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黒い女

作者: 茜 まふゆ



窓の外に黒い女がいる。


毎日夕方になりカーテンを閉めようとするといつもそこには黒い女がいた。


全身に黒い服をまとっていて、髪は長く、表情は分からない。


最初は気味が悪くてカーテンを閉め、外が暗くなりカーテンをそろりとめくってみると、そこにはまだ女はいた。


いよいよ怖くなって警察に電話をかけたが、特徴を伝えようと窓の外に目をやった時にはそこにもう女はいなかった。


それからというもの女は毎日毎日窓の外に立っていた。


これは、多分、あれだ。

幽霊とかそういうたぐいのものなのではないだろうか。


そう結論づけるのにそう時間はかからなかった。


女はいつも話しかけようと窓から少し目をはなしたすきにいなくなってしまう。

そんな事は人間にはできない。


不思議と怖くはなかった。

俺にも霊感があるんだなとしか思わなかった。


思えばここは家賃も相場より安く、もしかしたら事故物件なのかもしれない。


だがあの女がいる事で特に何も困た事はないし、どうでもよかった。


ただ一つきになる事と言えばあの女が現れるようになってから身の周りで少し不思議な事が起こるようになった。


会社へ出勤すると昼休みをとっている間に残っていた仕事が終わっている事がある。


あれ?ここまで終わらせていたか?


いままではほぼ毎日残業をしているくらい忙しかったのに最近は定時に終わり家へ帰っている。


誰かが代わりに仕事をしてくれたのだろうか。

それとも、いよいよオレがぼけてきたのか。


不思議だが仕事が早く終わるにこした事はない。

早く終わったからといって他の仕事を誰かからふられる事もなく、オレは誰よりも早く家へ帰っていた。



仕事の帰り道、今日はスーパーへ寄った。


昨日冷蔵庫をみたら食べ物が何もなかったからだ。


柄にもなく料理は得意だった。


食材をみて回り何を作ろうかと考える。


豚肉が安いな、レタスも安くなっている、冷しゃぶにするか……。


久しぶりにカレーもいいな。

うまいし早く作れる。ちょうど腹もへって...。


ん?腹がへってない?


食べる事が好きなオレの楽しみは仕事終わりに自分の好きな物を自分で作って食べることだった。


なんだか今日は腹がへってないな・・・


何も食べる気にならない。


結局、何も買う事もなくスーパーを後にした。



窓の外には今日もあの女がいる。

一体あの女は何なんだろうか。

どうしてオレの前に現れるのだろうか。



休日、朝のんびり起きて大きくあくびをする。


さて、今日は何をしようかな。

いつも残業で忙しくて休日は1日中寝ている事が多かった。


最近は定時で帰っているし、今日は身体もすっきりしている。


何をしようか...何…オレは何をしていたっけ?


いくら忙しいとはいえ、ゆっくりとした休日はあった。その時、オレは何をしていた?


思い出せない。

そう言えば最後に飯を食ったのはいつだったか。

腹がすかないので忘れていた。

いつからごはんを食べていないのか。


心がざわざわしてきた。


不安にかられ、外へとびだした。


いつもと変わらない風景、日常….のはずだ。


なぜだ? なぜこんなに心がざわつくのか。

まるで自分はここにはいてはいけないような…。


いてもたってもいらなくなり実家へ向かった。


母に会おう。

わらにもすがる気持ちでついた実家窓の他に母がみえた。

テレビをみていた。


「おか….」

次の瞬間、激しい頭痛におそわれた。


頭の中でまるでビデオテープが再生されたかのように映像が流れた。


そうか。オレは….あの日、オレは家へ帰ってテレビをみていて、ひどい頭痛に襲われて意識を失って...そうか、そのまま….。


その日の夜、いつものように窓の外にいた女に話しかけようと窓をあけた。


女は消えなかった。


「迎えに来てくれていたのか」


「はい」


「そうか…..」


オレは少し考えこみ


「なぁ、オレの遺体をみつけてもらえるようにしてくれないか」


「お望みのままに」


オレは差し出された手をとった。


"次のニュースです。昨日○○市のアパートの一室で男性の遺体が発見されました。遺体は死後..."



あの世への霊柩車一




fin

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