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もしもゲームのライバルキャラが全員転生者だったら~未プレイ主人公と既プレイ転生者の鬱ゲー攻略~  作者: 紗沙
準備舎編

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第28話 友だちのつくりかた

季節が進み、夏が訪れた。

気温が一気に上がり、制服が夏服になっても、汗をうっすらとかくような季節。

私は学園の寮のベランダの椅子に座って、外を見ていた。


準備舎は夏休みだ。

アルトリウス家に帰ることも考えたけれど、夏休みは長いので、後半だけ帰省することにした。

のだが……。


「暇……」

「お嬢様……毎日言っています」


後ろに立つリフィルさんに、ついに言われてしまう。

そう、暇なのだ。こんなことならアルトリウス家に帰省すればよかった。

とはいえあの家はリリスさんくらいしか味方が居ないのだが。


色々と予想と違っていたことも理由の一つだ。

ルナとムースさんは自国に帰省してしまったし、ミストは自室にこもっているのがほとんどだ。

たまに部屋に遊びに行くが、毎日押しかけるのは迷惑だろう。


ロゼリアさまは公務もあるらしく、寮にはいない。

そしてエヴァに関しては、なんと夏休みが始まってから所在が不明なのだ。

一応彼女専属の侍女であるララさんも同行しているらしいので、心配はないらしいが。


夏休み初日に起きて、エヴァの書置きを見たときには焦った。

リリスさんに連絡してみると、アルトリウス家にも帰ってきていないらしい。

どこで何をしているのだろう。


「エヴァ様がお嬢様の近くに居ないのは珍しいですね」

「実はそうでもないですよ。リフィルさんは知らないと思いますけど、子供の頃はよく居なくなって屋敷が騒がしくなってました。いつの間にか帰ってきていたんですけどね」

「お嬢様、前から言っているのですが、私は侍女です。敬語もさんづけも不要です」

「いや……なんかもう癖みたいな感じなんですよね。リフィルさんを呼び捨てにするなんて、そんな」


そもそも元軍人で私よりも年上のお姉さんであるリフィルさんにそんな態度はとれない。

しかしリフィルさんは納得いかないようで、ことあるごとにさん付けと敬語を辞めることを要望してくる。

今回もリフィルさんはむっとした顔をした。


(これはまだまだ言われそうだな)


