第74話 エディンバラ魔法師団の小隊として
学園卒業からすぐに私たちはエディンバラ皇国の魔法師団に入隊した。
皇国には2つの軍がある。
1つは騎士団で、この人たちは国内の警備を中心に行う。
もう一つが私たちが所属した魔法師団。
この軍は国内の有事にも出動するが、他国からの要請に応えることも多い。
そんな師団に入隊した私だが、入隊から数か月経っても活動を開始していなかった。
「いよいよ話がまとまったのかな?」
魔法師団本部の廊下を歩きながら、隣にいるエヴァに話しかける。
活動を開始できないのはエヴァも一緒だ。
「ネクステスとユグドラシルに話をしないといけないから、長くなるって言ってたけど、そろそろじゃないかな」
エヴァは私の質問に答える。
私たちが活動できなかった理由は大きく分けて2つある。
まず第一に、ルナとムースがエディンバラ皇国の魔法師団に入隊することを希望したからだ。
彼女たちは友人である私たちと、学園卒業後も一緒に居ることを希望した。
魔法師団にも別の国出身の人は在籍している。
けれどルナはネクステスの公爵家の娘。
さらにムースはユグドラシルの王族だ。
流石に「はいそうですか」と入隊できるわけではない。
2人は切望しているが、ネクステスとユグドラシルに話を通している段階だ。
そしてもう一つの理由は、彼女たちが私たちと小隊を組みたいと切望しているからだ。
魔法師団は入隊すると、小隊と呼ばれるものを組んで活動する。
小隊は4名から6名程度の少人数の部隊だ。
この小隊に、ルナとムースは参加を志願している。
そのため彼女たちの問題が解決しない限り、私たちは活動できない。
「数か月経ったし、そろそろな気もするけどなー。待ち疲れちゃったし」
「そうは言うけど、エヴァもロゼリアさまもたまにどこか遊びに行っちゃうじゃん」
「まあ、それと小隊としての活動は違うからさ」
「そうかもしれないけど……」
この数か月間、エヴァは時折姿を消していた。
彼女が急にいなくなるのはいつものことだが、相変わらず何をしているのかは教えてくれない。
まあ、エヴァのプライベートを余計に詮索したり、彼女を束縛するつもりはないのだけれど。
(魔王【世界】にいつの間にか弟子入りしてたし、また凄いことをしているんだろうなぁ……)
そんなことを思いながら、私たちは呼び出された場所へと到着する。
そこは魔法師団の総長の部屋だった。
扉をノックして、声をかける。
すると中から入室の許可を出す声が聞こえた。
扉を開けて中に入る。
「来たか、アルトリウス姉妹」
入ってすぐに、長い金髪にローブを着込んだ壮年の男性が目に入る。
エディンバラ皇国魔法師団総長、ラインハルト・アーマーガさんだ。
厳格な性格で冗談などを口にしないが、温かい心を持つ人として知られている。
私たちの上司でもある。
エヴァと一緒に敬礼をすると、その部屋にルナとムース、そしてロゼリアさまとミストが居ることに気づいた。
皆は私を見ながら微笑んでいる。
これは、ひょっとして。
「さて、長らく待たせてしまったな。ようやくユグドラシルとネクステスから許可が下りた。……というよりも、2人が許可を下ろさせたという方が正しいのだが……」
こほん、と咳払いをしてラインハルト総長は続ける。
「2国からの条件は、小隊の隊長をローズ様とすること、そしてこの隊を各国に順に派遣することだ。メンバーはローズ様を隊長にムース様、ルナ様、エヴァ様、ウリア様、ユウリィ様とする。またローズ様からの希望により、専属技師としてミスト様の同行を許可する。以降、私からの敬称は省略、敬語もなしになることをお許しいただきたい」
ついに、小隊として動き出せる時が来た。
ロゼリアさまが返事をすることで、私たちは正式に魔法師団の小隊となった。
細かい取り決めなどはエディンバラ、ネクステス、ユグドラシル間で行われているのだろう
。
ひょっとしたらキルシュも関係しているかもしれない。
返事を聞いたラインハルト総長はテーブルの上に一枚の地図を広げる。
それはこのミストフィアの地図だった。
「現在、他国からの要請はアズマ、ネクステス、ユグドラシル、キルシュから来ている。このうちアズマにはすでに別の小隊が出向いている。そこでローズ隊にはネクステス、ユグドラシル、キルシュに向かってもらいたい。緊急の任務はないとのことだが、どのように移動する?」
ラインハルト総長の言葉に、ロゼリアさまは考え込む。
地図をじっと見つめて、行き先を考えているのだろう。
ルートは2通り。
エディンバラから西のネクステス連合王国に向かい、そこから北東に移動してユグドラシル、キルシュと移動する。
あるいはその逆で、北のキルシュに向かい、そこから西南方向に移動してユグドラシル、ネクステスと向かうかだ。
「そうですね。キルシュから順に回っていきましょう。任務詳細については各国の王族に話を聞けばいいですか?」
「ああ、それで構わない」
どうやら最初の行き先はキルシュになったらしい。
キルシュはミストの母国で、観光で有名な国だ。
そんなことを思っていると、ラインハルト総長が強く頷いた。
「規定されているタイミングで報告書を本部に送ってくれ。緊急の場合は無理にとは言わないが、こちらでも手を貸せる可能性もある。それを覚えておいてくれ」
頼もしい言葉に、ロゼリアさまを初めとして全員で返事をする。
私たちの世界を回る旅が、始まった。
【魔法師団ローズ小隊の編成】
・ロゼリア:隊長
・ウリア
・エヴァ
・ルナ
・ムース
・ユウリィ
・ミスト:テスタロッサ調整係として同行




