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もしもゲームのライバルキャラが全員転生者だったら~未プレイ主人公と既プレイ転生者の鬱ゲー攻略~  作者: 紗沙
学園編

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第63話 陽気なおじさん、ジン先生

休日の今日、私はリフィルを連れて学園を訪れていた。


3年生になってから夏休みが終わるまで、これといった事件は起こらなかった。

逆に言えば、これまでは事件が起こりすぎていたのだろう。

平穏な日々が、ありがたかった。


本当ならば夏休みにユグドラシルに行くつもりだったのだが、今年は皆の予定が合わなかった。

それゆえに、旅行はなしになってしまった。


いつか行く機会があれば良いなと思う。


「それにしても、急に訓練を見学してもよいのでしょうか?」

「ルナからは許可を得ているから、大丈夫だよ」


リフィルの言葉に答え、私たちはどんどん進んでいく。

休日にもかかわらず私たちが学園に居るのは、ルナの訓練を見学するためだ。


学園で授業のある日は私たちと訓練をしているので、ジン先生たちとの訓練は休日に行っているという。

先生との訓練から学べるものもあるかなと思い、ルナに頼み込み、許可を得た。


学園を進み、訓練場が見えてくる。

そこではルナと先生が訓練をしていた。


黒と桜色が、大きな音を立てて衝突を繰り返している。

その様子を見ていると、紺の浴衣を着た男性が私に気づき、手を上げた。


「おう、アルトリウス家の姉か。ルナの訓練を見に来たのか。すげえぞ、見てけ見てけ」


心底楽しそうに笑うのは第3寮の寮監督、ジン・シノノメ先生だ。

黒髪に白髪が混ざった壮年の男性で、実技の授業も担当している。


2本の刀を腰に差すその姿は、まさに侍と言えるだろう。

厳格というよりも、陽気なおじさんという印象の方が強いが。


「ジン先生、こんにちは。ルナと……セツナ先生の模擬戦ですか」

「妹と違って姉の方は本当にお淑やかだな。……あぁ、最近は特に多いな。アンドロメダの嬢ちゃんと模擬戦をするようになってから一気に強くなった感じだ。今じゃセツナともいい勝負をしているぜ」


ジン先生の言う通り、ルナは桜色の衣を羽織った薄い紺色の着物の女性と戦っていた。

黒い短髪に、凛とした若い女性。


エディンバラ学園の非常勤講師である、セツナ・トキトウ・テノ先生だ。

最年少トリリアントにして、ジン先生の数多くの弟子の中で最強と言われている。


素早い動きは目にもとまらぬ速さで、攻撃は苛烈だ。

それに何とか付いていけているルナも相当なものだ。


「……大講堂の時も思いましたが、彼女は相当なやり手ですね。私ともいい勝負ができそうです」


その様子を見て、ポツリとリフィルが呟いた。

リフィルと良い勝負ができる。ジン先生が天才と評価するのも分かる強さだ。


「……前から思ってたんだが、姐さんは何者なんだ?エルフってことはユグドラシルの軍人か何かかい?」


リフィルの名前は学園では知れ渡っていない。

ネクステスのユエさんのようなバリバリの軍人なら見覚えがあるかもしれないが、教師であるジン先生は知らないのだろう。


リフィルは先生の質問に目をぱちぱちとしながら答えた。


「私はウリアお嬢様の専属侍女です」

「……聞きたいのはそういうことじゃなくてだな」

「専属侍女です」


言い張るリフィルに対して、ジン先生は苦笑いをしている。

これ以上話しても無駄だと思ったのか、ジン先生は私に声をかけてきた。


「アルトリウス家のお姉様は、俺の教えを受けるつもりはないかい?」

「あの……私はウリアという名前があるのですが」


エヴァは私のことをお姉様と呼ぶ。

そのため、ジン先生から名前ではなく特殊な呼び方をされていた。


そのことに苦笑いで返すものの、リフィルが前に進み出た。


「必要ありません。私の方で教えられることは教えています」

「……まあ、そうだわな。今から新しい型を仕込むのはおススメできないねぇ」


ジン先生も初めから真剣に勧誘しているわけではないのだろう。

すぐに諦めて、模擬戦へと目を移してしまった。


私は、以前から気になっていたことをジン先生に聞いてみることにした。


「ジン先生、大講堂でのあの戦いの時、まるで他にも魔王を知っているような口ぶりでしたが……」

「ああ、俺は魔王【天】と戦ったことがある。結果は惨敗だったけどな」


ジン先生はトリリアントではないものの、相応の実力を持っている。

以前生徒の一人がセツナ先生の方がジン先生よりも上なのでは?という質問をしたときに、セツナ先生が恐ろしいほど怒っていた。


セツナ先生からしても、実際に授業を受けている身からしても、ジン先生がトリリアントであるセツナ先生やアイリス先生に劣っているとは思えない。

そんなジン先生が、惨敗する相手。


「……ウリアちゃん、よく聞きな」

「え?」


声をかけられて見上げると、ジン先生はいつもとは違う真剣な表情で私を見つめていた。


「魔王っていうのは人外の化け物だ。トリリアントが何人揃ってても勝てやしねえ。……俺たちは魔王【深淵】を倒した。けれどあれは運が良かっただけだ。……ウリアちゃん、絶対に魔王に手を出すな」

