第49話 ミストフィアの絶対なる強者、魔王
夏休みが近づいてきたある日の朝のこと。
いつもの時間に登校した私とエヴァは、珍しくミストとルナが机で話しているのを見つけた。
ミストはたまに第1寮の教室に顔を出す。
けれど、こんなに早くから居るのは珍しいことだ。
朝の挨拶をして荷物を置くと、私は二人に何の話をしていたのかを聞いた。
「……夏休みの……予定。……ルナの家に……遊びに行かないかって。……ウリアも……一緒に行こう?」
「今日急にミストから話をされたんだ。よければ2人もどう?別荘に招待するよ」
夏休みはいつも通り前半は学園で過ごし、後半はアルトリウス家に帰る予定だったので、前半ならば時間はある。
それに、ネクステスに旅行に行くという話は前からしていた。
「うん、私は大丈夫だよ」
「あー、ごめん、私はちょっと用事があって無理かなぁ」
私は問題ないのだが、エヴァは断っていた。
彼女は準備舎の頃から夏の長期休みに姿を消す。
毎年なにをしているのか聞いているのだが、教えてはくれなかった。
危険なことをしているわけではないし、専属侍女のララさんも連れているから大丈夫だと思うのだが。
「エヴァ、今年も?一人で大丈夫?……いや、まあ大丈夫なんだろうけど、なんかこう、心配というか……」
「大丈夫だよお姉様!私もう16歳だよ?」
「うん、まあ、そうなんだけどね」
どちらかというと妹離れ出来ていない私の方の問題だったりする。
なんとも言えない気持ちになるが、これに関してはエヴァは行くことをやめない。
準備舎の頃から、それはずっと変わらない。
そんなことを思っていると、ロゼリアさまとムースが登校してきた。
彼女達も荷物を置いて私たちの席に集まってくる。
「ミストさんがこんなに朝早くからいるなんて珍しいですね」
「あ、ロゼリアさま、ムース、夏休み、私の家の別荘に行きませんか?今のところミストとウリアが参加する予定なんです」
「ごめんなさい、夏休みはちょっと忙しくて、参加できそうにないんです」
「私は大丈夫ですね。お邪魔します」
ロゼリアさまもエヴァと同じく夏休みは用事があるようだ。
去年は学園にいたようだが、あまり会う機会はなかった。
王位継承権がなくなったとはいえ、将来的に国の中核を担うことは確定なので、することは多いのだろう。
「ロゼリアさまは不参加で、ムースは参加ね。ふふふ、ムースにネクステスのすばらしさを味あわせてやるわ」
「いや、ネクステスが素晴らしい国だというのは分かっていますよ。まあ、ユグドラシルには負けますが」
「なにをー!」
この2人もいつも通りだ。
ルナがつっかかり、ムースがあしらう。それが仲良く見えて、ほほえましくなっていく。
そんなことを思っていると、ミストがゆったりとした動作でルナの制服の袖をつまんで引いた。
「ルナ……ユエさんに……会わせてほしい……テスタロッサ……見たい」
「お母様に?いいけどお母様は専属の技師さんがいるよ?」
「うん……構わない……見れればいい」
テスタロッサの天才であるミストが興味を持つルナのお母さん。
そういえばルナは自分の母のことをネクステス最強だって言ってたような気がする。
「ルナのお母さんって何者なの?」
「何者って、ユエ・アルスだよ。……って、世界情勢に関する授業は夏休み明けからか。えっとね、ネクステスの4将軍って分かる?」
「うん、聞いたことあるよ。ネクステス連合王国ですっごく強い四人の将軍でしょ?」
ネクステス連合王国は軍があり、その最上位に4人の将軍が位置するらしい。
エディンバラ皇国は魔法軍と騎士団に分かれるが、ネクステス連合王国は軍のみなので、そこが大きな違いだ。
そしてその四人の将軍のことを4将軍と呼ぶ。
まさかそのうちの一人が。
「そう、そのうちの一人が私の母、ユエ・アルスだよ。4将軍最古参にして、最強。国内にはファンもいっぱいなんだよ。私からしたら、普段は優しいお母様なんだけどね。まあ、訓練のときはめちゃくちゃ厳しいけど」
「すごいね。ネクステスで一番強いんだ」
「他の4将軍3人がかりでも勝てないらしいからね。ラーク王子も厳しくしごかれてたよ」
あぁ、だからルナと戦ったときに、ユエさんの話を出して動揺していたのか。
ルナの母親ということは、ユエさんも闇の魔法を使うのかな?
「ユエさんもルナと同じで闇の魔法を使うの?」
「闇と火がメインだね。武器は鎌だからそれは違うけど」
「ユエさんの闇の魔法の実力は世界でも指折りだと言われています。まあ、魔王を除けばですが」
ロゼリアさまの言葉に感心する。
難しい闇の魔法を使いこなす上に、世界でもトップクラスだなんて。
(にしても、やっぱり魔王は別格なんだ)
強い人の話をすると必ず出てくる魔王。
トリリアントや世界有数の実力者、という表現はよく聞く。
けれど、魔王は格が違うように思える。
「魔王がすごく強いのは分かるんだけど、魔王より強い人たちって居ないの?」
ふと気になって、私は質問した。
すると、ロゼリアさまは考え込む。
「どうでしょう?魔王については分かっていないことが多すぎますからね。しいて言うなら、伝説上になってしまいますが神や勇者とかでしょうか?」
「神?勇者?」
ロゼリアさまの言葉に首を傾げる。
そう言えばそんな話を、なんかの本で読んだ気がする。
「1000年以上前の伝説だね。神は世界を創り、勇者を遣わせて世界を平定したっていうやつ。まあ、神話だから当然現実にはいないよ」
「あぁ、そういえばそんな内容だったね。テストに出てたなぁ」
エヴァの言葉に当時に習った内容を思い出す。
「まあ、いずれにしてもそんな伝説上の存在を出してこないと勝てないくらい魔王っていうのはやばい連中ってことだよ。とくに私たちが目的としているやつはね」
そうだ。エヴァの言うとおりだ。
私たちが倒さないといけない魔王アインもその名の通り、魔王だった。
「……そろそろ……戻るね。夏休み……よろしく……」
ミストはそう言うと教室を出て行った。
しばらくして鐘がなり、クローネ先生が教室に入ってくる。
先生の話を聞きながら、私は授業に集中した。
◆ルート開放条件
・ミスト、ルナが仲間になっている※
・ミストの洗脳魔法が解除されていない
※原作ではルートが存在しません




