることより死を選ぶの?」


「…………はい」


アイシャは死を怖がっていなかった。

もう受け入れていた。


「今なら『癒し』の魔法で生を繋ぎ止められるわ。そしたら手術も出来る。でもね、アイシャちゃんが生きたいと思わないと手術は成功しないし魔法の力も弾いてしまうの、お願い、生きたいと願って!わたし達に助けさせて」


でもアイシャは首を縦には振らなかった。


「……リサ…さ…ま………わた……し楽……にな……りた………ぃ」


そう言ってアイシャはそのまま眠り続けた。

いつ心臓が止まってもおかしくない状態のまま。


そう誰かを待っていたのかと思われるように。


次の日もアイシャの容態は偶に息苦しそうにしながらも眠り続けて意識を戻すことはなかった。


リサは『癒し』を僅かにかけることに成功してもほとんどの魔法をアイシャは撥ね除けて、今の状態より良くなる事がなかった。


本当はアイシャの関係者の誰かがアイシャを見つけられればすぐに助けるつもりでいた。


いや助かるだろうとリサ達も安易に思っていた。


まさかアイシャの心がここまで壊れていて修復出来ないとは思っていなかった。


だからこそ誰にも見つからず三日間も経ってしまったのだ。


『隠』の魔法で本当にアイシャを思う事が出来れば見つかるようにしていたのに必死で探し回るのに見つけられなかったのはアイシャが見つかることを拒否していたからだった。


そして見つけたのは小さな男の子のキリアンだった。


キリアンはアイシャを見て、アイシャの一番の願いである『死』を与えてあげた。


アイシャの声は誰にも聞こえなかったと思うが、魔術師であるリサとカイザ、そして『死』を与えたキリアンにだけは聞こえていた。


「ありがとう」と嬉しそうに感謝の言葉を残して死んでいく姿を。


「おねぇたん、ねんね、ちた」


キリアンはアイシャがやっとゆっくり眠る事が出来たと言ったのだとリサとカイザは思った。










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