「……ジン先生は……手を出したんですか?」


まるで経験があるような語り口に、私は思わず聞いてしまった。

ジン先生は遠くを見て、ぽつぽつと話し始めた。


「もう何十年も前の話だ。当時、俺はアズマっていう国にいた。自分こそが最強の侍だと思っていた。笑っちまうよな。今では学園長を初めとして、俺よりも強いやつなんざいくらでもいる。けれど若い俺は、自分こそが頂点だと思っていた」


今のジン先生からは想像もできない若い時代。

そんな先生が、自信を折られるとしたら、それは。


「でも俺は本当の頂点に出会った。魔王【天】は別格だった。あの野郎、自分のテスタロッサではなく、一般的な刀型テスタロッサである『普刃』で俺に勝ちやがった。俺は家宝のエクセラのテスタロッサまで使ったっていうのにさ」

「……じゃあ、ジン先生が普段『普刃』を使うのは……」

「ああ」


ジン先生は普段の戦闘で腰に差している2本の刀のうち、『普刃』の方を使う。

『普刃』はコモン級のありふれたテスタロッサだ。

もう1本は使っている姿を見たことがない。


「【天】にも言われたよ。お前は侍ではなく、指導者に向いているとな。その通りだと思ったよ。俺には戦いは向いていない。できるのは……セツナのような後進を全力で育てることだけだ。けど、感謝しているところもあるんだ。【天】のおかげで、指導者の道を進めたんだからな。嬉しいもんだぜ、手塩にかけた教え子が活躍するってのはよ。……お、そろそろ決着か?」


ジン先生の言う通り、ルナとセツナ先生の模擬戦がしばらくして終了した。

セツナ先生の刀の切っ先がルナの首に突き付けられている。


ジン先生は試合終了の合図を送ると、拍手をしながら2人に近づいた。

私もその後を追う。


「良い戦いっぷりだ。セツナに専用のテスタロッサを使わせないという制約があるとはいえ、ここまでできれば文句はないだろう。セツナ」

「はい、師匠。ルナちゃんは日に日にどんどん速くなっているし、攻撃も鋭くなっています。そろそろ私も『夜姫』を使いたいところですね」


セツナ先生は傷こそ少ないものの、かなり息が荒く、消耗しているのが目に見えた。

その手には『普刃』が握られている。


私はボロボロになっているルナに近づいて治癒魔法をかける。

傷を癒すことはできるが、訓練で疲れているのか、ルナは起き上がることはできなかった。


「セツナ様、どうぞ」

「え?あ、ありがとう」


声の方を見てみると、リフィルがセツナ先生に飲み物を手渡していた。

その様子を見て、ふと気になったことを聞いてしまった。


「……セツナ先生も魔王【天】と戦ったことがあるんですか?」

「あ、おい馬鹿」

「ないわ」


セツナ先生から発せられた言葉は氷のように冷たく、怒気が含まれていた。

その声に、一瞬体を震わせてしまったくらいだ。


睨みつけるような視線を向けていたセツナ先生は、慌てはじめた。


「ご、ごめんなさい。……【天】は私にとっては許せない人物なの。彼がいなければ、師匠は最強の侍になっていたはずだもの」

「あのなぁ……そう言ってくれるのはありがたいが、俺は自分でもなれないと思うし、【天】にも先は見えないと言われたと何度も話しただろう」


先は見えない?

どういう意味だろうか。


「先は見えないってどういう意味ですか?」

「あぁ、一般には知られていないんだったな。魔王【天】はその眼で人の強さの先が見えるんだとよ。本人がそう言うんだから、そうなんだろう」

「ですが……見えるからこそ、脅威になりそうな師匠を排除した可能性も……」

「お前は本当に……ずっと言ってるだろう、そんなことをするような奴じゃなかったって。それに、教育者としての俺も悪くはないと思うぜ。少なくともお前のような弟子を持てたんだからな」

「そりゃあ師匠は素晴らしいですよ!ですが……」

「あぁ、もう話はここまでだ。これ以上俺に関する話はなしだ。もしもの話をしても仕方ないだろ」


ジン先生とセツナ先生がちょっともめ始めたために、少し話題をずらそうと考える。

違和感のない話題と言えば。


「魔王【天】は侍なんですか?」


先ほどから話題に出ている魔王【天】について、私は聞くことにした。


「あぁ、魔王【深淵】が知っての通り魔法のスペシャリストなら、魔王【天】は刀のスペシャリストだ。剣の頂っていうのが通称だ」

「……剣の……頂……」

「……さて、休憩もここまでだ。訓練を続けよう。アルトリウス家のお姉様はまだ見ていくんだろう?学べるものも多いはずだ。見ていけ」

「あ、はい」


ジン先生の言葉で、私は下がる。

その横にジン先生が並び、彼はポツリと呟いた。


「ウリアちゃん、さっき俺が言ったこと、忘れるなよ」

「……はい」


ジン先生の言葉を聞きながら、さっきの発言を思い出す。


『絶対に魔王に手を出すな』


なら、自分の大切な人が危険にさらされているときに、黙ってみていろと言うのか。

私にはそれだけは、どうしてもできないと思った。


◆ルート開放条件

・「ルナ」を仲間にしている

・戦闘において、ルナが敵にとどめを刺していない


※原作ではルートが存在しません

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