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もしもゲームのライバルキャラが全員転生者だったら~未プレイ主人公と既プレイ転生者の鬱ゲー攻略~  作者: 紗沙
世界戦争編

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第100話 あぁ、貴女はこんなにも【ロゼリアSide】

原作エヴァラスにおいて、ロスヴェイル国との戦争は必須イベントである。

それを避けることはできず、この世界と同じようにロスヴェイルは3か所に進軍を行う。

アリュート絶海、死の森、オリエント荒野。


そしてこの戦争イベントこそが、私達ライバルキャラの最大の難所。死に場所だった。

このイベントにおいて3か所の内どれかを選べそうなものだが、ゲームで選べるのは死の森のみである。

ウリア達は死の森へ向かい、ローズとムースはアリュート絶海へ、エヴァとルナはオリエント荒野へ向かう。


そこで発生した戦争。その結果は、勝者なしである。

というのも、この戦争に第三の勢力クロムとヒビキが参戦するからである。


まず、アリュート絶海は地獄絵図になる。クロムの洗脳魔法により、キルシュ軍全員は裏切り、連合軍を壊滅させる。

それも自爆魔法という最低の魔法で、一人残らず殺害するのだ。


『ローズ様とムース様が、キルシュ軍により戦死なさいました』


たった一言の文章に目を疑ったのはよく覚えている。

いくら最強のロゼリアとはいえ、信頼している味方に背後から爆発されてはひとたまりもない。


そしてもう一か所、オリエント荒野はさらに地獄になる。

オリエント荒野にはクロムが現れ、彼の魔法により連合軍もロスヴェイル軍も壊滅状態となる。


『また……エヴァ様とルナ様も、魔王【深淵】により戦死なさいました』


たった一言であれだけキャラメイクされたライバルキャラを葬るシナリオライターの正気を疑ったくらいだ。


これが原作でのロスヴェイル国との戦争の全容。

なら、この世界ではどうなるか。

まず、すでにクロムが死亡している。それゆえにオリエント荒野に彼が現れることもなく、キルシュ国が裏切ることもない。


『私達はユグドラシルの死の森に進軍するつもりです』


だからこそ、各国の王との会談で、私達は原作通りに死の森へ向かうと宣言した。

原作の流れを汲むだけでなく、原作で現れるヒビキを止めることができる。

そう考えた。


原作ではここでのヒビキ戦は負けイベントで、彼はウリアの力を認めて撤退する。

だから安全だと思っていたのに、コンウェルのルイネル王によりすべてが狂った。

彼の必死の懇願により、私達はオリエント荒野に行かなくてはならなくなった。


確かにオリエント荒野も不安だが、クロムを倒した今、ヒビキほどではない。

彼をどうするのか、そのことに頭を悩ませた。


『大丈夫。保険かけといたから』


その不安に対して、エヴァは不敵に笑ってそう答えた。

彼女が何を企んでいるかは分からない。けれど、エヴァが私達にとって不利益な行動をしないことはよく分かっている。

死の森に関しては、彼女に任せるとしよう。


ここまでが、オリエント荒野に向かうまでの私達の懸念点だった。

そしてオリエント荒野に来れば、必然的に戦う人が居ることも、よく分かっていた。


「セレーナくん……俺は……君達を……」


目の前で地面に倒れ、太陽へと手を伸ばすのはバルトロ・レディアント。

原作にて登場するロスヴェイル国の将軍だ。


ロスヴェイル国は進軍した3つの地域にそれぞれ一人ずつ将軍を派遣している。


アリュート絶海にルヒーネ・ウォルツを。

死の森にリッチモンド・ノーライフを。

そしてオリエント荒野にバルトロ・レディアントを。


原作ではキルシュ軍の裏切りによりルヒーネは逃走。

リッチモンドはヒビキにより殺害。

バルトロはクロムにより撤退する。


(強かった……さすがはラスボス前の、ボス)


