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もしもゲームのライバルキャラが全員転生者だったら~未プレイ主人公と既プレイ転生者の鬱ゲー攻略~  作者: 紗沙
魔法師団編

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第87話 エルフを狙う、謎の球体

ユグドラシルから、東の方角へと歩みを進める。

メンバーは私たちの他に、ライネスさん率いる近衛部隊の一部とアインさんが貸してくれた軍の一部だ。


かつてないほどの大人数で、東へと向かっている。

東の森は天気が悪く、ユグドラシルとは草木の生態も異なるらしい。

まだ目的地に着いてはいないものの、雨が降り始め、湿気も増してきた。


「なんだか……気味が悪いですね……」

「東の森は雨が多いのよ。でも、ここまで雨が降ることは珍しいわ」


ついに出てきた霧まで見ながら、私は尋ねた。

ライネスさんは周りを警戒しながら、訝しげに答えてくれた。


進めば進むほど、霧はますます濃くなっていく。

雨のせいだと思うが、足場もぬかるんで悪くなっている。

はぐれないようにしなければ。


「エヴァ、手つなごう」

「え?う、うん」

「ルナも」

「うん!」


右手をエヴァと、左手をルナと繋ぐ。

霧も深くなってきて、視界が悪い。

こんな状態ではぐれてしまっては大変だ。


決して周囲が不気味でちょっと怖いからではない。

2人が心配なだけだ。


「隊長。記憶が正しければ、この先には泉があったはずです。こんな天気ではどうなっているか分かりませんが……」


同じく周囲を警戒していた近衛隊の副隊長の女性エルフさんがライネスさんに情報を提供する。

この雨と霧では、泉は水が溢れていても不思議ではない。


それにしても、どんどん霧が濃くなっていく。

他の皆は大丈夫だろうか。そう思い振り返る。

ロゼリアさま達は、特に変わった様子はなかった。


「あの……兵士さん、大丈夫ですか?」


しかし、その後ろに立つ兵士さんは顔色が悪い。

大丈夫かと尋ねると、その兵士さんは笑ってくれた。

けれど、その笑顔は元気がない。


周りの兵士さんを見てみると、他にも体調不良の人は多そうだった。


「すみません、少し休憩しませんか?」


流石にこのまま進むのはまずいと思う。

そう思い、提案するとライネスさんは頷いた。


「そうね。体調を可能な限り整えましょう」


その言葉でユウリィやロゼリアさま、ムースが兵士さんの回復を始める。

私も参加するものの、人数が多く、完全には回復しきれなかった。

結局、都度回復をしつつ、私たちは進むことになったのだった。















「なに……これ……」


泉へと到着した私達。

けれど目の前の光景を見て、ライネスさんは唖然とした。


広がるのは、どす黒く染まった泉。それは沼のようにも見える。

その周りには魔法の痕跡や、地面に突き刺さった矢、斬撃の跡。

ここで戦いがあったようだ。


霧が、さらに濃くなる。

いや、濃くなるというよりも、色が変わる。

白から、黒へと。


「う……あ……」

「なんだ……これ……」


周りの兵士さんがうめき声をあげる。

私も、気分が悪くなる。私だけでなく、エヴァ達も同じようだ。


黒く濁った泉から、気泡が立ちのぼる。

なにかが、泉の中に居る!


水をかき分けて浮上し、そのまま空中で静止したのは、黒い球体だった。


「なんだ……あれは……」


魔物?それとも兵器?

そんなことを思った瞬間、黒い球体はいくつもの触手を伸ばしてきた。

それらが、一斉に私たちに襲い掛かる。


「っ!?」


とっさにマリアを展開し、光の魔力を流し込んで触手を防ぐ。

動きは速くはない、威力も高くはない。ただ、数が多い。


「うぁ……!」

「まずいぞ……これは……」


兵士さんが次々とうずくまっていく。

大きな外傷は見受けられない。けれど顔色は悪く、体を満足に動かせないようだ。


(毒?麻痺?……それだけじゃない。いろんな状態異常にかかってる!)

「掠るだけでも毒や麻痺を受けるようです!完全に避けるか、受け止めてください!」


ロゼリアさまも同じことに気づき、大声で警告する。

あの球体が、おそらくエルフさんが行方不明になった原因だろう。

なんとかしなければ。


(あれ?)


そのとき、私は違和感に気づいた。

最初に黒い球体から攻撃を受けた。

けれどその後、一度も攻撃を受けていない。


触手に目を向けると、それは何かを恐れるかのように攻めあぐねているように見えた。

兵士さんには襲い掛かっているのに、私には襲い掛からない。


「光の魔法を中心に使ってください!理由は分かりませんが、苦手としているようです!」


そうか!触手が攻撃できないのは、マリアで護られている私を攻撃すると傷つくから。


(それなら、なんとかできる!)


駆け出し、マリアを振るい、触手を切り落とす。

効いている!いい感じだ!