そう思っていると、リフィルさんは私の前に回ってきた。

足を私の椅子の空いているところに置き、逃げられないように手を顔の横に置いてくる。

リフィルさんの綺麗な顔が、目の前に近づく。良い匂いが、鼻をくすぐった。


「……いいじゃないですか。ウリアお嬢様?」

「ふわぁ!!」


耳元で囁かれ、私は真っ赤になる。

突然の行動に、頭がパニックになる。


顎を指でつかまれ、目線を無理やり合わせられる。

リフィルさんは私の唇をなぞりながら、微笑む。


「リフィルって、呼んでください」

「……リ、リフィル……」


大人の魅力に気おされ、私は思わず言われるがままにリフィルさんを名前で呼んでしまった。

リフィルさんは満足げに微笑むと、私から離れる。


「それではこれからはリフィルと呼び捨てにしてくださいね。お嬢様」

「!!??」


その瞬間、私はリフィルさんにからかわれたことを悟った。


「からかったんですか!?」

「申し訳ありません。でも、リフィルと呼び捨てにしてほしいのは本当ですよ」


リフィルさんがクスクスと笑う。

その余裕そうな態度が不満だった。私はこんなにもあたふたしているのに。


「むー!もう知りません!食堂にでも行きますよ、リフィル!」

「!。はい、お嬢様」


腹いせにリフィルと呼び捨てにすると、彼女は嬉しそうに笑った。

結局は言うとおりにしてしまう自分が悔しいけれど、リフィルが嬉しそうだから、まあいいか。


「……もう少しあのままでもよかったでしょうか」


少し離れていた私にはリフィルの危ない発言は届かなかった。















準備舎の食堂に入り、お昼ご飯を注文して食べる。

リフィルの分も一緒に注文した。

侍女の分に関しても、要望があれば作ってくれるのは良いことだ。


とはいえ、食堂で侍女と一緒に食事を食べる人は少ない。

準備舎はそもそも生徒同士の交流の場であるためだ。

連れてきているのは、私くらいだろう。


今も周りから視線を感じる。

私たちのグループはクラスのみならず、準備舎全体で有名だ。

特に私は、よくない理由で名前が知れ渡っていた。


「ふむ。やはり食堂のご飯は美味しいですね」

「リフィル、よくこの状況で食べられますね……」


リフィルは満面の笑みで昼食を食べていた。

聞いた話によると彼女は家族からもあまり良い感情を向けられていなかったらしい。

一時期の私のように、あまり食べるものがなかった時期もあったのだとか。


「敬語も外してほしいんですけどね。……まあ、私は気にしません。周りにいる何もしてくれなかった人より、たった一人の救ってくれた人の方が大切ですから」

「あはは……」


リフィルはそう言っているが、私は何か特別なことをしたわけじゃない。

ただ話に乗って、彼女の心配をしただけ。


「ウリアくん、こんなところで奇遇だね」


声が聞こえたので首だけを向けると、ユウリィさんが立っていた。

その手にはお昼ご飯のトレイが。


彼女はそのまま、私の隣の席に座った。

侍女を連れていない人で、私に食堂で近づくのはこの人だけだろう。

私は、ユウリィさんがあまり好きではない。


「今日はエヴァくんは居ないのかい?」

「はい。いません」


食事をとりながら、ユウリィさんは他愛のない話をしてくる。

いや、他愛のない話ではなく、私に近づくために私の周りの人を話題にしている印象だ。

ユウリィさんは口調はミストと似ているものの、こういったところが彼女とは全く違うところだ。


なるべく早く彼女との会話を切り上げたい。

そういった意味では先に食べていて良かった。


「そういえば、ロゼリア殿下はセリア嬢に勝利したらしいですね」

「あ、そうなんです。エヴァから聞いた話ですけど、すごい戦いだったみたいです」

「勝利と言えば、ウリアくんだってセレン先輩に勝利したじゃないか」


リフィルと話していると、ユウリィさんが話に割って入ってくる。

以前からたまに絡むことがあったけれど、どんな話題でも私の話題に変えてくるので、最近はちょっと引いている。

悪い人ではないんだろうけど、私の気を引きたいっていう思惑が目に見えているというか……。


リフィルもそのことを知っているので、彼女もユウリィさんを無視して話を進める。


「師匠としては微妙なところですけどね。あのセリア嬢相手に圧倒だと、本当に近いうちに抜かれそうです」

「セリア先輩ってそんなに強いんですか?」

「ウリアくんだって成長しているじゃないか」


ユウリィさんがまた話に入ってくるけど、相手にしない。


「はい。セリア・ラーグウェイ嬢はお嬢さまの一つ上の学年で、同世代どころか学園内でも敵なしの人物です。お嬢様の世代がずば抜けているので見逃されがちですが、彼女もまた神童と言えます」

「そ、そんなにすごい人なんだ……って、セリア先輩って1年生ですよね?なのに実力派学園の先輩たちよりも上なんだ……」

「もし私と同じ時にこの学園に居たら、1、2を争っていたでしょう」

「え?リフィルはこの学園出身だったんですか!?」

「はい。準備舎には入っていませんが、学園では第2寮所属で、一応寮長でした」


エディンバラ学園における寮長はその学園の寮内で最も強い人が選ばれる。

それを務めていたということは、学生のころからリフィルは優秀だったのだろう。


ひょっとしたらと思っていたけれど、リフィルもすごい人だった。

リフィルと会話をしている間も、ユウリィさんは私の横で色々なことをしゃべっていた。

その言葉をもはや聞いてすらいなかったけれど。


「セリア先輩も、ロゼリア皇女も、適性が高くて羨ましい限りだけどね。ズルいと思わないかい?」


その言葉だけが、鮮明に耳に残った。


「なんでですか?」

「……え?」

「なんでユウリィさんはそういう事しか言えないんですか。いつもいつも私の話か、そうじゃなければ周りのみんなを悪く言うだけじゃないですか」

「それは……」

「私、ユウリィさんのそういうところが嫌いです。私だけを見て、私にだけ触れて、他は邪魔としか思ってない。私は私の周りの人だって好きなんです。もっと考えて――」


思わず強く言ってしまった。

しまったと思い、慌ててユウリィさんをみると彼女は目を見開いていた。

そのまま彼女は数秒硬直していたが、やがて頭を深く下げた。


「すまない。ウリアくんの言うとおりだ。君が君の周りの人を好いていたのは十分わかっている。けれど、結果として君を傷つけるようなことをした。深く謝罪する」

「そ、そこまで謝らなくても」

「いや、これだけは分かってほしい。僕は君に嫌われたくない。君の嫌がることはしたくない」

「どうして、そこまで……?」


正直、ユウリィさんの私への態度は異常だと思える。

彼女が私以外の人と話しているところを、私は見たことがない。

どうして彼女は、ここまで私に執着するのか。


「……僕は、ずっと友達がいないんだ。昔友達をなくしてから、怖くて作れないんだ。友達の作り方も、もう忘れてしまった。でもウリアくん達を見ていると昔の僕たちみたいに笑い合っていて……羨ましくなったんだ。だから……」


あぁ、そうか。

この人は不器用なんだ。ただ準備舎で一緒に過ごす友達が欲しかっただけなんだ。

けれどそれを言い出せないから、ただ私の機嫌を損ねないように話してたんだ。


「それなら……そんなこと言ったらだめです。友達になりたい人に、ユウリィさんの昔の友達を否定されたら、どう思いますか?」

「そんなの嫌に……あ……」

「そういうことです」

「ご、ごめん……ウリアくん……」


ユウリィさんは正直に頭を下げた。


「もっと言うと、お嬢さまの話に対して全く関係のない話をするのもダメです。友達というのは一緒に居て楽しいことを指します。あなたのように、一方的に意見を押し付けたり、誰か一人の機嫌を取るための集団ではありません。まあ、機嫌を取る対象がお嬢様なのは文句なしですが」


いや、文句しかないよ。

リフィルはそう言ってユウリィさんに釘をさす。

その言葉を、ユウリィさんはしっかりと聞いていた。


目線は下がっているものの、しっかりと頷いている。

その姿を見て、あの嫌な感じはなくなっていた。

今の彼女ならば。


「ユウリィさん、私と友達になろう?他の皆には私から説明するから」

「い、いいのかい!?」

「うん、でも他の皆と喧嘩しちゃダメだよ?ちゃんとみんなと向き合ってね?」

「も、もちろんさ!」


捨てられた子犬のようだったのでつい手を差し伸べてしまったのだが、エヴァ達になんと説明しようか……。


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