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もしもゲームのライバルキャラが全員転生者だったら~未プレイ主人公と既プレイ転生者の鬱ゲー攻略~  作者: 紗沙
魔法師団編

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第84話 キルシュ名物、プラメニクス温泉

キルシュ国の首都、パンテオンを出てからしばらくして、ようやくプラメニクスの街が見えてきた。

国を東から西に移動するようなものなので、かなり時間がかかった。


「あれが、プラメニクス」


馬車から見えるプラメニクスは、パンテオンほど大きな都ではなかった。

けれどダイメリスよりは大きく見える。

副首都とも呼ばれているらしく、温泉が有名な旅行地らしい。


馬車で街の中に入り、キルシュ軍の駐屯所で馬車を降りる。

地面に足をつけると、寒さで体が震えた。


「さ、寒……」


思わず両手で腕を押さえようとしたが、その前に肩にローブがかけられた。

振り返ると、ムースが微笑んでいた。


「プラメニクスはアリュート絶海が近いから、寒いんだ。暖かくしてね」

「ありがとう、ムース」


お礼を言って袖を通す。

急な気温変化に戸惑ったけれど、少しずつ暖かくなってきた。

西の方を見ると、海が見えた。


アリュート絶海。

キルシュ国の西にある、氷河。人を拒む、極寒の大海。

さらにその先には、ロスヴェイル国があるとも言われている。


アリュート絶海を越える人はいないので、本当にその国があるのかどうかも分からないが。


(ロスヴェイル国……か)


以前、ムースが神樹に詳しい話を聞いてくれた。

彼女経由で、私たちが倒さなくてはならない魔王アインについて少しだけわかったことがある。

その一つが、魔王アインがロスヴェイル国に封じられているということだった。


いつか行かなくてはならない、未知の国。

そこを見ていると、右手を握られた。

ルナが私の右手を両手で包んでいた。


「えへへ、ウリア寒いでしょ?手握ってあげるよ」

「ありがとう、ルナ」

「…………」


無言で左手を掴まれ、両手でエヴァのポケットへと入れられる。

ぎゅむぎゅむと左手を握られながら、私に目を合わせようとしないエヴァ。


「エヴァも、ありがとう」

「……ん」


2人に連れられて、街を歩く。

雪が少し降っているが、道に大きく積もっているわけではない。

少し歩きづらいくらいだ。


しばらく歩くと、滞在する宿屋が見えてきた。

大きなつくりの建物で、西洋風の見た目は宿屋というよりも小さなホテルのようだ。


(ちょっと……楽しみ……)


私が楽しみに思っているのは、この宿に温泉が付いているからだ。

前世でも入ったことはあるが、あれは言葉にできない極楽気分を味わえる。

今から楽しみだ。


宿に入り、ロゼリアさまが代表して話をする。

その間、私たちはまだ見ぬ温泉に思いを馳せていた。


「ミストは来たことあるの?」

「この宿は……初めて」


キルシュ出身であるミストもこの宿は初めてらしい。

けれど、他の場所で温泉に入ったことはあるのだろう。


「でも……雪の中入る温泉は……格別……」

「そうですね。ユグドラシルにも温泉はありますが、雪の中というのは初めてです」


わくわくした気持ちを隠し切れないムース。

その一方で、ルナは身震いしてみせた。


「えー、でも寒いんでしょ?温泉に入るまでの間に凍えそうだよー」

「獣人のくせに寒がりなのね」

「いや、確かに耳やしっぽはあるけど、全身が毛に覆われてるわけじゃないから寒さは皆と同じように感じるよ」


苦笑いをするルナ。

それを見ていると、後ろから受付を済ませたロゼリアさまが合流した。


「終わりましたよ。部屋は2つ取りました。それと温泉ですが、アリア女王から通達があったらしく、特定の時間で貸し切りにできるようです。時間は選べませんでしたが、大丈夫ですか?」


