第19話 この世界が天国だと私は知っている【ルナSide】
(エヴァラスだぁ……)
何の前触れもなくこの世界に転生してきて、いろんなことを知って、Everlasting、通称エヴァラスの世界だと知ったとき、私は喜んだ。
ゲームが趣味だった私にとって、このゲームは一番好きなゲームだったからだ。
転生した先はライバルキャラのルナ・アルスだったけれど、そこはあまり悲しまなかった。
(ルナとして、主人公を幸せにする私なりのハッピーエンドを目指そう!)
エヴァラスは過去に5周プレイした。
全ての攻略対象を攻略したけれど、トゥルーエンドを迎えても微妙な出来だった。
そのため、運営に続編か、攻略対象を増やしてほしいと要望を出したこともある。
もちろん受け入れられはしなかったが、そのくらいウリアのことは好きだし、思い入れもあった。
ウリアのグッズを買ったりもしたし、二次創作の小説も読み漁ったりした。
ウリアは私の推しだった。
そんなウリアに何としても近づきたい。
何も考えていなかった私は、それをひとまずの目標とした。
その後、私は恐ろしいことに気付いた。
ルナとウリアは学園で初めて出会うが、ウリアは第1寮、ルナは第3寮に所属する。
エディンバラ学園では各寮に対応したクラス分けが行われる。
第1寮ならば第1寮のクラスに、第3寮なら、第3寮のクラスに。
つまり、私は学園でウリアと同じクラスになれない。
なら第1寮に入ればいい、ということになる。
しかし、私の実家であるアルス家は代々第3寮出身。
魔法が使えない私が第1寮を希望したところで、両親からは「なぜ?」と聞かれるだろう。
(推しと同じ空気を吸って、親友の座を奪いたいからなんて言ったら娘がおかしくなったって思われちゃう……)
まあ、謎の頭痛でそもそも言えないんだけど。
今のままでは確実に実技特化の第3寮に入ることになる。
学園でウリアに会えなければ、そのあとに会うことは絶望的だ。
なんとしても、第1寮に入らなくては。
「いい、ルナ。闇の魔法は確かに難しい。けれど習得すれば大きな力となるわ」
「うん!頑張る!」
そのため魔法を勉強することにした。
幸いなことに私の母親はネクステス連合王国の4将軍の一人。
その中でも最強と言われるユエ・アルスである。
母親に甘えることで、私は魔法を彼女から教わることに成功した。
適性に関しては原作と同じく武の伸びが強い。
これに魔法の適性も加われば、第1寮入りは安泰だろう。
学園でウリアとも行動を共にできるはずだ。
エディンバラ学園にはエヴァやローズといった他のライバルキャラも居るが、そいつらに私の推しは傷つけさせない。
「頑張るぞー!おー!」
拳をつき上げる私を見ながら、母は不思議そうな顔をしていた。
魔法も習得し、テスタロッサとも契約し、学園入学に向けて順調だった流れが急に変わったのは準備舎に入ったときだった。
エディンバラ学園の準備舎に、原作ではウリアは参加しない。
アルトリウス家で冷遇されているウリアに使われるお金などない。
そのために、彼女は15歳からの入学となる。
なので原作でも準備舎の様子はほとんど描写されない。
そういった施設がある、といった文での説明のみである。
この準備舎は貴族間の交流が主なので、エヴァやローズといった他のライバルキャラ達は入学する。
ウリアが居ないので、正直準備舎はどうでもいいが、他のライバルキャラとは交流しないようにしよう。そう思っていたのに。
「ウーレリア・アルトリウスです。友達は皆ウリアと呼ぶので、そう呼んでください。この準備舎では勉強を頑張りたいと思います!皆さんよろしくお願いします!」
推しが……推しが居る。
ウリアが、ウリアが準備舎に……。
ウリアの自己紹介を聞きながら、私は感動していた。
まさか準備舎で出会えるなんて……。
しかも実物のウリアはゲームやグッズのウリアよりもずっと可愛くて美人で完ぺきで天使で女神でこの世の至宝だった。
すごい……本物ウリアしゅごい……。
あまりの衝撃に、その後のことはあまり覚えていない。
気づけば先生の話は終わっていて、机の上には紙が裏向きに置いてあった。
立ち上がろうとしているウリアを見て、私はとっさに移動した。
獣人の力を無駄に全力で発揮し、ウリアの席の前に移動し、彼女を下から見つめる。
下から見る推しも、尊い。
そんなことをしたら当然ウリアも気づくわけで、彼女の蒼い目が私を捉えた。
あ、なにか。何か言わないと!
「わ、わわわ、私ルナって言います!ウリアさん!よければこの後一緒に準備舎を見て回りませんか!?」
とっさに出てきたのは、いきなりすぎる招待だった。
「え?えっと……その……お願いします……?」
「ほ、本当ですか!?よろしくお願いします!」
けれどその招待にウリアは応えてくれた。
それが嬉しくて、テンションが上がる。あぁ、推しの声も尊い。
しかし次の瞬間には、ウリアを遮るように一人の少女が視界に現れた。
「じゃあ私も一緒に行くね。よろしく、ルナさん」
(……え?)
なぜ急にエヴァが出てくるのか分からない。
彼女はまるでウリアを守るような行動をしていて……でもそれは原作のエヴァでは考えられない。
「それなら私たちも一緒に行きましょう」
「ん……僕も」
声がかけられたのでそちらを見てみると、ローズとミストが立っていた。
エヴァラスのライバルキャラで貴族。それゆえに準備舎に居ても不思議ではない。
しかし2人とも私の知っている2人の口調ではない。
「私はエヴァ」
「私はロゼリアです」
「僕は……ミスト」
「「「よろしく」」」
ウリアに夢中になっていた私は、私以外にも転生者がいることに、この時初めて気づいた。




