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もしもゲームのライバルキャラが全員転生者だったら~未プレイ主人公と既プレイ転生者の鬱ゲー攻略~  作者: 紗沙
魔法師団編

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第79話 キルシュ軍の第1席

キルシュ国軍第1席のアメリアさんは、私たちを厳しい目で見つめている。


「協力する気はあるけれど、慣れあう気はないということでしょうか」

「ここは軍だ。学園ではない。いつまでも学生気分では、命を落とすこともある」


ロゼリアさまの言葉に、アメリアさんがしっかりと返答する。

彼女の言うことは合っている。合っているけれど、言い方というものがあると思う。


「ま、まあまあ、アメリア落ち着けって。ローズ小隊に依頼を出したのはアリア陛下の意志だ」


今までかしこまって話していたヴァイスさんが、砕けた口調でアメリアさまを宥める。


「構いませんよ。私たちはあくまでもキルシュ国の援助に来ただけです。任務が終わればこの国を去ります。協力をして、任務を素早く終わらせたいのは同じです」

「……任務について説明する」


私たちに厳しい態度のまま、アメリアさんは机の上の地図を示す。

それは、なにかの見取り図のようだった。


「これは、廃城の見取り図ですか」

「そうだ。そしてイノシシ型の魔物はここにいる」


アメリアさんが指さしたのは、廃城の最上階のフロアだった。

おそらく謁見の間のような場所なのだろう。


「諸君らにはこの階まで直進してもらい、イノシシ型の魔物を討伐してもらう。おそらく、この魔物がボスだ。他の魔物を討伐するのは容易だろう」

「なるほど。了解しました。それで、作戦の方は?」

「第7席のユティの特殊な魔法でイノシシ型の魔物を焼き払う。ただし、ユティの魔法には発動まで時間がかかる。その時間稼ぎをしてもらいたい」

「時間……稼ぎ?」


アメリアさんの言葉に、思わず返してしまった。

それはつまり、私たちの力を当てにしていないということでは?


そんな気持ちが顔に出ていたのか、アメリアさんは厳しい目で私を見た。


「これが最善の方法だ。キルシュ国の問題はキルシュ国を中心に解決したい。諸君らの力だけを当てにするわけにはいかない」

「…………」


彼女の言いたいことも分かる。

けれど、どこかしっくりと来ない。

周りを見てみると、ヴァイスさんは苦笑いをし、ユティさんはあわあわとしていた。

リースさんも頭を押さえている。


しかし、私の友人たちは特に気にしていないようだ。

ムースだけがむっとした顔をしているくらいか。

少なくともアリア女王と話をした時の方が緊張していたように思える。


「それにこれはイノシシ型の魔獣との戦闘データを分析した結果、導き出したものだ。ユティの魔法ならば、あれを倒せる。異論があるものはいるか?」


その言葉に、ロゼリアさまは私たちを見回す。

文句はあるけれど、異論はない。

ユティさんの魔法でイノシシ型の魔物を倒せるなら、それでいい。


「私たちはそれで構いません」


全員の反応を確認したロゼリアさまが、返事をする。

アメリアさんは深く頷いた。


「連絡はヴァイス、リースを通じて行う。2人にはすでに私の連絡用のイヤリングをつけさせている。準備が完了次第、向かってくれ。廃城に着くタイミングが分かり次第、連絡を入れてほしい」

「了解したよ」


アメリアさんはヴァイスさんだけを見て話を決める。

その目には、私たちはもう映っていないようだった。

話は終わったとばかりに、彼女は地図を再び眺めて考え込んでしまう。


少し不快ではあるが、この部屋に居ても仕方ないので、部屋を後にした。















それから数時間後、私たちは廃城へと馬車で向かっていた。

人数が増えたために、もう一台馬車を借りている。

私の馬車には、エヴァとロゼリアさまとヴァイスさん、ユティさんが乗っていた。

もう一つにはルナ、ムース、ミスト、ユウリィ、リースさんが乗っている。


「……お姉様、ちょっと機嫌悪い?」

「うん……ちょっとね」


先ほどのアメリアさんとのやり取りが気に食わなかった。

確かに、なれ合いをしないというのは分かる。

けれど、あんな突き放したような言い方をして、まるで居ないかのような態度を取らなくてもいいじゃないかと思ってしまう。


ロゼリアさま達は気にしていないようなので、強くは言えないけれど。


「申し訳ない。彼女も悪い人じゃないんです。ただ、アリア陛下があなたたちを当てにしたのが気に食わないみたいで……。彼女は愛国心が強すぎるんです」

「あ、いや、ヴァイスさんが謝ることじゃ……」


同じ軍のメンバーであるヴァイスさんに気を使わせてしまった。

よく見ると、ユティさんも目じりを下げてすまなさそうな顔をしている。


「それでも、彼女の戦術支援は長年の積み重ねがあります。そこは信頼しても良いかと。彼女も態度は悪いものの、あなたたちをわざと危険にさらすような人ではありません。やることは少ないものの、報酬が良い仕事だと思っていただけるとありがたいです」


