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第25話

アイシャの死から半年後、ウィリアムは宰相の役を降りて息子に公爵を譲り、領地でひっそりと暮らすことにした。


妻のジュリーとは離縁した。


ジュリーは実家に帰るも自分の居場所はなく持っている宝石を売りなんとか一人で生活をするしかなかった。

何度息子に頼ろうとしても拒絶されて会うことすら出来なかった。


アイシャが死んだ時も


「アイシャが病気になるからわたしが悪者になるのよ。ほんと役にも立たない娘。迷惑でしかないわ」


と言った。


その言葉を聞いたルイズは、いずれこの人を消そうと決心した。


ただ殺すのではなく苦しめて苦しめて、殺して欲しいと思わせるくらいの地獄を味わってから殺す。

そう決めた。



まず手始めに、人に頼みジュリーにいいお金になる投資があると言って全財産を投資させて、逃げさせる。

ジュリーは無一文になり、借金を抱える。

そして、奴隷商人にジュリーを売り渡す。


ジュリーはまだ美しい間は娼婦として働かせて、使い物にならなくなれば牢に入った犯罪者達の慰み者として売られることになっている。


まだこの計画を実行していないので、息子が相手をしてくれないと文句を言い続けている。


「母に対してこの態度は一体どうしてなの?わたしは貴方を産んであげたのよ!大事にして欲しいものだわ」

と、言っている。


ルイズはそんな母親を冷たい目で見ていた。


自分もこの人と変わらない。アイシャに対して見て見ぬふりをしてきた。

罰せられるはずの自分がこうやって公爵になり幸せに生きることが罪悪感でしかなかった。


自分への罰は何をするべきか……死ぬのは簡単だ。罪悪感の中で生き続ける方が死ぬより辛い。


食事も美味しくないし寝れば悪夢。

今は領民達のために仕事に忙殺されてひたすら働くしかない。そして過労死するのもいいかなと思い始めている。


ウィリアムは領地で、使用人もおかずに一人で小さな家に暮らし始めた。


もちろんお湯を沸かすことも料理を作ることも出来なかったが、アイシャは使用人のような事を5歳からさせられていたのだ。


自分も少しでもアイシャの身になって生活することにした。


自分もあとを追って死のうかと思ったが死ぬのは簡単だ。

生きてアイシャへの罪悪感と後悔の中で生きる事を選んだ。


毎日が辛く悲しかった。


食事もアイシャに合わせ一日一食。

無一文で生活して、近くの農場で手伝いをしたりしてお金を得てそれで暮らしている。


貴族の公爵で宰相まで務めたのに今は平民の生活より貧しい。


それでもアイシャの生活に比べたら、ムチで打たれることも怒鳴られることもないのでマシなんだと思うと罪悪感で寝ることも出来ない。


アイシャは王子妃教育の間、勉強と屋敷での仕事、夜になると予習復習をしてほとんど寝る時間がない中8ヶ月間を過ごしたと聞いた。


もちろん使用人と王妃にムチで打たれながら。


それに比べれば自分はまだまだ甘い。


ウィリアムはひたすら自分を追い込む生活を続けた。 


エリック殿下はアイシャが亡くなった後、母親の全ての悪を聞き、父親が知っているのにそれを見過ごしてきた事実を知り、自ら継承権を破棄した。


今はジャン国王陛下の下、臣下になり補佐として働いている。


本当は王宮内から出ていくつもりでいた。

だが、ジャンとゴードンに止められてしまった。


「アイシャは貴方を恨んではいなかった。貴方はアイシャのためにも国を良くするために此処に止まるべきだと思う」


ジャンの言葉に頷くしかなかった。


アイシャが死に抜け殻になったエリックには目標が必要だった。


アイシャのために国を良くする。


そのためにひたすら働くこと、それがアイシャへの贖罪だった。



エマはいつも通り王宮内にある診療所で看護師として働いている。


キリアンも3歳になりおしゃべりも上手になった。


アイシャのことをキリアンは偶に思い出すのか「おねぇたん、げんきかな?」とか

「これおねぇたんすきだったの」とか言って

話している。

でも会いたいと泣くことはなかった。


キリアンには不思議な力があるのだろうか。


それともアイシャに対してだけだったのだろうか。


行方不明のアイシャを見つけて、死にかけたアイシャを逝かせてしまったキリアン。


ゴードンは何も語らず何も言わなかった。


アイシャを助けようとしたが助ける事が出来なかった事を悔み、一層医師として患者たちに向き合い続けた。


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