原作でバルトロと戦うのは今よりもさらに先。

ロスヴェイル国内部でのことになる。

ラスボス直前で、彼はウリア達の前に立ちはだかるのだ。


剣術、魔法ともに高レベルで、時間を操る必殺技さえもち、初見殺しと言われていた。

まあロスヴェイル国で戦うボスはどれもこれも初見で勝つのは難しいのだが。


バルトロは彼が言った通りロスヴェイル国最強の将軍である。

ロスヴェイル国に在籍する2人の魔王を考慮しても、一二を争うと言っていい。

そんな相手に勝てたのは私達が死力を尽くしたのもそうだが、ウリアのテスタロッサの力が大きいだろう。


エヴァに対して思い出したように『第四次元フォース』を使用する彼女を見ながら、思い出す。

彼女のテスタロッサ『マリア』の固有能力は、他のテスタロッサの能力をコピーすることだと言っていた。


(『マリア』なんていうテスタロッサは原作には存在しない。けれど、これだけ強力な能力にもかかわらず、ゲームで設定されていないなんて、ありえるのでしょうか?)


少し不思議に思うが、それ以上にテスタロッサの固有能力をウリアが使えるようになったことが誇らしい。

自分が手塩にかけて育てた生徒が、テストで良い点を取ったような、そんな感覚。

そう思い、彼女に微笑みかけようとしたとき。


「ごめん皆……ちょっと……寝るね……」


ウリアがそう言って地面に倒れた。


「ウリアさん!?ウリアさん!しっかりしてください!」

「お嬢様!?お嬢様!?」

「ウリア!どうしたのウリア!」


異常な様子に、慌てて彼女に触れる。

周りの皆も、突然のウリアの気絶に慌てている。

けれど意識を失った彼女を見て、私は気づいた。


(そういうこと……)


ウリアの特殊能力。その一つはテスタロッサを使いこなす力である。

その使いこなし方は、他の人では到達できない領域にまで達する。

そしてそれは、『マリア』に対しても同じ。


ウリアはカタストロフ級の『第四次元』をコピーした。

そしてバルトロ以上に『第四次元』を使いこなした。

原作でバルトロはテスタロッサを使用して回復するような技を持っていなかったはず。


「大丈夫。気絶しているだけです。疲れたんでしょう。激しい戦いでしたから。それに、ルナをお願いします。今回活躍したのは、間違いなく彼女ですから」

「は、はい!」


ムースがエヴァを一目見て、ルナへと駆けだす。

ルナも地面に倒れているが、エヴァほど重症ではない。

治癒魔法をかければ問題はないだろう。

ウリアの様子を確認すると、彼女は穏やかな寝息を立てていた。


あのバルトロを相手に、誰も失うことなく、勝利した。

いきなり『第四次元』を使用するのは驚いた。

バルトロ以上の力を行使して、ウリアが死んでしまうことだってあったかもしれない。


でも……ウリアがやらなければエヴァは死んでいた。

彼女が、自分の力で大切な人を助けた。

何時も助けてくれていたエヴァを、ウリアが。


(よくやりました……貴女は、こんなにも頑張った)


