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もしもゲームのライバルキャラが全員転生者だったら~未プレイ主人公と既プレイ転生者の鬱ゲー攻略~  作者: 紗沙
学園編

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第40話 豪雨の中の涙

「あれ?ムースさん?」


夏休みも終わりが近づいたある日。

ルナも自国へと帰省してしまい、課題も終わらせてしまった私は暇を持て余していた。

そんな時、ふと窓の外を見ると、見知った馬車が目に入った。


ユグドラシル特有の紋章が入った女性用の馬車。

それに乗ってユグドラシルへ出かけたのは、ムースさんだったはずだ。

外が土砂降りの雨のため、馬車は学園寮の玄関に限りなく近づいて止まった。


ちょうど死角になっていて、ムースさんは見えない。

けれど、帰ってきたのだろう。


「リフィル、出迎えに行こう」

「かしこまりました」


リフィルに声をかけて、私は自室を後にする。

久しぶりにミスト以外の友人に会えると思った私の足取りは、軽かったことだろう。















「ムースさーん!」

「あ、ウリアさん」


ムースさんの後ろ姿を見て、遠くから声をかける。

彼女は私の声に反応して、振り返った。

笑顔で答えてくれたが、一瞬泣きそうな顔をしているような気がした。


「ム、ムースさん?なにかありました?」

「え?な、何もないですよ?」


私の問いに、ムースさんは何でもないと答えた。

先ほどのは勘違いだったのだろう。


「そうですか。それにしても良かったです。誰も居なくて寂しかったんですよ」

「あら、それなら早く帰ってきて正解でしたね」

「ふふふ。ありがとうござ……え?」

「え?」


そのとき、私は気づいてしまった。

ムースさんの目から、一筋の涙が流れたのに。

彼女も今気づいたのか、目を丸くしている。


涙が頬を伝って、床に落ちた。


「っ!」

「ムースさん!」


まるで私を振り切るようにムースさんは走り出した。

私の左を通り抜けて、土砂降りの中、寮の中庭へと駆けていく。


突然の出来事に私は驚いたが、視界の隅に映ったのが涙だったと思い出した。

追わなくては。そう思った。


外は土砂降り。中庭に出れば私も濡れてしまうだろう。

けれど、今はそんなことは関係ない。

扉を開けてムースさんを追うように、私は外に出た。


(っ!……すごい雨……)


外は強すぎる雨だった。

走っているにも関わらず、全身がずぶ濡れになる。


目的の人は、ちょうど中庭の真ん中に居た。

ただ立って、雨雲の空を見上げている。


「ムースさん!」


私の声に、ムースさんが振り返る。

土砂降りの雨の中でも、彼女が泣いているのがはっきりと分かった。


「ご、ごめん……なさい……きゅ、急に……」

「何があったんですか?」

「だい……じょうぶ……だか――」

「大丈夫じゃないです!!」


大丈夫なわけがない。

こんな雨の中、中庭に出て、そんなに涙を流して。


「ウリア……さんに……話しても……仕方ない……ですから」


なら、なんでそんな顔で泣いているの?

どうしてそんな辛そうな顔なの?

それなら、どうして。


「それならどうして、私と話しているときに涙を流したんですか!?」

「っ……それは……」

「なにかあったから……だからじゃないんですか!?」

「なら!!」


両手を力の限りに握りしめてムースさんが叫ぶ。

普段のムースさんからは想像もできないほどの大声。

その叫びは、悲痛に掠れていた。


「ならウリアさんに話せば、解決するんですか!?」

「そんなの分かんないよ!!」


分かるわけがない。だって、どんな悩みなのかすら分からないのだから。


「ムースさんが何で悩んでいるか、言ってくれないと分かんない!そうしないと、何もできないよ!」

「そん……なの……」

「でも!」


もう敬語も何もかもかなぐり捨てて、私は叫ぶ。

ムースさんに届くように、彼女に響くように。


「でも……教えてくれたら絶対なんとかする。全力で、なんとかするから。だから……教えてよ……」

「ウリ……ア……さん……」


お願い。届いて。

その気持ちが届いたのか、ムースさんは崩れ落ちた。

膝をつき、うな垂れる。


慌てて近寄り、しゃがみこむ。

背中に手を置いて摩ると、いつもは大きな背中が、ひどく小さく見えた。

小刻みに震えているのが、痛々しい。


「助けて……助けてよぉ……」

「ムースさん……」

「死にたくない……死にたくないよ……」


私は気持ちを堪えられずに、彼女を抱きしめた。

落ち着けるように、強く、強く。


「お嬢様、ここは冷えます。とりあえず中に入るのが良いでしょう」


ふと声が聞こえた。

首だけを向けると、リフィルが立っていた。

その姿は雨が降っているにもかかわらず、濡れていない。


よく見ると、私たちの上に風が集まって、雨を防いでいた。

優しい侍女の言葉に、私はしっかりと頷いた。


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