提示された時間は遅すぎず、早すぎない、丁度よいものだった。

他の皆も、異論はないみたいだった。


ただ、誰が私と一緒の部屋になるかで、少しの間揉めてしまった。













暗くなり、しばらく経ったころ。

皆と待ち合わせをして、温泉へと向かう。


脱衣所で浴衣を脱ぎ、バスタオルを巻く。

私の横で着替えていたルナは、待ちきれない様子で入口に早足で移動する。


「あ、ちょっとルナ!急いだら危ないよ!」

「本当、はしゃぎすぎです」

「楽しみなのは、私達も同じですけどね」


私の左右に並んだロゼリアさまとムース。

その肌は白く、シミ一つない。

どちらも見ているこっちが恥ずかしくなってしまうくらいに美しい。


これで私と同じ年だというのだから、ちょっとずるいなと思ってしまう。


振り返ると、ミスト、エヴァ、ユウリィがバスタオルに身を包んでいた。

前から思っていたが、私の友人たちは美人過ぎないだろうか。

エヴァやミストに関しては可愛らしいという表現が似合うが。


気を取り直して、扉を開ける。

外になっていて、室内のお風呂というものはないようだった。

空気の冷たさに、体が震える。


すでに髪を洗っていたルナと合流し、体を清めた後、いよいよ温泉に入る。

ゆっくりと足のつま先でお湯に触れる。

露天風呂なので、お湯は熱く感じた。


(あ……温かい)


足を沈め、左足もお湯に浸かる。

そのまま少しだけお湯に入ったまま歩き、離れたところに腰を下ろした。

体の芯が、温まっていく。


「うーん!いい湯!」


同じように隣に座ったエヴァが伸びをする。

身に着けたバスタオルが落ちそうになって、慌てて押さえた。


「あ、ごめんごめん」


エヴァは苦笑いしながらタオルを押さえる。

お姉ちゃんは妹のガードが緩くて少し心配ですよ。


「最近忙しかったですから、疲れが抜けていくようですねー」

「本当……気持ちいい……」


ロゼリアさまが背を岩に預けてリラックスする。

ミストも首まで湯に浸かって、目を細めていた。

どちらも気持ちよさそうな表情をしている。

熱気で赤らんでいる顔が扇情的で、思わず目をそらしてしまった。


視線を空に向ける。

下から立ち上る湯気と、空から降ってくる粉雪。

そのコントラストが、幻想的に見えた。












温泉を出て、自室に戻る。

公正なじゃんけんの結果、同じ部屋になったのはエヴァ、ムース、ミストだった。


『勝利の、チョキ!!』


そう高らかに宣言し、店員さんに怒られてしまったエヴァを見たときには思わず笑ってしまったくらいだ。


私は今、ベッドに腰かけている。

右手はムースに握られていて、濡れた髪はリフィルに乾かされていた。


「これで……終わり」

「むー、もう一回……」

「まだまだ……負けない……」


ミストとエヴァは部屋に備えてあったボードゲームで遊んでいた。

前世でのチェスのようなものなのだろう。

説明書を読んで一戦始めたが、ミストが勝利したようだ。


テスタロッサの天才技師だけあって、ああいう頭を使うゲームは強そうだ。

二戦目に入った現在も、エヴァは悩んでいるが、ミストはいつも通りだった。


「お嬢様、終わりました」

「ありがとう、リフィル」


こっそりとついてきてくれているリフィルにお礼を言う。


「リフィル、次に向かう先はユグドラシルだけど……」

「そうですね。残念ながら表立って一緒に居ることはできないと思います。けれど、見守っていますよ」


リフィルからすると良い思い出のないユグドラシル。

彼女も思うところがあるらしく、キルシュよりも姿は隠すとのこと。


「『戦乙女』なんて言われてるからね。リフィルさんを見て気づく人は軍の人ぐらいだけど、表立って行動しない方がいいと思う」


ムースも賛成のようだ。

それにしても、ユグドラシルか。

思い出すのは、ジラルド王子のこと。


学園で少しだけ話したことがあるソラス先輩や、ジルヴァ長老は良い人だ。

けれども彼との間に良い思い出がないので、楽しみというほどではない。


(それに、神樹もあるんだよね)


ムースを間接的に苦しめた原因である神樹。

彼女以外の人は神樹と会話をすることはできないし、ただの大きな樹としか思わないだろう。

ただ、ムースと神樹が会話して、なにか変なことにならなければいいなと思う。


「また……勝ち」

「えぇ……行けると思ったんだけどなぁ……」


勝敗が決まったエヴァとミストを見つつ、私は小さくため息を吐いた。


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