第75話 ついに突入したRPGパート【エヴァSide】
エディンバラ皇国の魔法師団本部。
その廊下をお姉様と一緒に歩きながら、私は学園での出来事を思い返す。
(クロムにヒビキにレア……3人の魔王)
原作では学園編で戦う魔王は1人、リフィルの残滓だけだ。
他の魔王に関しては名前すら出てこない。
にもかかわらず、すでに私達は3人の魔王と出会っている。
そのうち倒せた魔王はクロムだけ。
ヒビキやレアもそうだし、【原始】や裏ボスである魔王アインも倒さなくてはならない。
(一方で、こっちの戦力は数としては十分。でも実力としてはまだ足りない)
原作ではウリア、ユウリィ、セリア、攻略対象の4人で戦う。
だがこの世界ならば戦力を増やせる。
私達だけでも、6人居る。
けれどそれを考慮しても、魔王を相手にするにはまだ実力が足りていない。
「いよいよ話がまとまったのかな?」
ふと、隣にいるお姉様が聞いてきた。
まとまったというのは、ムースとルナの件だろう。
あの2人も転生者。この後のRPGパートの重要性は理解しているはずだ。
その2人が小隊に入るのは、祖国を説得してでも行いたいことだろう。
「ネクステスとユグドラシルに話をしないといけないから、長くなるって言ってたけど、そろそろじゃないかな」
というか、そろそろ動き出さないといよいよもって時期的に問題が生じる。
この数か月で出来ることは全てやったので、他国に出向かないといけないのだ。
「数か月経ったし。待ち疲れちゃったし」
「そうは言うけど、エヴァもロゼリアさまもたまにどこか遊びに行っちゃうじゃん」
「まあ、それと小隊としての活動は違うからさ」
「そうかもしれないけど……」
少し痛いところを突かれてしまう。
学園卒業後、待機している数か月で私とロゼリアは国内のとある場所に行っていた。
そこに求めているものがあるのを、私達は知っていたからである。
魔物が急に大量発生したそこは、原作ではロゼリアが対処に当たっていた。
それに合わせて私も参加したのだ。
そして魔物の大量発生の原因を倒し、隠された通路でアクセサリーを手に入れた。
そのアクセサリーは私のオーバーライトの剣の柄に鎖で結び付けられている。
エヴァラスのRPGパートでは、キャラクターの装備を弄ることができる。
とはいえ装備欄にあるのは武器と防具とアクセサリーの3つだけだ。
このうち武器はテスタロッサなので、今の私達にできることはない。
防具に関しては、実はこの世界では効果がない。
原作において、例えばウリアが甲冑を装備したところで、見た目が変わるわけではなかった。
それを元に、装備しても効果があるわけではないのだろう。
甲冑を着れば斬撃などは甲冑そのものによって防げるかもしれないが、動きが遅くなるといったデメリットが大きすぎた。
けれど、「アクセサリー」は違う。
アクセサリーは原作で見た目に反映されていた。
それが原因だと思うが、効果があるのだ。
例えば攻撃力が上がる指輪をつければ、少しだけ力を籠めることができる。
魔力が上がる指輪をつければ、魔法の威力が少しだけ上がる。
それゆえに、「アクセサリー」は装備する価値のあるものである。
ならば、原作を知っている身として、最強のアクセサリーを手に入れれば、今後の戦いを有利にすることができるだろう。
(本当……防具がステータスに反映されなくて良かった……)
人知れず私は安堵のため息を吐く。
理由はたった一つ。原作における最強防具は、それぞれのラスボス、EXボスのドロップ品だからだ。
ゲームクリア後に戦えるヒビキやクロム。
隠しダンジョンで過去の姿として出てくるリフィルやレアを倒すと「確率」でドロップする。
そんなもの、一つだって手に入れるのは不可能に近い。
けれどアクセサリーは違う。
アクセサリーは世界各地に最強のものが点在しているが、周回プレイ前提ではないのだ。
(それに……お姉様のアクセサリーのカケラも手に入れたし)
ポケットの中にある不完全な状態のアクセサリーに触れる。
時同じくして、魔法師団の総長室に到着した。
扉を開いて、中に入る。
中にはラインハルト総長の他に、ロゼリア達が居た。
この様子なら、話はついたのだろう。
「メンバーはローズ様を隊長にムース様、ルナ様、エヴァ様、ウリア様、ユウリィ様とする。またローズ様からの希望により、専属技師としてミスト様の同行を許可する」
小隊のメンバーは私達に、ユウリィ。
今の段階で考えられる戦力としては、最高のものだ。
ユウリィの動きが今後どうなるのかは、要監視といったところだが。
部隊の編成についての話をした後に、どの国の任務を行うかの話へと移る。
原作では、そもそもルートが決まっていた。
アズマを訪れた後にエディンバラに戻り、ネクステス、ユグドラシル、キルシュの順だ。
本来ならばその流れに従いたいところだが、アクセサリーの件を考えると変わってくる。
キルシュ、ユグドラシル、ネクステスで手に入るアクセサリーのうち、一番入手難度の高いものはネクステスのものだ。
だからこそ、初めからアクセサリー狙いならば、行く順番は。
「そうですね。キルシュから順に回っていきましょう。任務詳細については各国の王族の方に話を聞けばいいですか?」
全く同じ考えであろうロゼリアがキルシュからのルートを選択した。
これで再びエディンバラに戻ってくる頃には、各国での戦闘経験値と、全員分の最強のアクセサリーが効率よく手に入ることになる。
各国に行く順番は変わるものの、それぞれの国でどんな任務があるのか、どんな敵が待っているのかの情報は持っている。
そのために、そこまで影響はないと考えている。
時系列が少し変わることと、すでに変わってしまった原作の流れが気がかりだが、それでもアクセサリーの入手の方が優先だ。
まずはキルシュに向かい、任務を遂行。
そしてついでにハインズ用のアクセサリーを手に入れる。
目的をしっかりと確認しつつ、専用のアクセサリーの指輪がはまったロゼリアの指が示すキルシュ国の地図を見つめた。
【紅の至玉】
分類:アクセサリー
設定文:剣の柄に括り付ける鎖付きの宝玉。過去をしっかりと見つめる勇気と強さの象徴
攻略メモ:グラム専用アクセサリー。エディンバラ皇国中央にある湖の裏ダンジョン「埋没した遺跡」にて入手可能。グラムが装備できるアクセサリーの中では最高の性能を誇る。