「ウリア、援護するね!」

「ウリアくん、やってくれ!」


ムースとユウリィの援護を受けて、私は前に出る。

この状況を何とかするには、あの黒い球体を倒さなくてはならない。


飛び上がり、空中で静止する黒い球体にマリアを振り下ろす。

刃は、球体にしっかりと傷跡をつける。

震えている球体が、痛みを感じているようだ。


「ウリア!」


しかし黒い球体は次の瞬間に、まるでウニのように棘を吐き出した。

空中に居た私は、ルナに抱えられて球体から距離を取る。

それと入れ替わるように、エヴァが前に出た。


「ファイアボール」


エヴァお得意の魔法が、黒い球体を襲う。

光の爆発は、球体の形を崩させるほどのダメージを与えた。

しかし、その一部がまた元の球体に戻ろうと、うごめく。


「仕掛けが分かれば簡単ですね」


その球体を取り囲む、光の剣。

それが一斉に球体に突き刺さり、穿ち、その形を変えさせる。

ロゼリアさまの魔法により、形の崩れた黒い球体の中に、赤い光が見えた。


あれが、おそらくは弱点。

そう思ったときに、その球体に黒い光が突き刺さる。

目線を向けてみると、エルフの兵士さんの一人が手のひらを向けていた。


(なに?あの魔法?)


見たこともない魔法。そして目に入る、唇を釣り上げた笑み。

嫌な予感がするのと同時に、黒い球体のうごめく速度が早まったことを感じた。


「なにをして――」

「ぐぁ!」


声を上げようとした瞬間、エヴァが跳んだ。

彼女は一瞬でエルフの兵士の後ろを取り、オーバーライトの刃の背で首筋を強く払った。

衝撃で目を見開いた兵士さんの体が、地面に崩れ落ちる。


それと同時に、黒い球体の激しい動きが収まった。


「ロゼリア!!」

「はい!」


好機とばかりに飛び上がるロゼリアさま。

光の剣の魔法を使用しつつ、露見した赤いコアのようなものに、彼女はR・O・Fを突き刺した。

続いて、その体が黒い球体に触れる前に、ルナがロゼリアさまに抱き着いて引きはがす。


再び私たちの元へと帰ってきた二人。

それに安心すると同時に、黒い球体が歪な動きを始める。

縦に、横に、様々な形に苦しそうに変形する球体。


「まずい!」


ダメ押しとばかりにテスタロッサのボウガンで赤い球体を狙撃したライネスさん。

彼女はそのまま、左手に持つ細剣を地面に突き刺した。

岩の壁がせりあがり、私たちを覆う。


そして響く、何かが弾ける音。

岩壁に響く水音。その音はやがて消える。


ゆっくりと岩壁が地面に戻っていく。

泉の上には、もう黒い球体は浮かんではいなかった。


「終わった……の?」

「黒かった霧も色が薄まっています。おそらくは」


ロゼリアさまの言葉に確認してみれば、確かに霧の黒さも消えてきていた。

黒く濁っていた泉も、今は紫色になっている。


「なんだったの、あれは?魔物?けどあんなの……」

「その答えは、そこにいる人たちが教えてくれると思うよ」


ライネスさんの言葉に返事をしたのはルナだった。

彼女の狼の耳が、ピコピコと動いている。

見つめているのは、木々。


けれどその木の後ろから、男の人たちが出てくる。

数はかなり多い。けれどそのいずれもが、私達を恐れているように思えた。


「あなたたちの仕業ですか?」

「ち、違う!……俺たちはただ依頼されただけで……」

「依頼されただけねぇ……その割にはユグドラシルの軍の兵士にまで紛れ込ませて、大分準備が良いね」


なにかをしていたエルフの兵士を拘束したエヴァが冷たい声色で告げる。

それなら、この人たちは。


「ここでエルフの兵士を捕まえて、どこかに連れて行って、そして売る。そんなところ?」

「な、なにをいって……」

「いや、そうとしか思えないでしょ。この状況じゃ。まあ、話は捕らえた後にでも聞かせてもらえば――」

「逃げるぞ!!」


エヴァの言葉に顔を青くした男の人たち。

彼らは脱兎のごとく、逃げ出した。

それぞれが思い思いの方向に駆け抜けていく。


エヴァが、ロゼリアさまが、ルナが冷たい目でそれを見る。

この状況で逃げられると、本気で思っているのだろうか。


「なんだぁ?もう終わってるじゃねえか」


不意に響いた声。

そして地面から伸びた鎖が、男たちを一人残らず絡めとる。

誰一人逃すことなく、全員を地面に縛り付けた。


私たちが来た方から、2人の男女が近づいてくる。

男性は白髪に黒いメッシュ。黒のコートに身を包んだ、目つきの悪さが特徴的だった。

一方で女性は薄いピンク色の髪を2つにまとめた、優しそうな印象だった。

ゆったりとしたフレアスカートに、白いコートが似合っている。


男性からは威圧感を感じるが、女性からは話しやすさを感じる。

そんな対照的な2人だったが、男性は女性を気遣っているように見えた。


「うげ……鬼師匠……」


その二人を見て、エヴァがこれまでにないほどいやそうな声を出した。

エヴァの師匠ということは。


「よう馬鹿弟子。元気そうじゃねえか」

「またそんなこと言って。エヴァちゃんのことを心配してたじゃないですか」

「いや、それはエリアが心配してただけだ。俺じゃない」


この人が、魔王【世界】。

四人目の魔王と、思いがけない邂逅を果たした瞬間だった。


「面白そう!」

「続きが気になる!」


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