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もしもゲームのライバルキャラが全員転生者だったら~未プレイ主人公と既プレイ転生者の鬱ゲー攻略~  作者: 紗沙
魔法師団編

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第80話 すべてを滅する赤白い光

『ユティは魔法の準備を、他はイノシシ型の魔物の意識からユティを逸らすんだ』


アメリアさんの声が響く。

キルシュ国軍第7席ユースティティア・リットンハイム。

行きの馬車で聞いた彼女の特徴は、対単体における最強の魔法。


発動に時間がかかるものの、ひとたび発動すれば、そのオリジナルの魔法は敵を必ず撃滅するという。

そんな彼女は身の丈ほどある大きな杖を手に、詠唱をしている。

白をベースとした杖の先端の赤い宝玉に、光が収束していく。


「前線での戦闘は任せて!」


そう叫び、ルナが突撃。

すかさずユウリィ、ロゼリアさま、ムースが補助魔法をかけた。

闇の魔力を纏ったルナの一撃が、正面から魔物を受け止める。


すかさず跳んだのは妹のエヴァ。

彼女はオーバーライトの力で魔物の背後を取り、その背を火の魔法を付与した剣で焼き払う。

魔物は苦しそうな顔をするけれど、ダメージは小さそうだ。


「エヴァさん!」


部屋を覆うほどの木の根が、上空から魔物を押さえつける。

その上を、エヴァは素早く走る。

剣を魔獣に突き立てながら走り、跳んで私たちの元へと戻ってきた。


かなりの広範囲に及んだ魔獣への火の斬撃。

だが、それも。


「聞いていた通り、剣での攻撃はあまり効かないね。それに、傷も塞がりはじめてる」


魔物は苦しそうなうめき声をあげるものの、エヴァがつけた傷は緑の光を発して塞がっていく。

ルナが最初に衝突したときに出来た傷は、もう見えなかった。


魔力の流れを追ったのか、魔獣の目が、ユティさんを捉えた。

細められた目。そして次の瞬間、魔物はユティさん目がけて突進する。


『来るぞ!』


響くアメリアさんの声。

あんな巨体がぶつかったら、ひとたまりもない。


私はとっさにユティさんの前に出て防御の構えを取る。

あの巨体を受け止めきれるとは思わない。けれど、少しは威力を押さえることもできるはずだ。


「させるか!」


しかし、そんな私の前に白銀が入り込む。

テスタロッサを展開したヴァイスさんは、魔物の突進を大剣と刀で受け止めた。

彼の目の前には強固な光の防御魔法が、展開している。


(すごい……光の魔力……)


思わず私は見とれてしまった。

ヴァイスさんのテスタロッサは白銀の甲冑に大剣と刀というものだ。

その姿からして、エクセラ級なのは間違いない。


組み合わせ的には、私のマリアの上位互換とも見える。

使われてる魔力は光属性だけ。

けれどその量も、質も、今まで見たことがないほどに高い。


これが、キルシュ国軍の席次の実力。


「リース!頼む!」

「『神よ、子羊を救い給え(クロス・ブレス)』」


リースさんがテスタロッサを使用する。

彼女の姿は何も変わらない。

どんな効果なのか、よくわからない。


「しゃあ!!」


けれど、ヴァイスさんは魔物を押し返した。

あれだけの巨体を弾き、後退させる。


『準備完了!全員、退避!』

「斜線から外れろ!!」


アメリアさんの声が響き、ヴァイスさんが叫びながら横に跳ぶ。

とっさのことで動きが遅れたが、次の瞬間には、感じ慣れた風が私を優しく運んでくれた。

ありがとう、リフィル。


「行きます!」


ユティさんの足元には複雑な魔法陣が展開。

そして杖の先にも、真ん中の空いた魔法陣が何重にも展開していた。

準備が、整った。


次の瞬間、魔力の奔流が廃城を揺らす。

それは前世で見たレーザー砲のようなもの。

赤と白で組み合わされた巨大なそれは、まっすぐに伸びて魔物に直撃した。


肉を焼き、焦がすような臭いが鼻に届く。

強大な魔力。そして強力すぎる威力。

攻撃力だけなら、クロムの魔法にすら匹敵するだろう。


それは、長い時間をかけたものの、黒い獣を焼き殺すには十分すぎた。


苦しそうな鳴き声を上げて、魔物は床に倒れ伏す。

倒れ伏してもユティさんの攻撃は止まらず、魔物を焼き続けた。

やがて魔法が消えたとき、そこには煙を出す黒焦げの魔物だけが残っていた。


『ごくろう、任務完了だ。灰にならなかったのは初めてだが、生体反応はない』

「ユティさん、大丈夫ですか!?」


ムースの声に振り返ると、彼女は心配そうにユティさんの背中をさすっていた。

彼女は床にしゃがみ込み、深く息を吐いている。

顔色は悪く、調子も悪そうだ。


「ユティの魔法は特殊でな。一回撃つとしばらく動けなくなるんだ。専用のテスタロッサも、壊れないっていうのが固有能力ってくらいだからな」


テスタロッサを解除したヴァイスさんがユティさんに近づく。

確かに、あれだけの威力の攻撃ならすべての魔力を使用してもおかしくはない。


壊れないテスタロッサというのも、納得だ。

ヒビキの使っていた『刀』の杖版ということだろう。


ヴァイスさんはユティさんを軽々と持ち上げる。

お姫様抱っこというものだ。

ユティさんは文句を言いそうなものだが、彼女は疲れ果ててヴァイスさんに体を預けていた。


「本当、小さいのによく頑張ってくれる」


そういったヴァイスさんのユティさんを見る目は、娘を見るように穏やかだった。


(それにしても、すごい魔法。私達よりも年下だと思うけど、あれが席次……)


黒焦げの魔物を見ながら、私はさっきの魔法を思い返す。

あれだけの威力、私はもちろんのことロゼリアさまでも防げないだろう。

防御に特化しているムースなら、防ぎきれるのだろうか?


そう思えるくらいには強力な魔法だった。

そしてそれは、他の席次も同じ。


(光の適性が高いであろうヴァイスさんに、リースさん)


リースさんの力は不明だが、発動と同時にヴァイスさんが魔物を押し返したのを見るに、敵に対して影響を及ぼすものだろう。

力を弱くするとか、そういった力な気がした。


(まあ、なにはともあれこれで任務――)


焼きあがった魔物から沸き上がる、灰色の煙。

その中に、黒い小さな欠片が混じっている。

それは天井に向けて、舞い上がる。


黒い煙は、モノを燃やしたときに出る煙だと思っていた。

いや、実際に魔法が直撃したときはそうだったんだろう。

けれど今の煙は、黒く、禍々しい。


あれは、煙じゃない!


「この魔物、まだ生きてる!」


とっさに叫ぶ。

その声でエヴァが、ムースが、そしてヴァイスさんが気付く。


「皆!まだあの魔物は死んでいない!」


ゆっくりと体を起こす黒い獣。

魔物の体を覆う紋様が赤く光り輝く。

死んだはずなのに、倒したはずなのに。


「おいおい、嘘だろ?こっちはユティが戦えないんだぞ!」


再び床にしっかりと足をつけ、獣は咆哮する。

その大きさは先ほどと変わらない。

けれど、身にまとう雰囲気は、先ほどとはまるで別物だった。


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