確かに、よくよく考えてみるとキルシュ軍の席次の第1席なのだ。

彼女は彼女なりに考えがあるし、キルシュという国を守りたいのだろう。

私がエヴァ達が大切なように、彼女はこの国を想っている、ということだろうか。


「ヴァイスさん、私たちは協力者です。慣れない敬語は戦況で不利になります。その一瞬の隙が命取りになることもあるかもしれません。今回に関しては、敬語は不要です。あ、私は癖ですので」


ロゼリアさまの言葉に、ヴァイスさんが目を見開く。

そういえば、彼は作戦指令室でアメリアさんに打ち解けた感じで話しかけていた。

あれが彼の素なのだろう。


彼はガシガシと頭を掻くと、満面の笑みを浮かべた。


「いやー、助かるぜ!敬語苦手なんだわ!」


あまりの変わりように、私は目を丸くしてしまった。

一方で、隣に座っていたエヴァは噴き出した。

ロゼリアさまも笑いをこらえている。


「ヴァイスさん!急に変わりすぎです!」

「えー、なんでだよ。いつもの俺だろ?」

「そうですけど、段階っていうものがあると思います!」


ユティさんとヴァイスさんが言い争いを始める。

それがいつもの二人なのだろう。

こちらの方が、さっきのヴァイスさんよりは好感が持てる。


まるで親子のように言い合うヴァイスさんとユティさんを見ながら、私はそんなことを思った。
















数日後、馬車はキルシュの北の廃城に到着する。

少しの肌寒さを感じながら、人の気配のない寂れた城に目を向ける。

流石にパンテオンの王城ほどではないが、この廃城もかなりの広さだ。


きちんと城壁に囲まれ、城の体をなしている。

探索をするだけで、時間がかかりそうだ。


「聞こえるかアメリア。廃城に着いたぞ」

『聞こえる。早かったな』


ヴァイスさんが右耳のイヤリングに触れながら、パンテオンにいるアメリアさんと会話をする。

馬車で聞いたアメリアさんのテスタロッサは『蒼海の司令塔ザ・ブルー』。

ミストと同じ領域型のテスタロッサで、作戦本部を作り出すものらしい。


彼女はヴァイスさんやリースさんがつけているイヤリングで連絡を取り合う。

さらに彼女のテスタロッサを使用することで、踏破しようとするダンジョンなどの見取り図や敵の位置、味方の強さなどが分かるという。


ただし、敵味方の情報に関しては詳細な強さまでは分からないのだとか。

この力を元に、キルシュの席次の人たちは合同でエーデルハイムダンジョンを攻略したらしい。


『イノシシ型の魔獣は、城の正面に入って、階段を登り切ればいい。途中魔物も確認できるが、そちらの戦力ならば問題はないだろう。ただし、イノシシ型の魔獣は強い。油断するなよ』


廃城の見取り図が見えているであろうアメリアさんが指示を出す。

こうして距離を開けてみると、彼女も指揮官としては有能なのだと思い知らされる。

少なくとも私がキルシュの兵士だったら、彼女のような指揮官に憧れるかもしれない。


そんなことを感じながら、私たちは廃城の中に入る。

中は荒れてはいたが、元々が頑丈なつくりをしていて、崩れるような心配はなかった。

大きな階段を、ゆっくりと登っていく。


階段の途中に居る小さな魔物を、何の問題もなく撃破していく。

足を進め、階としては四階になるのだろうか。

私たちの前には、大きな扉が。


『その先に居る。作戦は以前伝えた通りだ。敵の動きに合わせてこちらも都度指示を出す。健闘を祈る』


アメリアさんの言葉を聞いて、ヴァイスさんが扉に手をかける。

大きな、鉄で作られた扉。

その片方を開けて、中へと入る。


予想通り、中は謁見の間のような作りだった。

その奥に、それは居た。


「嘘……大きい……」


思わず呟いてしまうほどの巨体。

真っ黒な毛に覆われ、獰猛な瞳が私たちを捉える。

口の横から生えた牙には、乾いた血が。


その体に複雑な紋様が走る。

首には、巨大な鉄の首輪。


そのすべてが、それがただの魔物ではないことを物語っていた。

なんだ……これ。


(すごい威圧感……)


それはゆっくりと体を起こす。

これは、キルシュ軍でも持て余すはずだ。

私はもちろんのこと、エヴァや、ロゼリアさまでさえも目を見開いている。


「行くぞ!」


ヴァイスさんの声に、全員がテスタロッサを展開する。

私もマリアを展開した。


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