ウリアの髪を撫でながら、私は彼女に優しく微笑みかけた。

本当に、お疲れ様。














指揮官であるバルトロを失ったロスヴェイル国の軍は瓦解。

その隙をこちら側が見逃すはずもなく、一気に戦線を押し上げた。

敵軍は敗走したものの、この勢いならば負けることはないだろう。

それにバルトロは居ないのだ。ここはもう大丈夫だろう。


ちなみにウリアはその日の夜には目を覚ました。

体は怠そうだが、命に別状はなさそうだった。

彼女は隣の簡易ベッドで眠るエヴァを見て、胸を撫で下ろしていた。


「エヴァ……早く目覚めないかな」


いち早く目を覚ましたルナが不満げに呟く。

彼女も気を失っていたものの、ムースが治癒魔法をかけると跳び起きた。

本当、どんな生命力をしてるんだかと呆れるくらいだ。

今回は、そんな彼女に助けられたけれど。


「一時は死にかけていたんです。もう少しかかるかもしれませんね。……それにしてもルナは大活躍でしたね」

「へへーん。そうでしょ?」

「本当にすごいと思います」

「……なんか普通に褒められるとこそばゆいなぁ」


あははと頭を掻きながらルナは苦笑いする。

けれどムースは心からルナを褒めている。そしてそれは、私たち皆同じだ。


「でも、みんなを護れてよかったよ。私が、防衛線だからね。……だから、もっと頑張るよ。……なんで……なんで私は……」


最後の方は声が小さくなって聞こえなかった。

けれど、今回の一戦はルナの自信に繋がっただろう。


「それに……ウリアも……すごかった」

「ウリアさん、テスタロッサの能力についてなのですが、いくつ模倣できるのでしょうか?」


ミストの言葉で『マリア』のことを思い出し、私はウリアに質問した。

彼女のテスタロッサの能力のことは何も分かっていない。

強力なのは分かるが、詳細に能力を知っておかないと。


「多分一つだと思います。バルトロとの戦いでも、一つが精いっぱいだったので。詳しくは、後で確かめてみようかなと」


流石にいくつもコピーできるほど万能な能力ではないか。

それなら、確保しておくべき能力は。


「それでは、仮に一つだとしたら『第四次元』を模倣したままにするのはどうでしょうか?あの力はかなり強力ですし」

「あ……そのことなんですけど……」


少し言いづらそうにウリアさんは口ごもる。


「もう『第四次元』は使えないみたいなんです。多分、この世にあるテスタロッサしか使えないのかなと」

「……なるほど」


バルトロの体内に『第四次元』は収まっていた。

彼が死んだことにより、『第四次元』はなくなり、テスタロッサは未覚醒状態へと戻った。

これで他の誰かが覚醒させたとしても、『第四次元』にはならない。

ゆえに、それをコピーしているウリアも『第四次元』が使えなくなる。


時間を操る能力が使えないのは残念だが、それでもウリアの力が強力なのに間違いはない。


「分かりました。ですがその力は強大です。ここぞというタイミングで、使いたいですね」

「はい。肝に銘じます、先生」

「ふふ、よろしい」


ウリアと先生ごっこをして、二人で微笑みあう。


「ん……ここ……は?」

「エヴァ!エヴァ!」


丁度そのタイミングで、エヴァが目を覚ました。

ウリアはベッドから飛び降りて彼女に近づく。


「お姉様」

「エヴァ、私達勝ったよ。ありがとう」

「ふふ、どういたしまして」


これで、全員揃った。

一人も欠けることなく。


(さて、次はロスヴェイル国ですかね)


そう、一区切りをつけた。


「お伝えします!死の森にて魔王【天】が参戦!被害甚大ですが、魔王【世界】も参戦し、撤退したとのことです!」


天幕へとやってきた伝令兵は、死の森での戦局を伝えてくれる。

ヒビキに対して、テスタ。そうか、これが。

振り返り、エヴァを見る。


「言ったでしょ?保険を掛けたって。昔、師匠に一度だけ手を貸しもらう約束をしたんだ。それを使ったんだよ。まさかヒビキが来るとは思わなかったけど、本当によかったよ」

(よく言う。全部知ってて、その約束を使ったくせに)


魔王【世界】が無条件で手を貸してくれる。

そんな切り札を、この場面で切れるなんて。私なら、温存してしまったかもしれない。

でも、だからこそ。


(あぁ、越えたんですね。ついに、元の私達を)


今この瞬間に、私達は原作のロゼリアよりも先に居る。

いや、先に進めた。ここまで19年間。この瞬間を夢見ていたはずだ。

エヴァも、ルナも、ムースも、ミストも晴れやかな顔をしている。


お疲れ様、ロゼリア。

お疲れ様、ライバルキャラ。

私達は、運命を変えた。


「伝令!伝令!アリュート絶海にてキルシュ国が裏切り!ロスヴェイル国とエディンバラ皇国、ユグドラシルの兵士を自爆魔法で壊滅させました」


目を見開く。思考が停止する。

そんな馬鹿な、という思いで頭がいっぱいになる。


「アリア女王はご乱心!自分を魔王【深淵】、クロムウェルと呼称しています!」


そして、絶望が始まった。


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