第36話 準備舎に別れを、そして学園へ
ゆっくりと目を覚ます。
白い天井が目に入った。ここは……学園の医務室?
「あ、起きたかい?でも動かない方がいい。魔力が体の中にほとんど残っていないらしいからね」
首だけを動かしてユウリィを見つける。
彼女は心配そうに私を見つめていた。
「試合……は?」
「勝ったよ。フィリップチームに、僕たちは勝った。といっても、頑張ったのはウリアくんだけどね」
首を横に振る。
あの戦いに勝てたのは、オリーさんとユウリィが居たからだ。
全員が、死力を尽くしたからだ。
「でも、残念だけどトーナメントは先に進めなかったよ。流石にウリアくんとエヴァくんを失った状態じゃ戦うこともできないからね。今はもう夜だけど、結局優勝はロゼリアチーム。準優勝はルナチームさ」
「っ!?エヴァは?」
ユウリィが指をさす。
反対のベッドに首を動かすと、そこにはエヴァが居た。
安らかな表情で眠っていて、傷はなくなっている。
「命に別状はないよ。僕たちが戦っている間に目を覚ましたらしいんだけど、すぐに寝てしまったらしい。どうやら、かなり無理をしていたみたいだね。寝れてなかったんじゃないかな」
「…………」
確かに、ここ数日エヴァは色々な作戦を考えていた。
私の方が先に寝る日がほとんどだった。
その作戦のほとんどを使う機会がなかったことが悔やまれる。
エヴァだって、ルナやロゼリアさまと戦いたかったはずだ。
「それとフィリップチームのメンバーだけど、全員退学処分になった。それにフィリップチームに手を貸した生徒も、数日の停学処分だよ」
「……え?」
突然の言葉に、驚いた声を出してしまった。
「訓練場の回復魔法機能でも回復しきれない程の威力オーバーな魔法。それにチームメイト以外からの補助魔法。魔法の事前設置に、テスタロッサ発動前のフライング攻撃、おまけに戦闘中の暴言。まあ、当然と言えば当然だね」
「……そう」
「僕らの戦闘での暴言は、もうこうなることが分かっていたからだろうね。本当、人間の内心っていうのは嫌になるほど醜いよね。少なくとも彼らはエディンバラ学園には入学もできない。それに学園から連絡が行って、皇家やアルトリウス伯爵家も相手の貴族家に働きかけるみたいだよ。……まあ、ここから先は僕にはどうなるか分からないけどね」
フィリップくん達の処遇について、思うところはとくにない。
当然だと思うし、彼らはそれだけのことをやったと思っている。
「……私ね、フィリップくん達が退学になったことはどうでもいいんだ。それよりも、あれだけ無能無能言ってた人たちに勝ったことが嬉しい。ざまぁみろって思った。人のことをさんざん馬鹿にしてるからだって」
「僕も同じさ。ちょっとスカッとしたよ」
私はユウリィと顔を見合わせ、微笑んだ。
結果は振るわなかったけれど、大きな勝利を手に入れたトーナメント戦だった。
「皆さん、この1年間お疲れさまでした。皆さんならば来年からの学園生活でも有意義な時間を過ごせるでしょう」
時間は過ぎ春が訪れた。
準備舎に入学して一年が過ぎた。今日は卒業の日だ。
卒業の日と言っても式をやるわけではない。
準備舎と学園は繋がっているので、シール先生のお言葉があるくらいだ。
「あっという間の一年だったねぇ……」
「そうだねぇ」
後ろのエヴァに前を向いたまま答える。
エヴァはトーナメント戦の次の日に普通に起きた。
とくに外傷はなく、問題もなさそうだった。
フィリップくん達のことなど気にもしていないようで、どちらかというとロゼリアさまと戦えなかったことを悔しがっていたくらいだ。
『この怒り、どうしてくれようか……ロゼリアさま、模擬戦しよ?私たち全員対ロゼリアさま一人で』
『それはもはや模擬戦ではないのでは……』
そんなことをロゼリアさまと話していたくらいだ。
この借りは必ず学園で返すと言っていた。
一方で、フィリップくん達に勝った私たちもクラスである程度受け入れられるようになった。
停学から帰ってきた生徒たちは私たちに謝罪したし、最近は無能と言われることもない。
どちらかというと、私はマリアの光について聞かれる日々だ。
『ウリアさん!あの光ってどうやったの!?』
『あれ光の魔法付与でしょ!光の魔法は武器に付与するの難しいって聞いたよ!』
やはり見間違いではなかったらしく、マリアは光っていたらしい。
いつのまにか光の魔法付与ができるようになっていたのか。
そう思ったが、あのあと何度やってもできなかった。
(トーナメント戦のときは必死だったからなぁ……)
エヴァ達に相談もしたが、彼女達は「そのうちできるよ」と言って笑うばかり。
人が真剣に悩んでいるのに、まったく……。
「学園では皆さんは各寮に入ります。その寮で、新しい仲間を見つけて、素晴らしい時間を過ごしてください」
学園では生徒は5つの寮のどれかに入る。
私は第1寮だ。とはいえ、ほとんどみんな第1寮らしい。
例外はオリーさんくらいか。彼女だけ第2寮だ。
また、セリア先輩も第1寮らしい。
セレン先輩は第2寮らしいので、それは少し残念だ。
寮以外で先輩と会う機会はほとんどないのだけれど。
やがてシール先生の言葉が終わり、この教室で過ごすのも最後となる。
もちろん、シール先生の授業を受けることも、もうない。
荷物を片付けながら、私は呟く。
「思えばいろんなことがあったなぁ」
実技試験やオリーさんとの出会い、ロゼリアさまの王位継承権の話やトーナメント戦など、なかなかに濃い一年だった。
「来年くらいは、落ち着いて過ごしたいなぁ」
「…………」
そう呟いたけれども、後ろから返事は返ってこなかった。
ふと後ろを見ると、エヴァは苦笑いしている。
「まあ、いつものメンバー的にまた色々あると思うよ」
「……それはそれで、楽しいからいっか」
暖かくなってきた春の季節。
私たちは準備舎を卒業し、エディンバラ学園へと入学する。
読んでくださり本当にありがとうございます!
続いて学園編となりますが、ある程度書き貯めを行ってからの投稿予定です。
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