夜の狩り
次にログインすると、夜だった。相変わらず始まりの街は混雑していた。お酒を呑み、盛り上がっている集団も見受けられる。昼間の喧騒とはまた違った印象を受ける。
「さて、腹ごしらえでもしていくか」
ジマはカレー屋に入り、食事を終える。シーピーは空腹度が設定されていて、20%を下回ると鈍足が付与されてしまうのだ。
「夜の狩りはどんなものかな?」
昼と夜では出没するモンスターが違う。内心ワクワクしながら始まりの街を出る。道中ユリに言われたことを思い出す。
「鬼なのに、金棒は使わないの?」
「ああ、今のところ使わない方針。こっちの方が鍛練になりやすい」
ムエタイ最強を信じるジマは、リアルでもムエタイをやっている。ただ日本ではそこまでムエタイを学んでいる者がいないので、海外の選手とシーピーを通じて稽古や試合が出来たらなと思っている。
そうこうしている間に、モンスターに会う。ブラックウルフという狼だ。全長は中型犬程度だ。
「よし、またスピード勝負だ」
飛び掛かってくるブラックウルフを左右に身体をそらしながら避ける。しばらく避け続けていると、一匹、また一匹とブラックウルフが増えてきた。五匹を越えたところで
「流石にきついか・・・」
飛び掛かってくるブラックウルフに膝蹴りを合わせる。それだけで一匹が倒れて、ドロップ品が出る。ブラックウルフの毛皮を手に入れた。
「思っていたより弱い?」
それに気づくと、ジマはニヤリと笑いまたスピード勝負に出る。今度は走りながら、避ける。避けきれなそうな時だけ、ジャブを繰り出して倒していった。そうしていると、ブラックウルフはもう10匹を超えていた。体力的にはまだまだ余裕があったが、一先ず一掃することにした。飛び掛かってくる高さに合わせて、ローキック、ミドルキック肘打ちで対応した。こうしてジマはブラックウルフの毛皮を大量にゲットしたのだった。
今日はこんなもので引き上げようかという時になって、ブラックウルフの3倍の大きさのブラックウルフが出現した。
「ブラックウルフキング?さっきとは違って倒しがいがありそうだ」
こっちから攻撃を仕掛ける。ミドルキックを2発、更に膝蹴り、肘打ち。急所に当たったようで、相手はもう立ち上がる気力もないようだ。止めはかかと落としで決めた。
ドロップ品はブラックウルフキングの牙と毛皮だった。もう夜も明けかかっている。始まりの街へ帰ってログアウトすることにした。